13:34 金城ふ頭駅発 <あおなみ線>
名古屋駅へと戻る、あおなみ線の車内は非常に賑やかな様子である。
皆、リニア・鉄道館を見学してきたのだろう。
皆が座席に座りながら振り返って車窓に見えるものを目で追ったり指さしたりしているから、沿線に馴れていない乗客と一目でわかる。
私も同じように外を眺めては、見知らぬ沿線風景を楽しむ。
途中で眺めの編成の貨物列車とすれ違った。
名古屋駅は太閤口からJR線の下を通り過ぎて名鉄名古屋駅へ向かう。
名鉄フリーパスがまだ本日も使えるのでなるべく乗っておきたい。
願わくばミュースカイに乗って中部国際空港にも行ってみたいし、
常滑の「やきもの散歩道」を散策したり、のんびりと蒲郡線に乗車もしてみたいのだが時間が足りないので、
本来の趣旨である、のりものづくしを貫くことにしようと思う。
名古屋駅から2つ先の上小田井駅まで乗車したいのだが、普通犬山行きが目の前で行ってしまった。
上小田井駅は特急は停まらないために、次に乗ることのできる列車は27分の急行。
ぼんやりと次の列車を待つ私の前を矢継ぎ早に停まっては出発する電車。
行先は岐阜に弥富、新鵜沼と様々で目がまわる。
電車は私の前に停まったり、停まらなかったりする。
編成も行先も種別も異なるのだから、乗りこなすのは難しい。
結局、目的の列車が来るまでの10分ほどの時間に4本の列車を見送った。
14:29名鉄名古屋発 <名鉄犬山線急行>
ここから短区間乗車するのは名鉄犬山線。
名古屋から犬山結ぶ名鉄の幹線のひとつだろう。
地上へ出てしばらくは本線と同じ路線を通り、枇杷島分岐点で右へ大きくカーブし、本線と逸れて犬山へと向かう。
枇杷島分岐点は本線と犬山線が平面交差しているほか、分岐先同士を結ぶ路線もあり三角形のデルタ線を形成している。
駅を起点に分岐することが多い中、ここは独立して分岐点がある。平面的なセクションも珍しい。
ここからしばらくは高架線を走る。
犬山線の急行が名古屋を出て初めに停車するのが上小田井駅。
駅に滑り込む手前に、さらに背の高い城北線の高架線をくぐる。
ほぼ同時に地上から路線が吸い込まれるようにこちらに伸びてくる。
これは地下鉄鶴舞線で、この駅から犬山線に乗り入れてくる。
地下鉄との共用高架駅は都市郊外ではよくある光景。
上小田井駅を降りると、先程交差した城北線の高架線を目指して歩く。
城北線の小田井駅が歩いて5分ほどのところにある。
乗換駅としては公認されていないが意外と近い。
名鉄の線路沿いを名古屋方面に歩くとすぐに高架線が見えてくる。
名鉄線より高いところを走る城北線の高架線、周囲に高い建物が無いためか現代に生きる城壁のよう。
高架橋に沿って歩くと小田井駅がある。
たいそうご立派な高架線とは裏腹に、駅前はひっそりとしている。
高架線のコンクリートに大きく「小田井駅」と書いていなければ駅とは気付かないだろう。
駅前一等地には砂利敷きの契約駐車場。その合間を縫って駅に向かう通路が伸びていて、控えめに「小田井駅」と書いてある。
橋脚内に納まった駅構内にはトイレ以外に施設はない。
他は普通の高架駅とさほど変わらないのだが、「色」がこの駅には皆無で、冷たく押し黙ったコンクリートが不気味。
ホームは地上4階にあるので、階段を使って上っていく。
2階には意味深な空きスペース、3階にはコンコースもあるが自動改札機もない無人駅で、ただ広い空間があるのみ。
ホームへ上がると、視界が開ける。展望台に上ったように見晴らしが良い。
名古屋方面を見ると、駅前のビルや栄のテレビ塔の姿も確認できる。反対側には巨大なショッピングモールが見える。
これは待ち時間に景色が眺められて素敵だなと思ったが、場所が場所なだけに風が強い。
階段付近に車両1両ほどの長さの屋根があるだけで雨風をしのぐには心もとない。
高架線とは現代的だけれども、中身は地方ローカル線の無人駅さながらの簡素さ。
一体列車が来るのかすら不安になる。
名古屋にこんな場所がある事すら信じがたい。
この城北線は東海交通事業城北線と言って、JR東海の子会社が運営を行っている路線で東海道本線の枇杷島駅と中央線の勝川駅を結ぶ。
列車の本数は毎時1本と少なく、途中駅に他線との乗換駅はない。
ほぼ全線が複線高架という恵まれた環境を持ちながらも、名古屋市にあることが信じがたいほどのローカル線だ。
変わった構造の駅や路線の遺構が好きな私はいつか川島令三氏の本で城北線の存在を知り、乗ってみたいと思っていた。
が、予想をはるかに上回る本数の少なさと接続の悪さで毎回断念していたのだ。
しばらくすると、静けさを破って列車接近の放送が流れた。
やって来たのは1両編成の気動車。車体はJR東海と似た色をしている。
数人の乗客を乗せて、小田井駅を出発。