篠ノ井線は長野県内を南北に走り、塩尻から篠ノ井までを結ぶ中距離路線ですが、
実質、運行上は松本駅と長野駅を起点としているため、両都市を結ぶ性格が強い路線です。
そのため、朝夕は通勤通学客で混雑しますが、日中の普通列車はゆったりと走ります。
長野市と松本市の間には標高差があるために、天候や気温も大きく異なります。
快晴の松本を出発した列車は、途中のもっとも標高の高い冠着あたりで吹雪になり、善光寺平に出ると曇天、のような気候の変化も山間部ならでは。
篠ノ井線のハイライトは姨捨駅付近からの善光寺平の眺めではないでしょうか。
長い冠着トンネルを出て、一気に長野駅のある善光寺平へと下っていく情景はなかなか忘れられないものです。
標高差と両都市を結ぼうとする意地が生み出した雄大な景観です。
トンネルの出口は平野全体を見下ろすことのできる山の中腹に位置しており、広がる車窓を眺めつつ列車は姨捨駅へと到着します。
ここから見える景色は日本三大車窓にも指定されており、マニアでもそうでなくとも一度は見ておきたい風景です。
風景はもちろんのこと、列車に乗って、トンネルを抜けるといった過程も大事な要素だと私は思います。
トンネルから放り出されたら山の上という状況は、「トンネルを抜けると雪国」と同じくらいの別世界観です。
姨捨駅を出ると、列車は平地へ向けて山を一気に駆け降ります。
山を下る軽快な走行音とともに徐々に近づいてくる街の景色を眺めていると、旅の終わりを感じます。
もしもこの平野に故郷があるとしたら、ぜひとも帰郷時には篠ノ井線を使いたいですね。
往路の飛行機から東京を眺めるような、そんな気持ちで近づいてくる街を眺められるのではないでしょうか。
反対に、徐々に遠くなっていく街並みを眺めるのもよいかも知れません。
篠ノ井線では、長野から松本を経由し大糸線に乗り入れる観光列車「リゾートビューふるさと」が休日を中心に運行されており、
大きな窓ガラスとゆとりのある座席配置が魅力ですから、機会があれば利用したいものです。
姨捨駅を発車する篠ノ井線
善光寺平と篠ノ井線