<第二部:64days>
>もう一つのプロジェクトは既に動き出していた。
2014年1月23日、もう一つのプロジェクトは大勝利という形で完遂した。
>勝利を掴むとはこういうことなのだろう。反省点もあったが、現状でできる最大限のことはしたと思う。とりあえずこれで悔いはなくなった。(当時のつぶやきより)
この詳細は後日別枠にて書くとして(都合により本編の内容を変更しました)、急ごしらえとはいえ一つの作品として仕上げた改正版の『タオル』が大惨敗に終わった件は、心残りが無いと言えば嘘になる。曲がりなりにも学生時代から続けてきた唯一の趣味だ。このままで終わらせたくない。
――だったらもう一度、書けば良いじゃない――
それしかないと思った。時間をかけて自分でも納得のいく小説を仕上げ、もう一度ストレートに見せる。“小説物語”は再び動き出した。
今回の読者はネットの向こう側にいる不特定多数の人々ではない、ストレートただ一人なのだ。ではストレートが求める話とは何か。いつも笑ってくれていた彼女も結局は一人の女子高生。『セカチュー』や『恋空』に多くの女性は涙した。やはりギャグではなく王道恋愛路線だったのではないか。
そしてもう一つ気になったのは“起承転結”。例えば『タオル』はライブで主人公が恥をかいた話のみで、起承くらいの2コマで完結してしまっている。その後主人公はゆずについて猛勉強をし、もう一度少女をライブに誘い今度は成功する、せめてそれくらいまでは書くべきではなかったのか。『ただの女子高生』にも似たようなことが言える。ちゃんと話を転がし、しっかりと結ぶ。そんな“4コマ漫画”を完成させることが小説を書く上での最低限のルールなのだろう。
しかし、時間は無限ではない。ストレートはあと2ヶ月もすれば辞めてしまう。起承転結を一から組み立てる時間など無く、ある程度完成された素材が必要。そしてそれは考えるまでも無かった。
――『桜の舞う頃に・・・』――
もう5年も前に書いた作品である。王道恋愛路線としてはベタすぎるかもしれないが、変化球の『タオル』で失敗したのだから、ここはストレートの球を投げるべきだろう。
まずは当初の約束どおり「学園もの」になるように設定を改変した。26歳社会人の主人公は17歳、高校2年生になった。ヒロインの年齢をそのままにした為、彼の全ての発言を敬語に変えた。旧作では2行で済ませられた“ヒロインの元彼”の設定をクローズアップし、砂時計という重要アイテムを加え、主人公の家族も絡めた。旧作の無駄な箇所はバッサリ削り、特に前半部分はかなり短くなった。ここまで改造しても5年前の文章の半分近くはそのまま使い回している。
僕は何度もストレートを笑顔にしてきたと思っていた。だがそれは彼女が勝手に笑ってくれていただけ。今度こそ僕の力で、僕にしか出来ない方法で――。
――『桜の舞う頃に・・・2014』――
全ての力を出し切り、この小説は完成した。
――しかし――
「面白かったです」
時を同じくして、ストレートは自分から、僕の書いた小説の感想を教えてくれたのだった。
「腹を抱えて笑いましたよ」
そう、『タオル』の感想を。
「ちょっと待って下さい、本当ですか?」
「ハイ」
「良かったぁ~!」
「遅くなってすみません」
「イヤ、本当に悩んだんですよ! 作品選びを失敗したって。何週間たっても感想教えてくれないから、これ絶対途中で読むの止めたんだなって」
この日は2月18日。『タオル』をカピバラに渡してから実に2ヶ月近くが経とうとしていた。
「イヤ、ちゃんと最後まで読みましたよ。そんなに悩んでいたんですか?」
「そりゃそうですよ!」
あまりの衝撃に僕は本音しか出てこなかった。結局彼女の求めていた話はギャグ路線で正しかったようだ。
「じゃあもう一つの……『薔薇色のなんちゃら』は」
実は、万が一の保険として『薔薇色への架け橋』の再編集版『薔薇色の絵の具』も一緒に渡していた。
「それも面白かったです。僕さんの文章面白いですね」
女性を簡単に信じてはならないことは百も承知。ただこの時ばかりのストレートの笑顔だけは本物だと思いたかった。いずれにせよ、彼女だけの為に書いたはずの『桜の舞う頃に・・・2014』を彼女に見せることは断念し、こうして小説共有サイトに公開する運びとなった。『タオル』で喜んでくれたのであればもう悔いは無い。欲を捨て、余計な勝負に出るのを止めたまでだ。
人見知りが治らないまま早28年、僕のやってきたことは果たして正しかったのか。その答えは未だに出ていない。そもそもそれを決めるのは周囲の人々であり、自分で簡単に答えを出せる問題ではないのだ。
ただ一つだけ言えるのは、どうせ3月で辞めるストレートに対してはどんなヘマをしても大きな影響にはならないということ。それなら考えるよりもとにかく行動に移し、ゆっくり答えを探そうではないか。
――万華鏡キラキラ回る世界は 君にどう見えるの?――
(Fin.)
>もう一つのプロジェクトは既に動き出していた。
2014年1月23日、もう一つのプロジェクトは大勝利という形で完遂した。
>勝利を掴むとはこういうことなのだろう。反省点もあったが、現状でできる最大限のことはしたと思う。とりあえずこれで悔いはなくなった。(当時のつぶやきより)
この詳細は後日別枠にて書くとして(都合により本編の内容を変更しました)、急ごしらえとはいえ一つの作品として仕上げた改正版の『タオル』が大惨敗に終わった件は、心残りが無いと言えば嘘になる。曲がりなりにも学生時代から続けてきた唯一の趣味だ。このままで終わらせたくない。
――だったらもう一度、書けば良いじゃない――
それしかないと思った。時間をかけて自分でも納得のいく小説を仕上げ、もう一度ストレートに見せる。“小説物語”は再び動き出した。
今回の読者はネットの向こう側にいる不特定多数の人々ではない、ストレートただ一人なのだ。ではストレートが求める話とは何か。いつも笑ってくれていた彼女も結局は一人の女子高生。『セカチュー』や『恋空』に多くの女性は涙した。やはりギャグではなく王道恋愛路線だったのではないか。
そしてもう一つ気になったのは“起承転結”。例えば『タオル』はライブで主人公が恥をかいた話のみで、起承くらいの2コマで完結してしまっている。その後主人公はゆずについて猛勉強をし、もう一度少女をライブに誘い今度は成功する、せめてそれくらいまでは書くべきではなかったのか。『ただの女子高生』にも似たようなことが言える。ちゃんと話を転がし、しっかりと結ぶ。そんな“4コマ漫画”を完成させることが小説を書く上での最低限のルールなのだろう。
しかし、時間は無限ではない。ストレートはあと2ヶ月もすれば辞めてしまう。起承転結を一から組み立てる時間など無く、ある程度完成された素材が必要。そしてそれは考えるまでも無かった。
――『桜の舞う頃に・・・』――
もう5年も前に書いた作品である。王道恋愛路線としてはベタすぎるかもしれないが、変化球の『タオル』で失敗したのだから、ここはストレートの球を投げるべきだろう。
まずは当初の約束どおり「学園もの」になるように設定を改変した。26歳社会人の主人公は17歳、高校2年生になった。ヒロインの年齢をそのままにした為、彼の全ての発言を敬語に変えた。旧作では2行で済ませられた“ヒロインの元彼”の設定をクローズアップし、砂時計という重要アイテムを加え、主人公の家族も絡めた。旧作の無駄な箇所はバッサリ削り、特に前半部分はかなり短くなった。ここまで改造しても5年前の文章の半分近くはそのまま使い回している。
僕は何度もストレートを笑顔にしてきたと思っていた。だがそれは彼女が勝手に笑ってくれていただけ。今度こそ僕の力で、僕にしか出来ない方法で――。
――『桜の舞う頃に・・・2014』――
全ての力を出し切り、この小説は完成した。
――しかし――
「面白かったです」
時を同じくして、ストレートは自分から、僕の書いた小説の感想を教えてくれたのだった。
「腹を抱えて笑いましたよ」
そう、『タオル』の感想を。
「ちょっと待って下さい、本当ですか?」
「ハイ」
「良かったぁ~!」
「遅くなってすみません」
「イヤ、本当に悩んだんですよ! 作品選びを失敗したって。何週間たっても感想教えてくれないから、これ絶対途中で読むの止めたんだなって」
この日は2月18日。『タオル』をカピバラに渡してから実に2ヶ月近くが経とうとしていた。
「イヤ、ちゃんと最後まで読みましたよ。そんなに悩んでいたんですか?」
「そりゃそうですよ!」
あまりの衝撃に僕は本音しか出てこなかった。結局彼女の求めていた話はギャグ路線で正しかったようだ。
「じゃあもう一つの……『薔薇色のなんちゃら』は」
実は、万が一の保険として『薔薇色への架け橋』の再編集版『薔薇色の絵の具』も一緒に渡していた。
「それも面白かったです。僕さんの文章面白いですね」
女性を簡単に信じてはならないことは百も承知。ただこの時ばかりのストレートの笑顔だけは本物だと思いたかった。いずれにせよ、彼女だけの為に書いたはずの『桜の舞う頃に・・・2014』を彼女に見せることは断念し、こうして小説共有サイトに公開する運びとなった。『タオル』で喜んでくれたのであればもう悔いは無い。欲を捨て、余計な勝負に出るのを止めたまでだ。
人見知りが治らないまま早28年、僕のやってきたことは果たして正しかったのか。その答えは未だに出ていない。そもそもそれを決めるのは周囲の人々であり、自分で簡単に答えを出せる問題ではないのだ。
ただ一つだけ言えるのは、どうせ3月で辞めるストレートに対してはどんなヘマをしても大きな影響にはならないということ。それなら考えるよりもとにかく行動に移し、ゆっくり答えを探そうではないか。
――万華鏡キラキラ回る世界は 君にどう見えるの?――
(Fin.)