Fuji Trip!

水豚先輩の週末旅日記

山陽本線途中下車の旅【その9】吉備津の釜

2020-02-01 19:28:00 | とらべる!


吉備津神社の見どころは、社殿だけではありません。

拝殿横から旧社務所に向かって伸びる廻廊もそのひとつ。
地形に沿って一直線に伸びています。

全長は360mあるので圧巻です。



建築は天正7年の再建。


こんな長い屋根付きの廊下がある神社は珍しいですが、
吉備津神社は境内が縦に長いので、神事や祭礼の時に使われたものだと思われます。



廻廊をしばらく歩くと、右に伸びる道があります。

道の先にあるのは、御釜殿という建物。
釜の鳴動によって吉凶を占う、鳴釜神事が行われている場所です。


ご祭神である大吉備津彦命が退治した鬼「温羅」の首を埋めた場所とも伝わっており、謎多き神事として古来より有名でした。




鳴釜神事に関して、江戸時代に書かれた上田秋成『雨月物語』にも登場しています。
私も雨月物語の「吉備津の釜」を読んだ時に初めて吉備津神社と鳴釜神事について知りました。


神事は毎日のように執り行われており、一般の参拝客も見学することができるようです。


残念ながら、当日は正月期間だったため見ることができませんでした。



御釜殿のあたりから境内を見ると、廻廊と本殿を一望することができます。

廻廊は本殿に向かって美しい曲線を描いています。



日が暮れてきたので、吉備津駅に戻ります。

もう一度、総社行きの列車に乗車して旅を続けましょう。



【その10】につづく


山陽本線途中下車の旅【その8】吉備津神社にて

2020-01-31 19:47:00 | とらべる!


14:34 総社行き


吉備津彦神社を参拝したあとは、
備前一宮駅から再び桃太郎線に乗車します。

ゆっくりする間もなく、次の吉備津駅で下車します。
乗車時間はわずか4分ほど。



次に巡るのは吉備津神社。
吉備津彦神社と一文字違うだけなので紛らわしいかもしれません。


御祭神が大吉備津彦命というところも同じですが、
吉備津彦神社は備前一宮、吉備津神社は備中一宮として知られています


鉄道で1駅ほどの距離しかないのに、2つの神社は昔は違う地域だったのです。
ちょうど境界に位置していたのが、両神社の背後にある吉備の中山です。


歩いても行けるような近い距離に、地域を代表する神社が集まっているということは、古来からこの一帯が栄えていたことを物語っています。



吉備津神社は吉備津駅の近くから立派な参道があります。


松並木の参道を3分ほど歩くと、境内の入口に到着します。
正月の三が日ということもあって境内に入る列ができていました。


手水をするのに渋滞していたようで、境内はそこまで混雑していませんでした。



境内に入るとまず、北随身門をくぐります。

室町時代に建てられた歴史のある建造物。
吉備津神社は近代以前の建造物が多く現存することもあって見応えがあります。


吉備津神社は吉備国の総鎮守として繁栄し、現在の岡山県で最も大きく格式の高い神社として知られています。

その創建については定かではありませんが、桃太郎のモデルとなった大吉備津彦命とその一族を祀っています。

背後にある吉備の中山には古代の自然信仰の痕跡が残されているため、かなり古い時代からこの地が聖域であったことが窺えます。




本殿などの社殿は小高い場所にあるため、急峻な階段を登ります。
階段の頂上付近は授与所の建物を突き抜けるような構造になっていました。

階段を登りきると、すぐ目の前が拝殿。
拝殿と本殿も室町時代に再建された歴史のある建造物です。

参拝を終えてあと、
授与所を抜けて広場に出ると初めて社殿の全貌を見ることができました。




吉備津彦神社の社殿は「比翼入母屋造り」の建築様式で建てられました

鳥が羽を広げたように、破風が仲良く2つ並んだ全国にも例を見ない建物です。
そのことからも吉備津造とも呼ばれているんだとか。

様式だけではなく、大きさも日本有数のもの。
社殿の周囲があまり広くないので、じっくり眺めることができるのは社殿の東側だけ。

冬は西日が強いので午後に参拝すると逆光です。
眩しくてじっくり見ることはできませんでしたが、写真で撮るとシルエットがいい感じでしたね。


【その9】へ続く

山陽本線途中下車の旅【その7】吉備津彦神社にて

2020-01-31 00:10:00 | とらべる!


桃太郎線に乗って、はじめに下車するのは備前一宮。

岡山駅から数えて3つ目の駅です。
 
 
片面の小さなホームに降りると、周辺はのどかな田園地帯。
この駅のすぐ近くには吉備津彦神社という歴史ある神社があります。
 
古くは備前国の一宮に数えられ、
備前一宮という駅名も吉備津彦神社のことを指しています。
 
神社の入り口までは歩いて5分ほど。
途中で桃太郎線の踏切を渡ります。
 
 
 


神社の前に立つと両脇には狛犬と獅子。
 
 
備前国ですから、もちろん備前焼で作られています。
 
シーサーのような色合いですが、どっしりと構えた姿が凛々しいですね。


 


鳥居をくぐって境内に入ると、両脇が池になっています。

池にはいくつかの島があって、歩いて渡ることができます。







島には亀島神社、鶴島神社と呼ばれる2つの社があってそれぞれ風と水の神様を祀っているようです。
 
まっすぐ進むと、元禄年間に建てられた随身門が構えています。
 
 




 
さて、吉備津彦神社は桃太郎のモデルといわれる大吉備津彦命(おおきびつのひこのみこと)を御祭神とする神社。

岡山県東部にあたる備前国を代表する神社ですから、格式も高く、本殿は三間社流作りという珍しい構造をしています。
現在の本殿は江戸時代の元禄年間に岡山藩主池田氏の援助で作られたもので、本殿以外は戦前に焼失後の再建です。
 
 
1月3日、この日はちょうど元始祭と呼ばれる祭礼があり、境内には多くの参拝客が訪れていました。
境内中央には薪が燃えていて、思わず暖まらずにはいられませんでした。
 
 



 
吉備津彦神社は古来の自然信仰を色濃く残している神社といわれています。
境内の背後には中山と呼ばれる小高い山があって、その山自体が神様として信仰されていました。
 
山には磐座や磐境といった神様の依り代が現在も残されています。
 
実際に境内から中山を歩いて見学することもできるようです。
磐座以外にも、山内には古墳や遺跡なども点在しているので気になる方は探検してみてはいかがでしょうか。
 
 

山陽本線途中下車の旅【その6】桃太郎線

2020-01-29 11:25:00 | とらべる!



13:37 岡山駅に到着。
岡山駅は山陽本線のほか、四国と連絡する瀬戸大橋線や内陸部を結ぶ津山線など多くの路線が乗り入れています。

本日の宿泊地は山陽本線で3つ先の倉敷。
時間に余裕があるので、色々と巡ってみようかと思います。


選んだのは桃太郎線。
以前は吉備線と呼ばれていたのですが、いつの間に桃太郎線に改称されていました。

ホームに降りると、2両編成の気動車が。
桃太郎線にふさわしい桃太郎ラッピング!

先頭車は民話風のデザインでしたが、後ろの車両は現代風のイケメン桃太郎が描かれていました。

桃太郎線沿線には、岡山の歴史には欠かすことのできない史跡が多く残されています。

時間の許す限り、途中下車をしてみましょう。


【その7】につづく

山陽本線途中下車の旅【その5】岡山まで

2020-01-27 12:57:00 | とらべる!
相生駅を定刻通りに発車した列車は、山々に抱かれた田園地帯を走っていきます。
 
 
相生〜岡山間では3つの路線が走っていて、1番海側を走っているのが赤穂線。
 
忠臣蔵で有名な赤穂四十七義士ゆかりの地である播州赤穂や、
備前焼の里として知られる伊部を通ることでも知られています。
 
 
真ん中を走るのは山陽新幹線。
山の多いエリアをトンネルで貫通させているため、
相生〜岡山間を最短の16分で結んでいます。
 
 
もっとも山側を走っているのが、今回乗車している山陽本線。
敷設されたのは明治時代に遡るため、線路は山を避けてわずかな平地を進みます。
 
相生から2つ目の上郡駅からは智頭急行線が分岐しています。
 
 
 
 
鳥取方面へのアクセス路線として1994年に開業した第三セクター鉄道で、
関西方面からのスーパーはくと号が、岡山方面からスーパーいなば号がそれぞれ乗り入れています。
 
相生〜上郡駅間の区間運転をする列車があるため上郡駅までは毎時2本、この先は特急を除けば日中は毎時1本の運転本数です。
 
上郡を発車して、次の三石駅までの間が兵庫県と岡山県の県境。
 
人家も少ない船坂峠を越えれば岡山県に入ります。
 
 
 
【その6】へ続く

山陽本線途中下車の旅【その4】相生にて

2020-01-26 20:17:00 | とらべる!

11:36 [赤穂線直通]播州赤穂行き

 
姫路駅から乗車するのは、始発の赤穂線直通の播州赤穂行き。
 
車両は223系。
ほんの数年前までは新快速の主力車両だった気がしますが、近年は後継の225系に譲っています。
 
 
 
姫路から先の山陽本線は毎時4本程度運行。

うち半分が途中の網干止まりで、残り半分が相生駅から赤穂線に乗り入れます。
山陽本線の岡山方面に直通する列車は、朝夕の一部列車だけのようです。
 
 
途中の相生駅までこの列車に乗車して、そこから山陽本線の岡山行きに乗り換えます。
駅間にして5駅、4.5kmの距離ですから20分弱で到着。
 
 
相生駅は2番ホームの到着。

となりの3番ホームには12:02発の上郡行きが停車いていて、
乗客の乗り換えが済むと同時に発車していきました。
 
 
 
 
 


上郡駅行きは見送って、次の岡山行きを待つことにします。
 
岡山方面行きの列車は当駅始発なので、待てば確実に座ることができます。
 
 
相生駅では山陽本線は毎時2本程度の運行で、
うち1本が岡山行き、残りは途中の上郡駅止まりになっています。
 
 
上郡〜岡山駅間は日中は毎時1本と山陽本線のなかでも本数がとても少ない区間。
ちょうど兵庫県と岡山県の県境に当たるため、あまり需要がないのだと思います。
 
 
相生駅は山陽新幹線との乗り換えも可能。
 
こだま号とひかり号が停車し、本数は朝夕は毎時2本、日中は毎時1本程度です。
 
 
 
 
11:26 岡山行き
 
岡山行きの車両は単色塗装の国鉄型113系。
名古屋駅からずっと平成生まれの車両に乗ってきたので、ようやく旅気分が出てきました。
 
 
車内は転換クロスシートで、窓側の席に座ります。
 
 
 
 
【その5】へ続く

山陽本線途中下車の旅【その3】新快速、西へ

2020-01-24 12:23:00 | とらべる!
米原駅 8:48[新快速]姫路行き
 

冷たい雨が降る米原駅を出発した新快速。

滋賀県から京都,大阪を突き抜けて兵庫県の姫路まで走破するロングランの列車です。
18きっぷを使って西へ向かう時はよくお世話になる区間ですし,気持ちがよいほど速いのでボーナスステージ感がります。
 
 
 
 
 
 
車窓に映るは滋賀県内の田園風景、京都府に入れば北側に迫る山々、大阪府から先はオフィスビルと住宅街を繰り返します。
 
 
新快速の車両はすべて転換クロスシートなので、車窓を眺めるのには最適。
関東平野を走る上野東京ラインと違って関西の景色は変化に富んでいて面白い気がします。
 
 
 
三ノ宮を過ぎて、次の神戸駅が東海道本線と山陽本線の起終点駅。
とは言ってもすべての列車が直通運転をしているので、意識することは少ないです。
 
あたかも同じ路線のように、駅には数十秒停車したあと定刻通りに出発。
 
こうして山陽本線途中下車の旅はぬるっと始まりました。
 
 
山陽本線最初のハイライトは播磨灘。
 
須磨~朝霧駅までの区間は左手に播磨灘を眺めることができます。
明石海峡大橋を望む舞子公園駅付近は旅情があります。
 
 
 
 
 


日本標準時子午線のある明石を過ぎれば、終点の姫路はもう少し。
車窓もまた、米原出発時に似た田園風景になってきました。
 
姫路の街が見えてくると、高架線を駆け上って姫路駅に到着。
 
 
到着時刻は11時18分。
2府2県を縦断する2時間半の長くて短い新快速の旅が終わりました。
 
姫路駅は山陽本線のターミナル駅になっていて、
大阪方面から来た新快速のほとんどはこの駅で折り返しています。
 
 
山陽新幹線へ乗り換えられるほか、
在来線の姫新線と播但線は姫路駅が起点です。
 
いつか播但線に乗って竹田城跡、生野銀山などの史跡を巡り歩いてみたいと思ってます。
 
 
 
 
 
 
姫路駅の改札を抜けて、北口広場に出ると目の前に見えるのが姫路城。
駅から一直線に街のランドマークが聳える演出が素敵です。
 
 
そして、目には見えるのに実際に歩いてみるとかなり距離があるのも印象的。
駅から歩くのならば、片道20分は見ておいたほうがいいです。
 
 
今回はあまり時間がないので、駅前から拝むだけにしておきましょう
 
エキナカで牛丼を飲み込んで、次の山陽本線下り列車に乗車します。
 
 
【その4】へつづく

山陽本線途中下車の旅【その2 】米原まで

2020-01-23 11:59:00 | とらべる!
名古屋駅には7時28分に到着。
乗り換え改札を通って、在来線のホームへ。
 
ここからは東海道線に乗って山陰本線の起点となる兵庫駅を目指します。
 
 
 
 
7時32分名古屋駅【特別快速】米原行き
 
通常の名古屋都市圏を走る東海道線は大垣行きが多く、大垣駅で米原行きに乗り換えが必要です。
この特別快速は、珍しく先の米原駅まで直通してくれる列車なんです。
 
 
名古屋駅で乗客が入れ替わるタイミングに乗じて、窓側の席を確保することができました。
終点の米原まではゆっくりと車窓を楽しむことにしましょう。
 
 
出発する頃には座席は埋まっていて、立ってる人もちらほら。
名古屋を離れるほど混雑は増して、大垣駅を発車する頃に車内はかなり混雑していました。
 
 
 
 
 


東海道線の豊橋~岐阜までの区間は、個人的に好きな区間。
新快速が走っていることはもちろん、313系のクロスシートは快適だし、
車窓に見える濃尾平野も広々としていていい。
 
 
木曽川を渡る時は特に好き。
遠くに見えるツインアーチと呼ばれる展望台が昔から気になっています。
 
一度訪れてみたいのですが…
 
 
 
空は雲ひとつない晴天で、冬らしく澄みきっています。
それが関ヶ原を越えるあたりでは雪に変わって、終点の米原に到着する頃には雨に変わりました。
 
 
 
【その3】に続く

山陽本線途中下車の旅【その1】はじまり

2020-01-22 12:57:00 | とらべる!

瀬戸内というエリアには独特の魅力があります。

 
時間の流れがゆっくりとしていて、どこか落ち着く場所が多い。
 
 
そういえば、学生時代に初めて行った一人旅も瀬戸内でした。
10年ほどの時間を経てもう1度、瀬戸内に行きたくなったのです。
 
 
社会人になるとまとまった時間が取れなくなるのは本当で、
ゆっくり出かけるとすれば8月盆の頃か、年末年始となってしまいます。
 
 
その頃はちょうど青春18きっぷの季節。
あるだけの時間を使って途中下車の旅をしよう、そう思って年明けそうそうに家を出たのです。
 
 
 
ーーーー
 
 
 


旅のはじまりは東海道新幹線の新横浜駅。
10年前はムーンライトながら号を利用したのですが、今回は新幹線を利用して名古屋まで行きます。
 
名古屋からは青春18きっぷを使って西へ向かうことにしましょう。
 
 
 
正月も明けきらない早朝に新横浜を発って、のぞみ99号は名古屋駅へと走ります。
冬の夜は長いから、日が昇って明るくなった頃にはもう静岡県に入っていました。
Uターンラッシュには被らなかったのか、車内はとても空いていて静まり返っています。
 
 
 
これからの予定を考えるために、数年ぶりに購入したいコンパス時刻表を開きます。
初日は岡山県の倉敷に宿泊することにしたので,夕方までに倉敷に着ければOK。
 
 
東海道線と山陽本線は幹線なので本数も多く、乗り遅れや乗り過ごしの心配はありません。
できれば移動中は座りたいので、乗り継ぎ駅で1本見送るのもアリです。
 
 
時刻表を眺めながら、いろいろなスケジュールが浮かんできます。
どこに寄ろう、何を見よう。
 
 
3日間の宿泊地と、小倉駅発から新横浜駅までの新幹線きっぷだけは予約済なので、
それ以外は気まぐれでどこにでも行けるようあえて事前に予定は立てませんでした。
 
 
【その2】へ続く

山陽オトナの修学旅行3 宮島路篇

2016-07-30 12:33:01 | とらべる!

前回(山陽大人の修学旅行は全10篇を予定しています。)




広島駅に着いて、ひと休みするまでもなく「オトナの修学旅行」最初の目的地である宮島へと向かう。

南口改札の目の前にあるホームから発着するのは山陽本線である。
6年前に来たころには古い車両がのそのそと走っていたのだが、到着した車両は最新式。
この春のダイヤ改正で導入されたらしい。

行先表示板の「R」という記号が謎であるが、どうやら広島駅を中心としたJRの路線に新たにラインカラーを与えたらしい。
広島から宮島口・岩国方面の山陽本線は赤色なのだという。

広島駅から宮島口駅までは3分程度で着くという。

 



いくつもの河川を渡って、車窓から遠くなる広島の街を眺める。
市街地を抜ければ、広電の宮島線が寄り添うように走る。

路面電車として市街地を走る広電も、宮島線は専用軌道を走っているから普通の鉄道のようだ。


 



しばらくすると、宮島線と並走する。
道路が線路に挟まれているのも面白い。

それらの背景に、うねうねと特徴ある山々が現れたら、それが目的地の宮島である。
宮島口駅は、思ったよりも素朴。
駅前から伸びる大通りが、宮島航路の乗船口を繋いでいる。

 



宮島行きのフェリーは2社で運行していて、向かって右手がJR宮島航路、左手が松大汽船である。
JRは昼間は往路のみ鳥居に接近することを歌い文句にしていることくらいで、料金も運行間隔も同じなので気分次第である。

今回は松大汽船で、宮島へと向かう。



 



フェリーは三層構造になっていて、一層目が自動車や二輪車、二層目が客室、三層目がデッキになっている。
どうやら船は何種類かあるようのなので、それぞれ構造が異なるのかもしれない。

15分間隔で出航しているため、乗船するとすぐに船が鈍い呻りをあげて動き出す。





客室でのんびり過ごすのもよいけれど、これから向かう宮島をデッキから眺めるのもいいものだ。
3月も中旬になると瀬戸内に吹く風も暖かい。
内海だから、波も穏やかである。

遠くに見える宮島は、観音菩薩の寝姿に例えられるように、印象的な稜線をしている。
その麓に広がるのが、厳島神社を中心とした宮島の集落である。

島の人口は港や神社のある北側1ヶ所に集中しており、そのほか島の8割を山地が占めているという。



あまり関係ないのだが、こうして近づいてくる島をぼうっと眺めていると、市川崑監督作品の『獄門島』を思い出す。
原作の横溝正史は戦中に岡山に疎開していたことから、金田一耕助の活躍するシリーズをはじめ多くの作品で岡山や瀬戸内が登場する。
獄門島も瀬戸内海に浮かぶ「周囲2里ばかりの小島」という設定で、映画では実際に真鍋島で撮影が行われた。

場所は違えど、船から眺める瀬戸内の穏やかな海と、徐々に陰影を濃くする島の全貌が、『獄門島』の記憶を呼び覚ましたのである。


そんなことを思ったり、考えたりしているうちに船は宮島桟橋に到着した。
乗船している人々は、我々と同じく観光客が多いらしく、軽い足取りで船を降りていく。


初めて宮島を訪れたのは14歳の頃。
この度、大人になって再上陸である。