78回転のレコード盤◎ ~社会人13年目のラストチャンス~

昨日の私よりも今日の私がちょっとだけ優しい人間であればいいな

◎東京シャープストーリー(第4話)

2018-11-13 18:27:37 | 東京シャープストーリー

※読む順番
◎仕事上のコミュニケーションを今更頑張った話(第1話第2話最終話

◎東京シャープストーリー(序章第1話第2話第3話

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【第四部:飲み会断られちゃった】

 新たな登場人物は、還暦を超える女性スタッフ。名前は……アラシックスとでもしておこう。前回の70歳とは違い、この女性はシャープの味方である。

(アラシックス)「あんた何? 女性恐怖症なの?」

(僕)「うーん……そんな時期もありました」

(シャープ)「なんか、裏切られたことでもあるの?」

(僕)「そうですね……もう6年も前のことですけど」

 職場の休憩室に3人だけ。僕は忘れもしない、黒髪セミロング眼鏡っ娘、通称KSMの話をした。
(関連記事:◎薔薇色への架け橋(第3話)

(僕)「連絡先も教えてくれないなら、あの笑顔は何だったのかっていう」

(シャープ)「いやそれ、裏切られたんじゃ無いでしょw」

(アラシックス)「勝手に思い込んでいただけじゃん」

 僕の失敗談で、その場は異様なまでの盛り上がりを見せていた。
 そして数日後。

(アラシックス)「アンタの悩み、もっと聞いてあげるわよ。今度さ、飲みに行かない?

(僕)「えっ?」

(アラシックス)「シャープさんも呼んで、三人で

 三人――この三人なら、飲んでみたいと思った。あの日盛り上がった三人。敵が存在しない、人間関係に悩むことも無い、秘密を共有し合える“特別な三人”なら。
 しかし、

(アラシックス)「じゃあシャープさんも誘ってみるね」

 その2週間後。

(僕)「飲み会の件、シャープさんは何て言っていました?」

(アラシックス)「なんか返事を曖昧にされて、それ以後何も言ってこないの」

 まさかのシャープが乗り気でない状態。友人に相談したら、その場でメッセージを送って聞いてみることを薦められた。

(LINE)『お疲れ様です。夜分に失礼します。以前話に出たアラシックスさん含めての3人での飲みの件ですが、もし本当にやるなら、これから年末で忙しくなるので日程を早めに決めたいと思うのですが、シャープさん的にはOKですか?』

 程なくして既読にはなったが、返信が来たのは21時間後のことだった。

『その話まだ生きてたの!?
 おばちゃん二人なんかと飲んでどうすんの?』

 たった二行、それだけの返信。

(友人A)「お前……たぶん嫌われているよ

 嘘だ。僕のことを何度も面白いと言ってくれた。何度も笑顔を見せてくれた。
 LINEにおけるシャープが別人格のようにそっけない態度を取るのは今回だけではなかったが、それを差し引いてもこの文章はとても信じ難い、信じられない、信じたくない表現だった。
 そもそも、シャープとの飲み会が実現不可能になっただけでもショックは大きい。僕は来年の春に職場を異動になるかもしれない。シャープとの残された時間は僅か。それなのに、飲み会をたった一度開くことすら許されないのか。


 翌日の職場。僕はシャープに何も話さないつもりでいた。しかし、

(シャープ)「あれ誤解しないでね。別に僕さんが嫌とかじゃないからね。色々あってね……」

 シャープのほうから話しかけてきた。その言葉が救いだった。

(友人A)「いやそれも嘘かもしれないじゃん」

 確かにそうだ。その可能性もゼロではない。
 それでも僕はシャープの言葉を信じ、コミュニケーションを辞めなかった。やはり何度も笑ってくれた。あの二行のメッセージさえ無ければ、僕とシャープの関係には何の変化も無かった。

 幸いにも僕はモデル、メガネ、チョコ棒の三人の女性とも定期的にコミュニケーションを取ることで、悲しみを少しは和らげることが出来た。それでもシャープが僕のことをどう思っているのか、ずっと気がかりでいるのだ。

 例えば『シャープが嫌っているのはアラシックスのほう』だとか『もし70歳にバレたら話がややこしくなるから』とか、仮説はいくらでも立てられる。しかし、立証する術が無い。嘘発見器でも使わない限り、シャープに聞いたところで真実を教えてくれる確証は無いからである。
 この問題の真相を解き明かせる日は、果たして来るのだろうか。

(一旦Fin.)

 

※2019.9.18追記:ようやく続きを書きました→第5話


◎東京シャープストーリー(第3話)

2018-11-13 17:22:02 | 東京シャープストーリー

※読む順番
◎仕事上のコミュニケーションを今更頑張った話(第1話第2話最終話

◎東京シャープストーリー(序章第1話第2話

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【第三部:事件起きちゃった】

 8月21日、事件は起きた。シャープと70歳女性スタッフが口論。真面目で勤務能力も高いシャープを良く思わない女性スタッフが最低一人は居た。女性同士の人間関係の複雑さ、やりにくさは男性のそれを凌駕するものだと聞いたことはあるが、まさかここまでとは。

(僕)「今日の出来事について、僕なりに考えたことなんですけど、かくかくしかじか」

(シャープ)「うーん、そういうことじゃないんだよなあ」

 僕はシャープの助けになりたい、ただそれだけだった。

(僕)「いつでも泣いて良いんですよ。僕の胸はいつでも空いていますから

(シャープ)「使いませんよw」

 この頃から僕は真面目キャラのみならず、ちょっとした変態キャラも晒すようになっていた。真面目キャラがいつ飽きられるか分からないし、次の一手を模索していたのだ。
 しかし、そんな冗談を言っている場合では無かった。

(シャープ)「僕さんも早く次のステップに進めるように頑張ってね、10月15日までに」

(僕)「えっ!?」

 毎月15日は締日。そして10月のそれは半期に一度の契約更新日であることも意味する。
 そんな日を指定してきたシャープの真意とは、まさか――

(僕)「辞めてしまうかもしれません」

 9月のある日、部門マネージャーと店長に相談した。

(店長)「確かにシャープさんが居なくなると店としても困る」

(僕)「ハイ。とても寂しくなります」

(店長)「それはあなたの感情でしょう。そうじゃなくて店の戦力が居なくなることが問題なの」

 僕の話を聞いた店長は、シャープに何らかの話をした。その結果、シャープは10月16日以降も仕事を続けてくれることになり、今に至る。
 最悪の事態こそ免れたが、シャープが今後いつ辞めてもおかしくない現状に変わりは無かった。

 シャープは何も悪くないのに、何故たった一人で苦しまなければならないのか。

(僕)「シャープさんの良いところは笑顔だと思います。だから笑って下さい。そうすれば、みんなも笑顔になってくれると思います。憎しみをこれ以上生み出さない為にも」

(シャープ)「あのね、彼氏は私のこと全部好きって言ってくれるのw」

(僕)「!!!」

(シャープ)「だから大丈夫よ」

(つづく)


◎東京シャープストーリー(第2話)

2018-11-13 16:43:27 | 東京シャープストーリー

※読む順番
◎仕事上のコミュニケーションを今更頑張った話(第1話第2話最終話

◎東京シャープストーリー(序章第1話

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【第二部:プレゼントあげちゃった】

 2018年3月。ホワイトデーを間近に控えたある日、僕は最初のプレゼントをシャープに渡した。

(僕)「あの、この間のお土産のお返しです」

(シャープ)「いやいいのに。ありがとう」

 小田急百貨店で見つけたおしゃれな入浴剤

(僕)「あの時、誕生日(2/12)とバレンタインのプレゼントを同時に貰ったような気がして(※偶然)とても嬉しかったので、どうしてもお返しがしたかったんです」

 その後の会話の流れでシャープの誕生日も聞き出すことに成功。しかし、


――4月30日――


 その日は2ヶ月もしないうちに訪れる。友人に相談したが、無理にプレゼントを渡す必要は無いのではないかと言われた。

 しかし、意中の相手の一年に一度しか訪れない大切な日を、果たしてスルーして良いものなのか。

(友人A)「そもそもお前の選ぶセンスもなあ……入浴剤って、肌に合わなかったらどうするんだよ」

 事実、それをシャープが浴槽に入れてくれたのは、渡してから一ヶ月弱も先のことだったという。

 その後も悩み続け、4月29日を迎えた。もう時間が無い。苦肉の策として、僕は友人とロフトに行き、プレゼントを選んでもらった。

(シャープ)「わあ素敵! 彼氏が喜びそう」

 翌日の職場。一輪の造花を受け取ったシャープの第一声には、無常にも“彼氏”の2文字が含まれていた。

 僕は悟った。例え人生を賭けて力を尽くしたとしても、シャープの彼氏に勝てる日は永遠に来ないのだと。

(つづく)


◎東京シャープストーリー(第1話)

2018-11-13 15:54:09 | 東京シャープストーリー

※物語の本当の始まりは以下の記事をお読み下さい。
◎仕事上のコミュニケーションを今更頑張った話(第1話第2話最終話

東京シャープストーリー(序章)

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【第一部:ブログ教えちゃった】

【2017年11月13日の日記(抜粋)】
 つい2週間前まで謎多きキャリアウーマンだったシャープさんのことが少しずつ解明されるカタルシスが、もっと様々なことを知りたい気持ちにしてくれる。31年間コミュニケーションに恐怖を覚え続けてきたはずなのに、今はシャープさんと一秒でも長く会話を交わしたい自分が居る。尊敬か憧れか、あるいはそれ以上の感情を抱いているのかもしれない。


 それから3ヶ月が経過。僕はTwitterにシャープへの想いを綴るようになっていた。

 

<2018年2月7日>


<2月11日>

<2月12日>

<2月20日>

 そのうち不幸が訪れるのではないかと不安になる……

 

(つづく)

 

※シャープが当ブログの定期的な読者になっていただけなかったこと、また更新を半年以上放置したことで読まれなくなる確率が更に高まっていることから、当ブログでシャープのことを再び扱うことにしました。

ちなみに、2月に削除した複数の記事は全て復活させており、閲覧可能になっています。


◎東京シャープストーリー(序章)

2018-11-13 14:48:14 | 東京シャープストーリー

(古賀朋絵)「(学校を)休んだら皆の話についていけなくなるもん」

(梓川咲太)「一日くらいで?」

(古賀)「その一日が命取りなの! (中略)先輩がおかしいんだよ。皆に変な目で見られたり、笑いものにされたりして、どうして平気なの?」

(梓川)「別に、全人類に好かれる為に生きているわけじゃないし」

(古賀)「私は皆に好かれたい。てか、嫌われたくない」

(『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』アニメ版5話より)


 同性の友人と話題や流行、面白いものなど、その全てを共有することで安堵してしまうのが今時の女子高生なのだろうか。周囲に合わせることの是非はともかく、『皆に嫌われたくない』というのはJKに限らず多くのホモサピエンスが思っていることだろう。僕も一応はその一人でいるつもりだが、不器用ゆえにそれが上手くいかない。だからこそ、今の状況に戸惑いすら覚える。


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<2人目の女性:モデル(仮名/23歳)>

(男性スタッフ)「俺もアニメ観ますよ」

(僕)「えっ、じゃあ『サンシャイン』とか?」

(男性スタッフ)「サンシャイン!?」

(モデル)「wwwww」

(男性スタッフ)「え、サンシャインって何ですか?」

(モデル)「ラブライブのことでしょ?」

(僕)「は、ハイ……」

 その女性は、まるでモデルのように背が高く、痩せ細っていた。

(モデル)「セブンイレブンでラブライブのノート貰えるキャンペーンやっていますよ」

(僕)「え、ま、マジですか」

(モデル)「大好きな曜ちゃん貰えますよ」

(僕)「は、ハイ……帰りに寄ってみます」

 パリピと童貞。『ラブライブ!サンシャイン!!』が相反する二人を会話させるに至った。時の経過と共にラブライブ以外の話もするようになった。彼女とは合わない、嫌われるのも時間の問題だと思っていた頃が嘘のようである。


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<3人目の女性:メガネ(仮名/26歳)>

(メガネ)「私なんてもうお婆さんですよw」

(僕)「いやいやいやそんなことないですよ(慌)」

 彼女はいつも黒渕のメガネをかけている。

(メガネ)「どんどん輝きも失われていくものでして、どうなっちゃうんですかねw」

(僕)「でも5年も付き合い続けているのはスゴイと思いますよ」

(メガネ)「いやー、別れるかもしれないですよ?w」

 既に恋人の居る女性は大概優しい。ちなみにモデルにも彼氏が居る。そして僕も、そのような女性相手のほうが不思議と気兼ねなく会話を交わせる。


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<4人目の女性:チョコ棒(仮名/21歳)>

(チョコ棒)「いつも遅くまでお疲れ様です。良かったらこれ食べて下さい」

(僕)「え、いいんですか?」

(チョコ棒)「どうぞ」

(僕)「あ、ありがとうございます……」

 彼女から貰ったチョコ棒は、これまで食べたチョコ棒の中で一番美味しかった。

(チョコ棒)「明日休みなんですか?」

(僕)「ハイ、お休みを頂いております」

(チョコ棒)「寂しいです……」

(僕)「……来ます!」

 僕は、10年以上も年下の女性とすら、普通に会話を交わすようになっていた。


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 入社当初に比べればかなり進歩している当方128のコミュニケーション。しかし、本当は自分のことをどう思っているのか、常に不安でいる。僕は嫌われたくないと思っていながらも、素やボロを出してしまうことが人並み以上に多いからである。真面目キャラ故に発せられる独特の言葉や言い回しで笑ってくれることが救いだった。笑顔だけは信じていたい……。

 そして、どの若い女性と話している時も、僕より8個も年上の女性の存在を、片時とも忘れることは無かった。


<1人目の女性:シャープ(仮名/40歳)>

 

(つづく)