一度でも引越しをしたことがある人なら、それがとても大変なことであり、想像を絶する費用がかかることは理解していると思う。しかし当方は、初期費用や引越し費用、退居物件のクリーニング費用を含めても約17万2000円での転居を実現させた。その過程において思慮の浅さや反省点もあった。また、不動産業界の内情が近年変化していることも知った。費用は運が良かっただけかもしれないし、内情は諸説あるだろうが、あくまで当方の体験した記録を反省点も含めてありのままに綴るので、これから引越しを検討している人に少しでも参考にしていただければ幸いである。
<引っ越す理由>
当方には引っ越すやむをえない理由があった。4年前、入社2年目で会社からの要望により勤務地の近く、会社名義契約の1R物件に転居し、多少の家賃補助もあった。その会社を退職することで退居は免れなかったということである。
また、これをわざわざ書いたのは、退居手続きを会社に行っていただいたことで、それに関する説明は出来ないからである。申し訳ないがその点についてはネットで調べていただきたい。
<8月1日:物件を決める>
当然ながら、どの物件に引っ越すかで転居費用の大半は決まってしまう。目安としては家賃の5~6倍かそれ以上の初期費用がかかるものと思っていただきたい。東京都内1R物件の平均家賃は約7万円というデータがあるが、仮に7万円でも初期費用は35万円以上は覚悟しなければならないということ。しかし当方は最終的に家賃2万3000円(共益費込み)の物件に決定し、初期費用を約12万円に抑えることが出来た。ちなみに23区外とはいえ“都内”であり、現在の勤務地から電車で45分ほどの好立地となった。
物件探しの裏技として良く言われるのが、ネットで調べず「地域密着型の不動産屋へ行って相談し、ネットに公開されていない物件を紹介してもらう」という方法だ。しかし当方は時間の都合上、ネットで調べてしまった。最悪浴槽が無くてもシャワールームがあれば良いと思っていたので「物件 シャワー」で検索し、シャワー付物件を抽出可能なサイトで調べ、まずは家賃2万円(共益費込み)の物件を発見。シャワー付で検索したはずが、ユニットバスとはいえ浴槽もちゃんとあった。検索ワードに「シャワー」を入れることは、意外と安い物件を見つける近道なのかもしれない。連絡先は大手不動産会社となっており、前述の「地域密着型」の条件には当てはまらないが、とりあえず電話をかけ、初期費用を見積もっていただき、内見のアポイントも取った。
<8月5日:内見>
いよいよ大手の不動産屋を訪れる。担当者は当方の見つけた物件のみならず、それに近い条件の物件も事前に調べていただいていた。その中に当方が調べた物件以上の好条件なものがあり、その物件に決定した。家賃は2万3000円(共益費込み)と少し上がるが、駅徒歩5分と立地が良く、初期費用も候補の中では一番安かったのだ。ちなみにネット非公開物件である。
<まさかの都内! 初期費用12万物件の内訳>
(1)契約金
◎敷金:0円
◎礼金:0円
◎文書作成代:3000円
◎鍵交換代:2万7000円
◎保証会社への保証料:1万2000円
◎火災保険:1万5000円
◎仲介手数料:2万1600円
(2)賃料
◎8月日割り(22日間):1万7323円
◎9月(前家賃):2万4000円
(3)合計:11万9923円
いよいよ担当者の同行の下、車に乗せていただき内見へと向かう。外観や内装は写真を撮っておく。チェックすべきポイントは壁や床の損の有無はもちろんだが、天井の部分的な変色は無いか(雨漏りの可能性)、携帯電話の電波状況やインターネット環境などである。
ちなみに、家賃の安い物件にありがちな3つの理由はこちら。
(1)いわゆる事故物件
(2)過去に近所トラブルがあった
(3)設備上の不備(ガス風呂給湯器が旧式など)
当方の選んだ物件は上記のいずれも当てはまらなかったが、不安なら(1)(2)について聞いてみるのも手である。(3)はオンボロで今にも壊れそうな設備は無いかのチェックをしておこう。
<8月7日:物件の決定と手続き>
この日に再度不動産屋を訪れた。諸事情により前回内見した部屋が他者に先手を取られてしまい、同じ建物の違う部屋を再度内見した。家賃や初期費用は同一である。この物件に決定し、手続きを開始。ここで、近年は保証会社への加入が必須の物件が増えてきていることを知る。親に保証人になってもらえば良かった時代は終焉を迎えつつあるのだ。注意すべきは保証会社の審査もここ数年で厳しくなっており、転職がネックになるということ。保証会社の立場からしても、これから転職する人よりは「年収何百万の会社に何年勤めている人」のほうが審査を通したいと思うだろう。転職者の審査において内定通知書などの転職証明書類は必須となるので、それが無い場合は不動産屋に相談すること。
同じ日の夜、保証会社から電話が来て、複数の質問に答えた。審査申込書には親や勤務先の電話番号も書いたが、それらへの電話連絡は無かった。
<8月8日:審査クリアと初期費用の支払い>
不動産会社から電話をもらい、審査クリアの旨を告げられた。新しい会社の入社日が8月14日であった為、8月10日~13日までの入居を希望していたが、なんとご好意により10日入居を可能にしていただいた。当方の考えが甘く、行動が遅かったことは大きな反省点として挙げられるが、不動産会社の尽力には感謝の言葉しかない。保証会社の審査に期間を要することを考慮し、入居希望日の2週間前には不動産屋へ相談に行くことが望ましい。
早速、初期費用11万9923円を振り込む。総費用17万2000円から差し引くと残りは5万2000円ほどだが、本当にこの金額で引越し費用と退居時クリーニング費用を賄えるのだろうか。
<同日:引越し業者への依頼>
入居日が決まったことでようやく引越し業者への依頼が可能となる。当方は引越し業者比較サイトで約200社への一括見積りを依頼したが、複数の業者から電話が頻繁にかかってくるのであまりオススメしない。当方が見つけた単身引越しサービスの安い業者は以下の2社。
(1)赤帽いいとも
見積運賃制で、渋滞などによる追加料金は無し(※)と安心。搬出と搬入を同日にすればかなり安く抑えられる。別日にすれば料金が2倍以上にはなるが、保管料は大手他社より格別に安い。
※荷物量が見積もりより大幅に上回れば追加料金が発生する場合もある。
(2)ヤマトホームコンビニエンス
1万1000円~と驚異の安さ。ただし宅急便方式の為、搬出と搬入を同日には出来ず、どんなに近距離でも翌日以降搬入となるので注意。逆を言えば搬出と搬入を別日にしたい人ならオススメで、料金が2倍になることもなく、保管料もまさかの0円である。
この2社の公式サイトに行って見積もりを依頼した上でどちらかに決定すれば大きく損をすることは無いと思う。
当方の場合、(2)は引越し希望日に作業員の空きが無かった為断念し、(1)の赤帽に決定した。関東圏内の移動で家具も少なかったとはいえ、見積額は2万8080円と激安になった。
<この内容なら引越し費用3万以内も可能!>
◎神奈川から東京への即日搬出入
◎ダンボール約25箱(ノートPC、デッキなど小さな家電も梱包する)
◎テレビ、ローテーブル(2台)、座椅子、デスクチェア、ハロゲンヒーター、折りたたみ式ベッド
洗濯機はもとから無く、冷蔵庫は退居物件の備品であった為移動せず。そりゃこの2つが無いだけでも安くなるわけだが、それを差し引いてもリーズナブルであることはお分かりいただけると思う。
見積もり依頼の際の注意として、(1)ダンボールの数は予想より多めに設定、(2)新居に特殊な特徴があれば明記すること。特に(2)である。当方の新物件は高台にあり、トラックの停車地点から60段もの階段を昇る必要がある。その場合は作業員を1名増やす可能性があり、見積もり費用にも影響が出てくるのだ。
<8月9日:荷造り、梱包>
梱包してくれる業者もあるが、引越しは基本自分で事前に梱包するものだと思っておきたい。そのほうが当日の搬出を短時間で済ませられる。ダンボールはスーパーやコンビニなどへ行き、店員にお願いすれば不要なものをもらえる。梱包したら油性マジックペンで内容物を書いておかないと後々不便になる。ここでダンボールの大きさにもよるが、その数が予想を上回る可能性が高いので、前述のとおり見積もりの際のダンボールの数は多めにしておこう。少しでも数を減らす為に、不要なものを思い切って捨てる勇気も必要。粗大ごみに出す場合は数週間前から調べて回収日までに処理しておかないと引越しのトラックに積むはめになってしまう。捨てられないなら実家や友人宅などにプレゼントするのも手である。
レトルトやインスタントなど備蓄の食品は引越しまでになるべく無くすか減らす努力をしよう。食品だけでダンボールが増えるのは勿体無い。それでも調味料などは梱包することになるだろう。
<8月10日:清掃>
出来れば前日までに清掃は済ませておきたいが、当方は引越し当日の朝になってしまった。清掃の仕方は人それぞれだとは思うが、当方が清掃に使用したものはこちら。
◎箒、ちりとり
◎雑巾3~4枚
◎キッチンペーパー
◎除菌用アルコール
◎電解水(水の激落ちくん)
◎風呂用洗剤
◎スポンジ3~4個
◎カビキラー(浴槽のカビに)
◎トイレマジックリン
キッチンペーパーにアルコールを含ませ布巾の代わりに、油汚れは専用洗剤ではなく電解水で代用するなど、少しでも費用を抑える工夫をした。既に自宅にあるものも含まれているので費用計算は省略する。まあほとんどが100円ショップで手に入るだろう。出せる場合はダンボールなどを外に出しておけば清掃しやすくなる。
ゴミは引越し前最後の回収日に回収所に出せるよう計画的に行わなければならない(特に可燃ごみ)。
<同日:入居手続きと鍵を貰う>
午前中に不動産屋へ行き入居手続き。宅建の資格を持つスタッフからの説明を受けたり、約10枚の書類に書いたり捺印したり。家賃が引き落とされる銀行口座(本人名義)と実印が必要になるので、無い場合は事前に用意しよう。
その全てが終わるとようやく新居のルームキーをもらえる。しかし新居に入る暇は無いので退居物件へ逆戻り。
<同日:搬出と搬入>
清掃の最終チェックをし、疲労はピークに。17時40分に業者到着。事前にダンボールや家具などをほとんど外に出していたので作業員2名でもたったの15分で搬出完了。作業員のトラックを見送り、電気のブレーカーを落とし、ガスの元栓を締める。
ここからが時間との戦いである。まず、万が一積み切れないダンボールが出てきた場合は、急いで近くのコンビニへ持っていき別途宅配便で送る(もちろん当方の場合は無かったし、無いように気をつけねばならない)。当方が最初に向かったのは退居物件を契約した不動産会社。ルームキーを返却しないと退居完了にはならない。その後電車に乗り1時間以上かけて新居へ行き小休止。まだ電気が通っていない為、あらかじめ用意した100円ショップのライトを数箇所に設置。ほどなくして業者も到着し、階段の段数が多い為当方も搬入を手伝う。その場合は滑り止め付きの軍手かラバー手袋を装着した方が良い。終了後、見積もり金額通りの2万8080円を作業員に支払う。搬入を手伝った後の当方の疲労は今までに感じたことの無いレベルで、しばらくは立って歩くことすら出来なかった。水が最初から出るようになっていたのが救いだった(水だけは人が生きるのに必要な為、最初から出るようになっている……と思う)。
<後日:各種手続きとクリーニング費用の支払い>
役所へ行き転出届や転入届の手続き、免許証や郵便などの住所変更手続き、光熱費やNHK受信料などの手続きなど、引越しには多くの事務手続きが伴い、各所に足を運ぶのが面倒だった。
そして退去物件のクリーニング費用は約2万4000円だった。これが4万円以上かかる場合もある。初期費用、引越し費用、クリーニングとここまでの総費用は約17万2000円。おそらくこれより安く抑えるのは難しいと思うので、最低でもこれだけかかるという目安として考えていただければ幸いである。
また当方の場合は新たに冷蔵庫(ホテル用のコンパクトタイプ、アマゾンで3000円+送料)などを購入し、プロパンガス契約時に保証金1万円を預け入れるなど、付随費用も決して安くは無かった。結局はお金に余裕が無いと引越しは出来ないし、労力は机上での予想を確実に上回るので覚悟も必要だ。当方はお金に余裕があるわけでは無かったし、前述の通り止むを得ない引越しだったが、決して「ただ広い部屋に住みたい」「職場の近くに住みたい」など安易な気持ちで引越ししようなどとは考えないで欲しい。引っ越す前にまずは「本当に引っ越すべきか」をもう一度考えよう。