「高層団地の1階に地下鉄の車庫がある。」
そんな不思議な話を聞いて、平日の講義後に都営地下鉄三田線に乗り込む。
しばらくすると三田線は地下鉄のくせに地上へと顔を出して、高架橋を走る。
終点の西高島平にも近づいた西台駅で下車。
駅に直結した都営西台アパートこそが、目的地である。
1970年代前半に郊外に建てられた高層団地のひとつで、沿線上に建つかの有名な高島平団地とも同世代である。
三田線の路線と垂直になるように並ぶ団地は4棟。
東側から5号棟、6号棟、7号棟、8号棟となり、どちらも地上10階以上の高さを誇っている。
建物は、中央に吹き抜け空間のあるツインコリダー型をしており、巨大ボックスのような迫力だ。
これらの団地の直下に都営地下鉄三田線の車両基地、正式には志村検修場がある。
地下鉄だからといって、車両基地が団地の地下にあるのではなく、あくまでも地上1階にあるのである。
車両を留置・点検するための路線が地上には張り巡らされ、それらを跨ぐように敷かれた人工地盤上に4棟の団地が聳えているのだ。
あと数年で四半世紀が経とうとする建築なのになんと近未来的な立体構造であろう。
昔はこの人工地盤上に、区立小学校もあったという。
西台駅のホームは高架だが、改札口は地上にある。
地上の改札から、団地へはいくつかの階段で連絡している。
連絡階段からは基地に整然と並ぶ三田線の車両を覗き見ることができた。
地上では電車が集まって、その上では人々が集まって暮らすという都市ならではの構成。
人工地盤上は非常に静謐な空間。
自動車や人々の往来が絶えない地上とは隔たった別世界のよう。
日が暮れると、蛍光灯がコンクリートを照らす独特の寂しさがある。
団地に暮らす人々の利用する自動車や自転車なども停車していて、人工物ばかりが目につく。
ちなみに団地の北側には地上と人工地盤をつなぐスロープあり、自動車や自転車はそこを行き来するようだ。
北側のスロープ。
住居者の自動車用道路と歩道がある。
コンクリートに覆われて薄暗い雰囲気だが、住居者であろう老人の往来があった。
スロープ歩道からも車両基地を覗くことができる。
帰宅ラッシュの時間と重なったため、車両の多くは出払っているようだ。
似たような車両が整然と並んでいると、綺麗。
物音さえしない静寂の空間。
普段は音を立てて動く車両も、眠れば大人しい。
西台駅から、団地へと続く階段。
西台駅側から基地を覗く。
X型の補強柱が上部の団地を支えている。
三田線がみっしりと並ぶ。
場所によっては夕刻でも車両が多く寝ていて驚き。
人工地盤の下からはみ出るように2本の留置線も敷かれている。
団地に行くにはこの留置線の上を通ることになる。
人工地盤は地上3階ほどの高さにあり、階段で上るには少し疲れそうだ。
留置線に停まっているのは三田線が直通運転を行っている東急線の車両。
車内には電気が点いていて、今にも動き出しそうだ。
からっぽの車内はどこか水槽の中を覗いているようで楽しい。
しばらくして車両は動き出し、日吉行きとして駅へと向かっていった。
ごくろうさまです。
無機質な屋根も団地らしい。
単純な反復とそれを照らす白熱灯。
丸、三角、四角、、、、
目に見える景色がたくさんの同じカタチで作られている。
しかしそれを見ても、人は何も感じることはない。
団地への通路、駅構内の通路、従業員の通路が絡み合って、迷路のよう。
大通りに面している東口とは異なって、西口は少し裏口っぽい雰囲気がある。
人が住まう場所と地下鉄の住まう場所。
機械と人とが同じ場所に集う不思議な空間。
それではおやすみなさい。