松本駅は長野県の第二の都市。
中央本線の実質の終着駅で、特急「あずさ」も発着する。
しかしながら、本当は5つ手前の塩尻駅から松本間はJR篠ノ井線。
中央本線は路線がJR東日本とJR東海の2社に分かれていて、その分水嶺が塩尻駅なのだが、便宜上すべての列車が松本発着になっている。
塩尻以東を中央東線、以西を中央西線と呼ぶこともあるように、同じ路線名でも運行形態は全く異なるため、直通列車もない。
当初は塩尻駅で中津川行きの列車に乗り換える予定が、下諏訪駅での途中下車が叶わなかったため、中津川行きの始発駅である松本まで来た。
中津川行きの列車は駅の端っこにある1番ホームから発着するようで、2両編成の車両がすでに停車している。
東京を離れるごとに編成が短くなっていく中央本線であったが、ついに2両になってしまった。
それもそのはず、塩尻から中津川までの区間は中山道中木曽路にあたるエリアで、列車は木曽川に沿った山間部を進むことになる。
東京から名古屋までの400㎞近い距離の中で、塩尻から中津川間がもっとも列車の運行数も少なく、特急列車「しなの号」を除けば1日9本程度である。
発車10分前に電車のドアが開く。
車両は真新しい転換クロスシート車。
窓際に腰を下ろして、外を眺めるには最適だ。
近距離移動のために乗車したと思われる地元女子高生は「いい電車」と言っていた。
きっと(ロングシート車よりも)「いい列車」ということだろう。
10:24 松本駅発 中央本線【普通】中津川行き
2両編成の車両の乗車率は高く、座席の多くは埋まった状態で松本駅を出発。
松本駅から塩尻駅までは地方都市近郊エリアなので乗降客が多く、松本で乗車した人の大半が塩尻で下車したようである。
代わって塩尻駅からはキャリーケースを引いた見るからに旅行客な人々が多く乗車して、またも席は埋まった。
終点の中津川駅までは約2時間。
週末だからか、長距離利用者もいるようである。
列車はいよいよ山間に分け入って、数々の集落を横目に進んでいく。
贄川、奈良井、宮ノ越、木曽福島・・・・
中山道の宿場町をいくつも越えていく。
数年前に奈良井宿に散策に来たのが最後で、そこから先は私も未乗車区間である。
しかし、この列車が実に心地よく走行するので、木曽福島前後の40分は夢の中であった。
気づいたころには車窓の木曽川も川幅を広げていたが、水質の良さは変わらないようで、川底の丸石ですら確認できる。
そういえば、上松あたりにある「寝覚の床」は水流が形成した奇妙な岩石を見ることができるので、いつか訪れてみたいと思っていた。
なかなか気軽に訪れることは難しいエリアであるから木曽路の宿場町とともに途中下車の旅もしてみたいものだ。
12:54 中津川駅着
中津川駅は木曽路の南端。
両側に迫った山々が開けて、市街地となっている。
とはいっても、駅前には特になにもない地方都市特有の光景。
駅前通りをしばらく進むと大型ショッピングセンター:アピタや市の中心部があるらしい。
駅前の地図で見る限り、中山道歴史資料館が気になった。
今回は散策が目的ではないので、もう一度ホームへと舞い戻る。
次の列車は名古屋行き。
長い中央本線の旅もいよいよ最後の列車だ。
車両も一気に増えて、8両編成で入線。
味気のないロングシートだが、ひとつの車両に乗客は数えるほどしか乗っていないから快適である。
13:20 中津川駅 中央本線【普通】名古屋行き
中津川駅を出ると、遠くに見える山々を眺めながら快走する。
途中の恵那駅では明知鉄道というローカル私鉄が分岐している。
ついぞ最近までその名前すら知らなかったのであるが、この恵那から明智までを結ぶ旧国鉄の路線であるらしい。
駅名は「明智」であるのに鉄道路線名は「明知」であるからややこしい。
13:59 多治見駅着
このまま中央本線を名古屋まで完乗してもよいが、多治見からは名古屋都市圏に入ってしまうので少し遠回りをする。
乗り換えるのは、多治見と美濃太田を結ぶ太多線。
名古屋から放射状に伸びる中央本線と高山本線を横軸で結ぶ路線である。
しかも路線は非電化のようで、ホームには2両のディーゼルカーが停車していた。
ボタンを押して車内に入ると真新しい匂いがする。
きっと新車なのだろう。
それにしてもJR東海の車両は快適だが皆同じような顔つきをしている。
14:21 多治見駅 太多線【普通】岐阜行き
出発するとディーゼル車特有の音と振動を立てて進む。
先ほどの中央本線と比べると、まったくスピードは出ないが、このゆっくりとした感じも嫌いではない。
また、太多線は非電化路線にしては運転本数があり、単線だが列車交換のできる駅で度々、多治見行きの列車とすれ違う。
後方車両の最後部に腰を下ろして過ぎ行く車窓を眺める。
名鉄広見線と接続する可児駅を過ぎれば、木曽川と久々の再会。
いつの間に川は大河と化しており、少し下流では夏に鵜飼も行われているようである。
鉄橋には架線も防風柵も付いていないため、落ちないか不安になるほど眺めがよい。
天候が良ければなお綺麗であろう。
美濃太田が太多線の終点だが、この列車は高山本線に乗り入れて岐阜駅まで行く。