78回転のレコード盤◎ ~社会人13年目のラストチャンス~

昨日の私よりも今日の私がちょっとだけ優しい人間であればいいな

◎小野と芋子(2)LINE普及の危険性について……今こそメール時代に戻りませんか?

2017-08-29 01:35:13 | 小野と芋子

芋子「透き通るような青みを帯びた空に、ライムグリーンの吹き出しが交互に飛び交う風景を見て、頬を緩ませながら親指を上下左右に動かす。それだけで私はとても幸せです」

小野「いや、片想いの相手とLINEするだけで満足しているんじゃないよ」

芋子「想い始めてから3ヶ月、ようやく滝口君のアカウントを知ることが出来たのです。こんなにも嬉しいことはありません」

小野「管理人の過去作に登場する人物の名前を再利用しちゃったよ」

芋子「新たに名前を考える時間が勿体無いと判断したのでしょう。名前を決めるのは意外と難しいのです」

小野「ところで、その滝口って人のTEL番は知っているの?」

芋子「電話番号? それを知る必要性が感じられません。LINEには通話機能があるのですから」

小野「じゃあメールアドレスは?」

芋子「もちろん知りません。LINEのチャット機能で充分じゃないですか」

小野「その考えはとても危険だ。昨今の中高生は、いや社会人までもがLINEをメールの代替ツールにしてしまっている。僕はその現状に警鐘を鳴らす。LINEでのコミュニケーションが当たり前の現代社会をこのまま放置するわけにはいかないのだ」

芋子「考えすぎじゃないですか? LINEのほうが色々と便利ですし、そもそもメールもLINEも似たようなものじゃないですか」

小野「そこで今回の対話部の活動だが、テーマは『LINEの功罪』について、メールとの違いに着目しながら話し合おう」

芋子「異議はありません。というか、今回も二人だけなのですね」


<メールとLINE、それぞれの特徴>

小野「まずはメールとLINEの特徴は何か、誰もが分かりきっていることだとは思うが改めて言語化してみよう。芋子、メールの特徴とは何だろう?」

芋子「便宜上、携帯電話のメールに限った話をしますが、例えば私の端末から小野先輩にメールを送ったとします。そのメールは先輩側の端末のメールボックス、いわゆる郵便受けのようなものに一旦入ります。先輩がその郵便受けを開き、中を覗くことで初めて私からのメッセージを確認することが出来ます。しかし、人は自宅の郵便受けを何度も開いたりはしません。もし先輩が一日に一回しかメールのチェックをしないのなら、メールの交換は一日一往復が限度となり、なんとも非同期的なツールとなります」

小野「なるほど。次はLINEのチャット機能の特徴について」

芋子「LINEの前に、従来のチャットというツールについて語る必要があります。チャットにはメールボックスという概念がなく、チャットルームという仮想空間にメッセージを同期的に表示します。物理的には離れている二人でも、バーチャルの部屋に両者は等しく存在し、会話をしているというわけです」

小野「メールは郵便受けチャットは部屋の中か。実に分かりやすい例えだ」

芋子「そんなチャットは当初、PCの操作によるものが主流で、Windows Live Messenger(旧:MSNメッセンジャー)やSkypeなどのソフトが有名でした。唯一のデメリットとしては、チャット機能を使用するには利用者の双方がログインしている必要がありました」

小野「相手がログインしていないとメッセージを届けることが出来ないからね」

芋子「よって、友人などとチャットをしたい場合は、事前に『今からチャットをしよう』とメールを送り、わざわざチャットルームに誘い込んだりしたものです。その煩わしさを解消したのがLINEだと私は思います」

小野「確かに、LINEは相手がログインしていなくてもメッセージを届けられる。では改めて聞こう。君はメールとLINE、どちらのツールを支持するのか?」


<LINEの功績>

芋子「断然LINEです」

小野「その理由は?」

芋子「まず、これまでの会話の内容が表示された状態で文章を打つことが可能だということ。特定の相手のメッセージだけをまとめるには、メールならフォルダ分けという操作が必要でしたが、LINEはデフォルトで人物別にメッセージが振り分けられ、自分の送信した内容まで一緒に表示してくれる。会話の内容を脳内で整理することが容易になったという点にはとても魅力を感じます」

小野「他には?」

芋子「写真の送受信がメールよりも圧倒的に楽です。大容量でも複数枚あっても一瞬で送れます。今ではpdfなど画像以外のファイルも送信が可能になった為、その利便性から学校のみならず職場でも大の大人たちがグループLINEを結成する傾向になりつつあります」

小野「とうとう書類をLINEで送る時代になったか」

芋子「何よりも忘れてはならないのが、スタンプ機能既読機能です。前者の異常な人気はLINEがここまで普及した理由の一つと言えるでしょう。そして後者は例えば災害時、相手が生存し、メッセージをちゃんと読んでくれているかどうかを『既読』の2文字で示してくれる、日本に無くてはならないとても大切な機能だと言えます」


<LINEの罪過>

小野「僕はその既読機能、功績なのは認めるけど、時に罪過にもなりうると思っているよ」

芋子「どうしてですか?」

小野「返信を焦らせるんだよ。既読が付いてから早急に返信しないと、相手に『無視をされた』と思われるかもしれない」

芋子「口頭会話のごとく瞬時にメッセージを交換するのがチャットというものですよ」

小野「そうだね。だから僕はLINEというよりは、チャットツールの総てを否定しているのかもしれない。瞬時に文字を打って送信しなければならないのなら、チャットは口頭で会話をするのとそれほど大きな差は無い。使いこなすには本来、高度なコミュニケーション能力を必要とするはずなんだ」

芋子「そう言えば私の友人が、先日LINEグループでチャットをしている最中、自身のふとした失言によって会話が荒れてしまい、文字による壮絶ないじめを受けたと泣いていました」


<文字伝達は考える猶予がある>

小野「誰もが脊髄反射で言語化するから、トラブルが起きやすくなってしまうんだ。文字伝達のコミュニケーションって、そういうことじゃ無いと思う」

芋子「というのは?」

小野「例えば、口頭でのコミュニケーションが苦手な人が居るとして、君はその人に同情できるだろうか?」

芋子「出来ます。想定外の質問にも瞬時に的確な受け答えをするというのは、とても簡単なことだとは思えません」

小野「では、文字で丁寧かつ正確に相手に伝える能力の低い人をどう思う?」

芋子「それも致し方ないことだと思います」

小野「僕はそうは思わない。一発勝負の口頭とは違い、文字伝達には考える猶予がある。例えばメールの返信なら、送る前に1分でも2分でも読み返し、それが本当に自分の伝えたいことなのか考え直し、違うと思うならいくらでも修正すれば良い。削除も加筆も、言語の移動や並べ替えさえも自在に出来るのだから」

芋子「LINEでも削除や加筆は可能ですよ」

小野「確かにそうだが、文字の入力画面が小さすぎて、読み返すのが面倒だ。加えて前述のとおり、既読機能が返信を焦らせてしまう。実際、推敲作業を省いて送ってしまう人が多いのではないだろうか」

芋子「……それには反論の言葉が思い当たりません」


<おわりに>

小野「僕は一刻も早く、この国の誰もがLINEよりもメールを多く使う生活に戻って欲しいと切に願う。メールのほうがコミュニケーション手段としては遥かに安心で安全だ」

芋子「しかし、LINEの既読機能だけは捨てがたいものがあると思います。前述の災害の件です」

小野「僕もLINEを全否定しているわけではない。災害などの非常時など、本当に必要な時だけLINEを使用し、相手の安否を確認すれば良い。普段からLINEをメールの代替にする必要は無いと言いたいのだ。それぞれのメリットデメリットを踏まえた上で、両者を正しく使い分けるのが一番の理想だろうけどね」

芋子「人間って、そこまで賢いわけでも無いですからね」

小野「それでも文字伝達くらいは落ち着いて正確に出来るように頑張ろうよ」


◎小野と芋子(1)退職時の労働問題について考える

2017-08-27 21:40:34 | 小野と芋子

芋子「たった5.5センチ位置が違うだけで、彼の胸が騒ぐのは何故なのでしょうか」

小野「あのー、芋子?」

芋子「それは私には馬の尾にしか見えないというのに、何故彼にとっては感情を高ぶらせる要因にさえ成り得るのか、理解に苦しみます」

小野「芋子? さっきから何を言っているの?」

芋子「小野先輩。私は明日から馬になろうとしていますが、まだその覚悟が出来ていません。後押しとなる言葉を下さい」

小野「要は今まで一本結びにしていた髪型を、片想いしている男子のアドバイスによってポニーテールに変えようとしているのね」

芋子「ご名答です」

小野「勝手にやっていろ。以上」

芋子「冷たいです先輩。校内の多くの女子が茶髪に染めていく風潮の中、私はこの部で最後に残った黒髪の素朴な女子、通称『芋娘』ですよ?」

小野「自分で言うかそれ。ちなみに今日部員は僕と君しか居ないので、このまま『対話部』の活動を始めようと思う」

芋子「まあ、初回から人数多いと読者は混乱しますからね。二人だけにしたのは妥当な判断だと思います」


<実際に起きた労働問題>

小野「このブログも今月で開設9周年を迎え、投稿記事数も450を超えたが、全編対話形式にするのはおそらく初だと思う。ただくっちゃべっているだけの対話部という都合の良い存在に対する突っ込みは置いておいて、今回の対話テーマは『労働問題』だ」

芋子「ズバリ、このブログの管理人・当方128さんが実際に体験したことですね。読者の皆様は最初に前回の記事をお読み下さい」

小野「前回の『リザイン・ブルーになって社蓄の人生』という記事だが、急いで執筆したという事情を抜きにしても、文章の構成に稚拙さが目立った。特に結論が短すぎて、当方さんが何を言いたかったのか、少なくとも客観視だけでは理解できない」

芋子「そこで、我々の対話によって補足をするというのが今回の目的ですね」

小野「対話形式だと読みやすいし分かりやすいからな」

芋子「この記事で発生した労働問題を整理してみましょう」


<Point>
◎当方は8月10日付けでの退職を希望し、その35日前に会社に退職の申し出をした。退職願も提出し、受理された
◎その4日後の給料日に給料が振り込まれず、翌日に振り込まれたが、賞与が含まれていなかった
◎社長との話し合いの結果、賞与は査定が間に合わなかった為に1ヶ月遅れで支給されることと、勤続5年以上にも関わらず退職金は一切貰えないことが判明
◎当方は就業規則に退職金に関する記載が無ければ納得するつもりだったが、それを見せてもらえなかった


小野「そして記事には書いていないが、その後8月10日に振り込まれた賞与は前回比で5万も減っていたそうだ」

芋子「5年以上も会社に貢献してきた人間に対する仕打ちとしては残酷なものだと思います。1年や2年で辞めていく社員が多い会社だそうですから尚更です」

小野「そうかな。僕は当方さんにも非はあったと思うよ。だから今回の対話によって、会社と当方、双方が悪かった点は何かをそれぞれ検証しようと思うんだ」

芋子「異議はありません」


<会社は何が悪いのか>

小野「まずは芋子、会社が悪いと思う理由を挙げてくれ」

芋子「何よりも言いたいのは法令違反です。少なくとも給料日の未払い、就業規則の未開示、労基署への就業規則未提出、この3点だけでも立派な違反です。加えてサビ残と深夜勤務手当の未払いなど、挙げればキリがありません」

小野「他には?」

芋子「この会社は組織としてあまりにも杜撰すぎます。普通の会社には社長の下に総務部や人事部が配置されます。退職を告げる相手も本来なら人事部だし、有給の取得や就業規則の閲覧も人事を通して行われます。しかしこの会社はそれを社長に直接言わなければならなかった。そして、社長の気まぐれの一声であらゆることが決定されてしまっていた」

小野「労働組合も無かったからね。この会社は社長の権限が大きすぎた。仮に労働者に対して『こいつ腹立つな』と思えば、その人に対して賞与を下げることも出来るし、あるはずの退職金を無しにすることも出来る。しかも、就業規則を労基署に提出しなかったことで、それさえも自由な書き換えを可能にした」

芋子「ほら、先輩も認めているじゃないですか。この問題は100%会社が悪いんですよ」

小野「でも現実問題、そのようないわゆるブラック会社というのは君が想定している以上にたくさん存在する。大事なのは、不利な条件の中で労働者がどう工夫して戦って戦利品を得るかということだと思うんだ。今回の場合、少なくとも賞与に関しては7月10日に賞与が振り込まれているのを確認してから会社に辞めると言えば良かった、それだけのことなんだよ」


<当方は何が悪いのか>

芋子「つまり賞与が振り込まれる前に退職を申し出たのが悪いと言うのですね?」

小野「それが当方さん側の一つ目の非だね」

芋子「でも、新しい会社には8月11日に入社する予定でした。だから10日に退職する必要があり、社会通念上のルールとして1ヶ月以上前に会社に申し出る必要があった。だから7月6日には会社に退職の申し出をした。もし7月10日に振り込まれてから申し出たら、社長はもっと怒っていたかもしれない

小野「最後に1週間の有給を貰おうとしていたから、尚更急いじゃったんだろうね」

芋子「でもその有給も労働者には請求する権利がありますからね。例えば有給が30日間未消化だとして、退職日の31日前に退職を申し出て、その翌日から30日間有給を消化してそのまま消えていったとしても法的には問題ないし、実際に行使した人を私は知っています」

小野「人としては最低だけどね」

芋子「でも今回の場合、請求した有給は7日、たった7日ですよ! それくらい良いじゃないですか」

小野「誰も悪いとは言っていない。当方さんは転職活動の時点で間違えていたと言いたいんだよ。そもそも、どうして次の会社の勤務開始日を8月11日からにしたんだ? 会社が勝手に決めたのではなく、当方さんの意思で決断したそうじゃないか」

芋子「確かに、新しい会社の勤務開始を9月1日からに設定し、辞める会社は8月末付けで退職、それを賞与が振り込まれるはずだった7月10日より後に会社に申し出れば、辞める1ヶ月以上前に申し出たことになりますし、賞与は満額貰えますし、有給も7日だけなら難なく取得できるはずです」

小野「結局、転職のプランニングが甘かったんだよ。もっと言うと、例年8月12日~16日はお盆休みをとるアルバイトスタッフが多くなり、会社が人員不足になるのは必至だった。そんな時期に居なくなるという会社に迷惑をかける選択をすべきではなかった」

芋子「でも、この時期に辞める決断をしたのには深い理由があるんですよ」

小野「よし、聞こうじゃないか」

芋子「当方さんは実家のある秋田に帰りたかった。しかも、竿灯祭りの開催される8月3日~6日のあたりを狙っての帰省を目指していたのです」

小野「なるほど。退職にあたって有給を消化する際は、在籍期間の最末期に消化するのが普通だからね。それを竿灯祭りに合わせるには、8月10日付での退職と、最後の1週間を有給消化にする必要があった」

芋子「理解が早くて助かります」

小野「でもそんなの誰が決めた? 『在籍期間の最末期に有給を消化する』なんて、世間がやっているというだけで、自分も真似する必要はあったのだろうか。8月31日付けで辞めます、最後に8月3日~6日だけ有給を下さい、お盆期間やその後も全部出ますから。それで良いじゃないか」

芋子「えっ、4日間だけですか? せっかくの有給は実家に帰るだけ?」

小野「いや、当方さん、結果的には8月2日~4日と10日の計4日間しか有給を貰えなかったそうだよ」

芋子「えっ? 社長は7日間の有給消化を許可したんですよね?」

小野「だから酷い会社なんだよ。社長と現場が噛み合っていなかった。8月5日~9日は人員が足りなくて、当方さんは半日勤務とはいえ出勤していたんだ。そして現場の社員が『有給』に対して理解を示さなかった。彼等は『何で有給なんて貰っているの?』としか思ってくれなかったんだ」

芋子「有給は法令で決められているのにですか!?」

小野「日本人は何よりも人間関係が円滑であることを望むからね。当方さんも自ら無難なほうを選んでしまったんだ。で、さっきも言ったように、会社が酷いのは日本では当たり前のことで、酷い中でどう工夫して戦うかが大事なんだよ。厳しいことを言ってしまえば当方さんは思慮が浅かった。問題が起きてから友人や労働相談所など色々なところに相談したりネットで調べまくったそうだが、そんなの問題が起きる前にすべきだったんだよ。ついでに言うと、就業規則は入社した時点で読ませてもらうべきだった」


<おわりに>

芋子「初回から考えさせられるテーマでしたね」

小野「まあ今回は前回の記事を補足するという大人の事情があったからね。全く、当方さんの文章力の低下には驚きだよ。それでもこの対話はとても意味があったと思う。退職というのは誰がいつ経験することになるか分からない。未来の退職をする予定の若者たちは、当方さんと同じ過ちをしない為にも、今からこの話を読んで勉強しておくべきだ」

芋子「ネガティブすぎますよ。そもそも退職というのは止むを得ない手段であって、しないことが一番です」

小野「それも一概には言えないけどね。労働者を退職に追い込むのは過酷な労働環境や、会社の杜撰な体制だったりもする」

芋子「それにしても我ながら、高校生二人の会話とは思えない内容でしたね。次回はもっと学生らしい、明るい話題にしませんか?」

小野「……善処するよ

芋子「ああ(察し)」


◎リザイン・ブルーになって社畜の人生 ~賞与と退職金と就業規則~(最終話)

2017-08-03 12:57:48 | ある少女の物語

<退職への道(7)最終決戦>

(社長)「あのさ、繋がらないからって本部に言わないでくれよ。何度もかけなおしたんだぞ?」

 7月14日夕方、社長との電話。早速怒られた。しかし、社長が僕の携帯に折り返してきた形跡は一切無い。可能性があるとすれば、僕が他の人に電話で相談している間にかけてきた場合。それは着信履歴に残らないのだ。

(社長)「あ、あと賞与だけど」

 油断していた。社長のほうからその話をしてきた。SVが言ったのだから当然なわけだが。

(社長)「急に辞めるって言ったから査定が間に合わなかった。7月の給料(8月10日支払い)で支給する」

 これで賞与の問題は先送りとなり、その件に関しては何も言えなくなった。意図的に口を封じられているような気もした。ただ、その言い方からだと減額されることは覚悟せねばならない。ならば次は退職金だ。

(僕)「僕一応5年以上在籍していたんですけど、退職金みたいなものはありますか?」

(社長)「ああ……10年以上居れば出せるんだけど、5年くらいじゃねえ」

 退職金規定は会社ごとに自由に設定できるので、5年で貰えないというのは決して珍しい話ではない。問題なのは、勤続10年以上で支給される旨をきちんと就業規則に書いてあるかどうかだ。
 だがその前にお願いすべきことがあった。

(僕)「では退職日を延ばして、その分有給を増やしてもらえますか?」

===

<よくわかる解説>
 既に8月10日付けでの退職、最後7日間(8/4-10)の有給を了承いただいているものを
 退職日を8月31日に延ばした上で、最後30日間(8/2-31)すべて有給をいただく形に変更したい
 これにより8月分給料が「10日までの日割り」から「〆日(末日)までの満額」に変更となる
(これを賞与+退職金の代替だと思えば納得できる)

※30日の理由:法的に請求する権利のある「今年分16日」と「昨年分14日」の合算
(未消化分を翌年に繰り越せるものとして計算)

※問題点は既に8月10日退職として「退職願」を提出済みであることから、退職日を延ばすには退職願の書き換えが必要になる(法的には可能)

===

 会社ごとに決められる賞与や退職金とは違い、有給休暇は法律で労働者に与えねばならないと定められている。

(社長)「あのさあ僕くん、君が辞めるって言ったことで会社にどれだけの迷惑をかけたと思っているの?」

 社長は再び怒りを露わにした。

(僕)「僕は月31日勤務した時も、相当な時間の残業をした時も、夜勤メインになってからも、耐えてきました」

 今回ばかりは僕も引かなかった。

(僕)「最後に就業規則だけでも見せてもらえませんか? それさえ見せてくれたらすべて納得します」

(社長)「就業規則を見たら賞与の査定に影響が出るけど良いか?」

(僕)「!!!」

 もしかしてだけど、これって「脅し」なんじゃないの? そこまでして見せたくない就業規則。明らかに怪しい。

 以上を前述のSVに報告した。

(僕)「よって、賞与の査定に影響を与えたくないので、本来なら社長への就業規則の開示を本部がしれくれる予定でしたが、しなくて大丈夫です」

(SV)「いやそんなこと言っていませんよ。勝手に話を進めないで下さい」

 ちょ待てよ↓

(お客様相談室)「もし就業規則を見せてくれないなどの法令違反があれば、私どもに相談いただければ、担当SVが開示の要求をいたします」

話が違う。やはりこのSV、乗り気ではなかった。

(SV)「法律云々ではなく、会社への迷惑も考えなければならないんじゃないですか?」

 退職の一か月前には申し出をしているというのに、それだけの猶予があっても会社が人員を確保できないのは会社の責任ではないのか? そして、社長もSVも「未来」への迷惑しか見てくれないのか。迷惑だ迷惑だって、本当にそれだけか? 「過去」の努力に対しては何も思わないのか。5年以上も勤務し、相当な時間のサビ残もし、夜勤で生活リズムと体調を崩し、週1の休みすら貰えないことも多かった人間の当然の権利として賞与と退職金が欲しい、ただそれだけである。

(僕)「就業規則を見せてくれないし、挙句『賞与の査定に影響が出る』と(脅しともとれる発言を)言われた、これについてどう思いますか?」

(SV)「まあ、賞与は強制じゃないですからね」

 駄目だこの人、早く何とかしないと。ここまで感情の見えない、マニュアルに沿うだけの人間を見たのは久しぶりである。本部職員はもう少し店舗社員に寄り添ってくれる存在だと思っていたし、少なくとも過去の担当者はそうだった。


<退職への道(8)労基署の見解>

最終手段として労基署に行き、提出されているはずの就業規則の開示をお願いした。

(労基署)「申し訳ございませんが、その社名では就業規則の提出がありません」

(僕)「えっ、20人以上の会社には提出が義務付けられているんじゃないんですか?」

(労基署)「確かに法令には違反しているんですけど、流石にすべての会社のそれをチェックすることはできかねるので……」

(僕)「つまり、就業規則を提出していない会社は、現実にはたくさんあるということですか?」

(労基署)「そうですね……」

 この瞬間、この世に完全な組織など無いのだと悟った。この国は誰が労働者を守ってくれるのだろうか。

 もちろん、労基署の力で会社に就業規則の開示を求めることはできる。しかし今それを行うと、就業規則を見れたとしても賞与の査定に影響が出る。しかも、そこに退職金規定が書かれていないという最悪の事態も想定しなければならない。いや、もっと言うと、

(知恵袋)『就業規則を提出してないのであればいくらでも書き換えが可能ってことなので残念ながらまずないものとして考えるべきでしょう…』

 つまり、労基署から開示の要求が出されたとしても、それからこっそり退職金規定の欄を削除したものを作り直したとしてもバレないということ。「最悪の事態」は作れてしまうのだ。

 こうして退職金は100%もらえないことが確定、賞与の査定結果が明らかとなる8月10日まで、おとなしく待つしかなくなった。

(教えてgoo)『真っ当に争うなら、在職中に、しっかり労使で話し合いしとくべきでした。最終的には、労働組合を立ち上げるなどして、労働者の権利は労働者自身の手で守るのがベストでした。組合活動を行う中であれば、組合活動に対する嫌がらせ、妨害行為は労働組合法違反の不当労働行為って話に持って行ける可能性があります』

 労働者を守るのは労働者自身。壮絶な戦いの末に導き出された結論だった。(Fin.)


◎リザイン・ブルーになって社畜の人生 ~賞与と退職金と就業規則~(第2話)

2017-08-03 12:56:16 | ある少女の物語

<退職への道(5)就業規則のありか>

 まずは就業規則を手に入れねばならない。もちろん社長には内緒で。となると誰に聞けば良いのか。

(マネージャー)「私、そんなの見たことないわよ。ていうか、無いんじゃないかしら」

 そんなわけあらへんがな。従業員20人以上の会社には就業規則を労働基準監督署に提出する義務がある。もし無いというのなら立派な法律違反だ。また、もし退職金制度があるならその旨を必ず記載しなければならない。
 あるとすれば会社の事務所。この会社には総務部も人事部も存在しない。事務所に居る人間と言えば社長以外に一人しか居なかった。

(僕)「事務のYさんの連絡先知っていますか?」

(部長)「知らない」

 僕は会社事務所に勤務する唯一のアルバイト、Yとのコンタクトをどうしても取りたかった。それが不可能なら就業規則を知らぬまま社長と話すしか選択肢が残されず、それはとてもリスクの高い行為であることを意味するからである。

(部長)「ていうか事務でも就業規則までは知らないんじゃないかな」

 会社事務所には何度電話しても繋がらない。その1階にあるコンビニ店舗にも電話した。しかし、

(僕)「Yさんっていつも何時くらいに勤務していますか?」

(スタッフ)「さあ、知らないわね。ていうか最近全然会わないし」

(僕)「店に入ってから3階の事務所に上がるんじゃないんですか?」

(スタッフ)「違うのよ。外から3階に直接上がれる階段があってね」

 こんなに困っているのに、何故コンタクトすら取れないのか。しかも重役ではなくたかが事務。他の会社では有り得ないことである。僕とYを引き離す何か大きな圧力があるように感じた。


<退職への道(6)本部の見解>

 7月12日。棚卸の合間の僅かな時間を利用し、労働相談の機関へ電話で相談した。少なくとも賞与に関しては「雇用契約書に記載があれば貰う権利がある」との事だった。それには間違いなく「入社2年目以降の夏と冬に支給」と書かれていた。

(僕)「この会社、労働組合が存在しないんですけど、やはり社長が絶対的な権力を持ってしまうのでしょうか?」

(労働相談所)「そんなことはありません。社長といえども法令は順守せねばなりません。安心して下さい」


 翌13日の夕方、友人A・Bと会う約束があり、ついでに相談を持ち掛けた。

(友人B)「本部に相談できる機関は無いの? フランチャイズ事業部みたいな」

 その発想はなかった。翌14日、夜勤明けの疲れを堪え、朝9時に本社に電話をかけた。

(僕)「フランチャイズ店舗を経営する会社との労働問題に関する相談窓口に繋いでいただきたいんですけど」

(本社)「それならお客様相談室ですね」

 お客様相談室だと……。本来、そこはお客様からのクレームなどを受け付ける機関。何か嫌な予感がしてきた。

(お客様相談室)「もし就業規則を見せてくれないなどの法令違反があれば、私どもに相談いただければ、担当SVが開示の要求をいたします」

 SVだと……。SVとは担当店舗を巡回し、店舗責任者に施策やアドバイスなどを話す、とても忙しい人。本社とフランチャイズ経営会社は別物であり、別会社の法令違反への対処という専門外の仕事に多忙のSVが乗り気になってくれるのだろうか。

 その数十分後、担当SVから電話が来た。

(SV)「聞いた話を整理しましたが、最大の問題は、社長と連絡が繋がらないことだと思います」

 えっ、最大がそこ!? 既に給料日に未払いという法令違反が平気で行われている会社の最大の問題が?

(SV)「社長と仲の良いSVが別に居ますので、彼が社長に僕さんの言いたいことの一部(賞与が振り込まれていない件)を伝えてくれます。それで社長も僕さんとの話し合いに応じてくれるでしょう」

 少しずれているような気はしたが、社長と電話で話す機会だけは与えてくれた。

(SV)「なるべく本部にまでは振らないようにして下さい。円満に解決するのが一番ですよ」

 言葉の節々に嫌な予感を感じさせたが、発言自体は確かにその通りでもあった。僕だけの力で解決に導かなければならない。不本意ではあるが、就業規則を知らぬままの不利な状況下で社長との直接対決が始まろうとしていた。

 

(つづく)


◎リザイン・ブルーになって社畜の人生 ~賞与と退職金と就業規則~(第1話)

2017-08-03 12:53:30 | ある少女の物語

<退職への道(1)転職活動>

 僕はこれまで、ブラック会社しか経験して来なかった。
 建設業の現場作業、新聞配達、足場施工、漫画喫茶。ここまでは本当に酷かった。どこに行っても辞める時には一生もののトラウマを植え付けられていた。

 そして今の会社、コンビニ業界に就職したのは5年と4ヶ月も前のことだ。過去の勤続最高記録は一年4ヶ月、それを大幅に上回るくらいにはまともな会社に入れたと思っていた。
 その考えは甘かった。今の会社は深刻な人員不足に何度も悩まされた。当店の場合は夜勤が不足し、社員が入らざるを得なくなった。夜勤メインの勤務になって早一年半。身体は限界だった。

 退職は2年も前から考えていたが、この春からいよいよ転職活動を始めた。 

(S社の面接官)「夜勤手当が出ないことは入社する前に分かっていたんじゃないの?」

 面接では容赦ない批判を浴びることもあった。確かに手当が無いことは知っていたが、勤務は基本的に昼間だとも聞いていた。こんなに夜勤が続くなら話は別だ。夜勤は生活リズムの崩壊、睡眠時間の不足、事実上の休日返上(ただの明け休みを週休に割り当てられる)など、失うものが多い。

 6月にスーパー業界のI社から内定をいただいた。スーパーなら昼間の勤務がメインになる。給料は今より少し下がるが、夜勤が無くなるだけでもありがたかった。


<退職への道(2)退職の申し出>

 7月6日、今の会社の社長に直接会い、8月10日付での退職を申し出た。直前まで理由を考え、それを落ち着いて丁寧に話した。ここまでの社長に対する印象は良いはずだった。しかし、

(社長)「辞めるのは仕方ないけど、責任者クラスの人間が抜けるとなると、引き継ぎに時間がかかる。9月頃まで居てくれないだろうか」

 そんなに期間が必要だとは聞いていない。社会通念上の常識として辞める約一ヶ月前に退職を申し出れば素直に受け入れて貰えると思い、I社の入社日を8月11日に決定していた。それは容易にずらせるものでは無かった。

 僕は数時間後に社長に電話し、退職日の延期が不可能である点と、親に実家に帰るよう言われているので最後に7日間の有給休暇をいただきたいと伝えた。

 社長の機嫌は悪そうに聞こえたが、結果的に了承はいただいた。数日後に退職願を提出し、8月10日をもって会社を抜けられることは揺るぎ無いものとなった。


<退職への道(3)給料未払い>

 7月10日、社長の攻撃は始まった。午前0時に自動で振り込まれるはずの給料が、9時を過ぎても振り込まれない。念の為、懇親会中止騒動の愚痴を聞いてくれたG男に電話で確認した。

(G)「給料が振り込まれているかですか? まだ確認していません」

(僕)「今すぐネットで確認出来ませんか?」

(G)「みずほダイレクトに登録していないので……」

 他の社員にも聞いたが一人は未確認、もう一人は奥さんが管理しているので不明とのこと。給与明細もろくに発行されない会社なのに、何故お金という大事な問題に対して無頓着でいられるのか。
 G男を含めた3人は結果的に給料日当日に振り込まれていた。どうやら社員で未払いなのは僕だけのようだ。給料日に支払われないのは当然ながら法律に違反している。ただ、辞めるだけで会社に多少なりとも迷惑をかけている自覚はあるので、ここで文句は言わず一日待つことにした。


<退職への道(4)賞与未払い>

 そして翌日、7月11日。僕の給料は一日遅れとはいえ振り込まれてはいたが、夏の賞与が含まれていなかった。例年ならこの日に給料と一緒に振り込まれているはず。まずは部長に相談した。

(部長)「たぶん辞めるって言っちゃったから、賞与は無しになっちゃったんじゃないの?」

 わけがわからないよ。賞与というのは過去の査定期間における努力や成果によって決められるものではないのか。未来に在籍するか否かまで査定に含まれるなんて聞いたことがない。

(部長)「いや会社では良くある話なんだよ。社長に言う前に俺に相談してくれれば良かったのに」

 後で調べると、確かに「賞与は過去の貢献だけでなく将来の期待も含まれる」という考え方もあった。
 しかし、賞与と言っても世間一般的な額よりかなり低い。この半年間、相当な苦労をしてきたつもりなのに、寸志レベルの額すら貰えないというなら……

(友人A)「ならせめて退職金は貰えよ」

 そうだ、退職金! 勤続3年以上で支給される会社が多いが、僕は今の会社に5年4ヶ月も在籍している。もし貰えるなら、それが賞与の代わりだと思えば納得できる。
 しかし、僕は退職金の規定の有無を知らない。以前『教えて!goo』で質問した時の回答は、

『退職金のことなどは上司や総務部などに確認されたら如何ですか』

『会社に就業規則(従業員が閲覧できる様に備えつけておかなければならないもの)で閲覧を請求して見られると良いと思います』

『退職時にこれらの事を聞くのは失礼では無いと思います。労働者の当然の権利です』

 そう、就業規則! そこに退職金規定が記載されているかどうかが重要になってくる。社長と話す前にあらかじめ就業規則を把握しておいたほうが話し合いで有利に立てるだろう。

 僕は会社と戦うことに決めた。決して法律だから請求するとか、そんな単純な話ではない。5年以上も勤務し、相当な時間のサビ残もし、夜勤で生活リズムと体調を崩し、週1の休みすら貰えないことも多かった人間の当然の権利として賞与と退職金が欲しい、ただそれだけである。

 

(つづく)