Fuji Trip!

水豚先輩の週末旅日記

夜の江ノ電 江の島・腰越界隈

2015-09-29 23:13:06 | 鎌倉日和



夜の江ノ島を歩き終えたあとは、のんびりと江ノ電を眺めます。

江ノ電はゆっくりのんびり走るところが好きなのですが、観光客のいなくなった夜はもっとスローリー。
夕食時の混雑のピークを過ぎた後のレストランのように、穏やかで平和な雰囲気が漂っています。






普段は賑やかな江ノ島駅も、静けさが漂っています。

列車はこの駅ですれ違うので、基本的に15分に1本電車が来ます。







踏切内が道路の交差点と線路が分岐点になっています。






鎌倉方面行きの2番ホームには人の姿が見えません。

日中は多くの人が利用するためにベンチがいくつも並んでいますが、今日は選び放題です。







列車の到着が近くなると、ホームにちらほらと人が集まってきます。






駅の鎌倉側には留置線があって、車両が停まっています。

左手に伸びるのが本線です。

江の島駅は江ノ島電鉄の本社が隣接するためにターミナル駅となっています。




2番ホームに江ノ電古参の300形がやってきました。
抹茶色の躯体と、小さな前照灯が可愛らしいです。

藤沢駅から帰宅する人が多いのか、車内はほどほどの乗車率です。





1番ホームにはレトロな20形がやってきました。

車内はがらがらです。


今度は少し歩いて、併用軌道を眺めに行きます。





江ノ電は江ノ島駅を出ると、道路に飛び出して、腰越駅付近まで商店街の真ん中を走ります。

江ノ電が道路に出る場所は交差点になっていて、複雑。
列車が接近すると、踏切のように警報が鳴ります。







腰越駅方面から列車がやってきました。

夜間は車通りが少なく、江ノ電のひとり占め状態です。






江ノ島駅で列車の交換があるため、しばらくすると鎌倉行きの列車も通ります。






交差点には江ノ電の運転台が組み込まれたお店があります。
「江ノ電もなか」を販売する扇屋さんが、引退した車両を江ノ電から寄贈してもらったそうです。

今も、現役で走る江ノ電を見つめています。








江ノ島駅の手前で、路地へと入っていく江ノ電は見ごたえがあり。

最初に左に大きくカーブして、次は右にカーブして路地に吸い込まれていきます。


夜の江の島散歩

2015-09-28 20:29:20 | 鎌倉日和



江の島といえば、老若男女が訪れる一大観光スポット。
休日ともなれば参道は多くの観光客で溢れかえり、江戸時代にも負けず劣らずの盛況です。

そんな江の島も、夕方以降は比較的静か。
神社や土産物屋さんは閉まってしまいますから、多くの人は夕日を見るか見ないかの時間に帰ってしまいます。
そのため、見物する場所は少ないですが、ゆっくりと島内を散策するには最適です。

普段とはちょっと違ったすがたを見ることができるはず。



山頂付近や稚児ヶ淵で見る夕陽を序章にして、散策を開始します。







江の島は起伏の多い土地なので、日が沈むと山に隠れた東側の地域や、谷となっている場所ではすぐに暗くなります。

参道に並ぶ土産物屋さんも店じまいを始めて、観光客は本土へと帰っていきます。









階段の多い島内の参道には街灯が設置されているので安心です。
行き先をぼんやりと照らしてくれます。

街灯にはトライフォース・・・いや、北条氏一門の家紋である三つ鱗が黄緑色に点灯しています。


「江ノ島灯籠」の季節には街灯に加えて、道端には点々と可愛らしい灯籠が設置されています。

三つ鱗はもちろん、江ノ島の伝説に基づく、天女や五頭龍が描かれた灯篭もあります。








宵の江の島さんぽのお楽しみ。
それは黄昏時の短い間に浮かび上がる、富士山のシルエットです。

江ノ島弁天大橋や稚児ヶ淵から眺めることができます。

天気が良く、空気の澄んだ日にしか見ることができない特別な風景です。
霞んでしまったり、天気が良くても、山に雲がかかってしまったりとなかなか思い通りに見ることはできません。







もうひとつは月。
月が出ると、行く先を優しく照らしてくれるので、絶好のお散歩日和です。

江ノ島では山の月と海の月、両方見ることができるので贅沢です。
木々に隠れた月も風情がありますし、月光に照らされた海も幻想的です。


中津宮手前にあるデッキは絶好のお月見スポット。
鎌倉方面から出てきた月は、ヨットハーバーを明るく照らしています。


このように、自然条件によって印象も変化するので何度訪れても楽しむことができます。










参道商店街の末端であり、江島神社の入口にあたる瑞心門付近から散策を始めます。

まっすぐ行くと、江島神社の辺津宮、左に行くと江ノ島エスカー乗り場と頂上(灯台)方面への階段、右は頂上を通過せずに奥津宮や稚児ヶ淵方面へと向かう下道です。
この辻には交番もあります。

今回は、辺津宮には行かずに左に折れて階段を登ります。
ここからいよいよ山道です。







階段を少し登った場所から、児玉神社への参道が伸びています。
この参道が実に不可思議で、境内を半周した後に本殿へと辿り着きます。

長い参道の先には神社しかないので、日が暮れると通る人は誰もいません。
もちろん、社務所にもすでに閉まっているため、静かです。

この神社は軍人・児玉源太郎を祀った神社になっています。







児玉神社の参道入り口まで戻って、もう一度階段を登ります。
階段の途中で、左斜め後ろの方向へと伸びる道があるので、そちらに行ってみます。


参道を逸れて、生活感のある路地です。
階段を登りきると、視界が開けてヨットハーバー方面が俯瞰できます。
ここから階段を下っていくと、住宅地へと入っていくようです。



江ノ島は大きく分けると、江島神社の境内を中心とする山間地域、商店街や島民の住宅地からなる生活地域、戦後埋め立て増設された地域の3つにわかれています。
今から進む先は、旧来の住宅街が立ち並ぶ生活地域と、戦後埋め立てられた地域です。

国土地理院HPの「地図・航空写真閲覧サービス」などで、昔の江ノ島の姿をみることができます。




階段を下っていくにしたがって、家々から夕飯の匂いが漂ってきます。
島の人だからか、焼き魚のような匂いもします。


住宅地を抜けると、左手にどこにでもありそうな広い公園がありますが、ここは聖天島公園と言って埋め立てされる前は島だったようです。
公園内には島の上部が残されているそうですが、少し柄の悪い人たちが公園内に集っていたので見学は断念。

埋め立て部分を東の果てまで歩きます。









東端には県営駐車場が完備されています。
駐車場の中を通り過ぎて、桟橋へと上がります。

300mはあるかと思われる桟橋はベンチと「健康散歩道」と銘打った足つぼが完備されています。

目の前は海ですが、夜なので何も見えません。


さざなみを聴きながら、足つぼとは少し不思議ですが、人も少ないので休憩するには最適です。


先端には可愛らしい湘南港灯台が建っていて、その周辺では夜釣りをしている人も多いです。
燈台の下に腰を下ろして、釣り人を眺めるのもなかなか。








桟橋を降りて、先程の住宅地を歩きます。
普通自動車は通ることが難しそうな住宅街が、微妙なカーブを描いて続いています。

商店や、民宿もあるので比較的明るいですが、歩いている人は少なく、もっぱら出会うのは猫たちです。








家と家の隙間からひょっこりと現れては何処へと消えていく猫。
江ノ島は猫のたくさんいる島としても有名で、結構猫目当てで訪れる観光客もいるそうです。

以前にねこが急速に減っているとの噂が流れていましたが、元気そうで何よりです。







餌をあげている家や、飼い猫もいるようで、たばこの自動販売機の前は彼らの溜まり場となっていました。

人馴れしている猫もおり、興味津々で近寄ってきます。
興味無さ気に寝ているねこもいます。

気まぐれです。








江の島をちいさく一周したあとは、江ノ電の江ノ島駅へと歩きます。
弁天橋を渡って、小田急の竜宮城の駅舎を横目に徒歩15分。

相変わらず、月が明るいです。







江ノ島駅は夜間はライトアップ。
日中の喧騒はどこへやら、と言った感じで、ホームに人はいません。

目の前を通り過ぎて行く2両編成の短い列車も、空気ばかり運んでいるようです。
普段とのギャップに少し寂しくなったりもします。


江ノ電 (増補版)

2015-09-28 00:02:04 | 駅と鉄路

 




江ノ電の愛称で知られる江ノ島電鉄は、鎌倉-藤沢駅間の約10kmを34分かけて結びます。

現在でも江の島鎌倉観光には欠かす事ができない江ノ電は、1902年に藤沢-片瀬間で開業。
その後順に延伸し、1910年には全線が開業しました。

停車駅は鎌倉から和田塚-由比ヶ浜-長谷-極楽寺-稲村ケ崎-七里ヶ浜-鎌倉高校前-腰越-江ノ島-湘南海岸公園-鵠沼-柳小路-石上-藤沢の15駅です。
運行するのはわずかな距離ですが、江ノ電は交通機関の域を超えて鎌倉観光のひとつともなっています。



江ノ電の人気の一つは、まず沿線の景観です。
短い距離の中、車窓からの景色が目まぐるしく変わります。

鎌倉から長谷駅までは住宅地の間をすり抜け、
御霊神社の目の前を通り過ぎると江ノ電唯一のトンネル・極楽洞を通過します。

稲村ケ崎駅を出てから腰越駅までの一部の区間は湘南海岸に沿って走るため、車窓には相模湾が広がります。
再び住宅地に入ったかと思うと、腰越駅から江の島駅までの区間は首都圏では珍しい併用軌道を走行します。

鵠沼駅付近では境川を渡り、石上駅を出ると高架区間に変わって駅ビル2階に位置する終点・藤沢駅に到着します。

遮断機のない踏切、無人駅など情緒あふれる沿線ならではの景色と、
目の前が湘南海岸という絶好のロケーションの鎌倉高校前駅や、車両一両分ドアが開かない腰越駅など個性あふれる停車駅が魅力的です。


全線にわたり単線のため、列車交換を行うことのできる駅は長谷・稲村ケ崎・江ノ島・鵠沼の4駅と七里ヶ浜-鎌倉高校前間にある峰ヶ原信号場に限られています。




もうひとつの魅力は沿線観光。

言わずと知れた、鎌倉の鶴岡八幡宮と小町通り。
遠足といえば長谷寺の長谷観音、高徳院大仏。

腰越状で有名な万福寺、江の島駅は江ノ島水族館や江の島の最寄駅です。
アジサイの時期には成就院や御霊神社、紅葉の時期には源氏山や鎌倉宮に足を延ばしてみるのもいいかもしれません。

車両もバリエーション豊富で床が板張りの旧式車両から、観光ガイドのモニター付きの新型車両まで揃っています。
最古参の車両でレトロ気分を味わうもよし、クロスシートを備えた車両は友達との旅行時に最適です。

シンボルカラーの深緑色の車両は鎌倉の街並みとも相性が抜群。
渋いけどおしゃれで、江ノ電サブレもお土産に売っていたりします。



季節や車両によっても乗る度に異なる楽しさを見つけることができる路線が江ノ電なのです。




■沿線風景
(撮影時期が異なるため、作風に一貫性がありませんがご了承ください。
 また、初期の写真の一部にはOLYMPUSアートフィルターを利用しています。)





江ノ電ビルの二階に組み込まれている藤沢駅。
2面1線の構内は休日ともなると観光客で混雑します。

休日の日中は4両編成が基本ですが、平日は2両編成の場合もあります。

停車しているのは江ノ電最古参の300形。
車内の床が木目になっているレトロな車両です。






藤沢駅を出ると、しばらくは高架区間を走ります。
この区間は比較的新しく、昔は地上を走っていたようです。




運転室後ろの座席は特等席。
目まぐるしく変化する車窓をじっくり堪能できます。

特に2000形(写真で右手に見える車両)は進行方向に向いた座席配置になっており、窓も大きく、当たったらラッキー。






江ノ電の主要駅である江ノ島は列車交換のできる大きな駅です。
夜間はライトアップも行われています。





江の島駅を出ると、併用軌道区間に入ります。
いきなり道路に踊りだしたかと思うと、480mもの間、道路の真ん中を堂々と走行します。






ホームの短い腰越駅を過ぎると、路地裏のような狭隘な道をくねくねと進みます。
今にも民家の塀や樹木にぶつかりそうです。






民家を抜けると、次は海岸線を走ります。
ここから稲村ケ崎駅手前までの間、断続的に海が見える区間です。





鎌倉高校前駅は、ホームが海に面したロケーションが人気の無人駅。
休日には観光客も訪れますが、平日は朝夕は登下校する学生たちで賑わう駅です。





背後には断崖迫る海岸線の平地を江ノ電と県道が並走します。
鎌倉高校前、七里ヶ浜、稲村ケ崎の3駅は海岸にも近く、途中下車もおすすめです。






七里ヶ浜駅は少し路地を入った場所のため、一旦海岸から離れます。

道路と線路が道を半分ずつ使用した江ノ電らしい風景。
柵がないのが地元に密着した江ノ電ならではの景観だと思います。






稲村ケ崎駅も列車交換ができる駅です。
駅周辺には昔懐かしの商店や八百屋さんなどが立ち並び、生活感があります。
徒歩3分ほどで稲村ケ崎公園へ行くことができます。






稲村ケ崎から極楽寺駅までの間はひたすら内陸へと進んで、山間部に入ります。
谷戸と呼ばれる地形で、左右を切り立った崖に挟まれた場所に、極楽寺駅があります。

小さな駅ですが、関東の駅百選に認定された昔ながらの木造駅舎が魅力です。


付近には江ノ電の極楽寺検車場もあります。







極楽寺駅から先は鎌倉七口のひとつ、極楽寺坂の切通しのある区間です。
江ノ電は唯一のトンネル、極楽洞を通過して鎌倉入りします。

このトンネル工事が敷設当時最も困難であった事業といわれています。


 



極楽洞を出ると御霊神社の参道を通り抜けます。
御霊神社はアジサイと江ノ電が撮影できる場所ということもあり、梅雨の季節には多くのカメラマンが陣取っています。




御霊神社の参道を横切る江ノ電。
絵になる風景のひとつです。






長谷駅までは配り勾配、和田塚駅までは上り勾配を進みます。
民家には狭れた狭い場所を走行するので、あまり人目には付きません。





自動車の走行する道路には踏切がありますが、路地や玄関先には踏切がないため、線路を横断する地元の方も多いです。
江ノ電もゆっくりと走行します。





江ノ電は4両編成の場合、連結部分の車窓を眺めるのもおすすめです。
流れていく景色と、窓に幾度も反射する景色が不思議です。






和田塚駅は線路を渡って入店する甘味処の最寄駅として知られています。
付近には和田一族を埋葬したとされる和田塚があります。

駅から路線はカーブを描いて、鎌倉駅へと到着します。




終点・鎌倉駅は2面2線を有するターミナル駅。
車輪止めには陶器の蛙が鎮座しており、可愛らしいです。

駅中にはコンビニや土産店が併設されていて、電車待ちの時間に利用できます。
JR鎌倉駅へは直通改札があるので乗換えに便利です。
 


鎌倉・湘南海岸 その2

2015-09-27 22:26:24 | 鎌倉日和


鎌倉と湘南の海がもっとも美しい時間。
それは夕暮れ時ではないかと思っています。

日が西に傾き始めると、空の色がじんわりと暖色へと移ろいでいくと同時に、水面がきらきらと輝きます。

日が暮れるまでの時間、刻々と色を変えていく空が切なく、また愛おしいのです。




鎌倉の材木座から、由比ヶ浜、稲村ケ崎、七里ヶ浜、小動岬、江ノ島、片瀬海岸と6kmほどの海岸線。
そこから眺める景色は甲乙つけがたいものです。

ゆっくり海岸線を歩きながら自分のお気に入りの場所を見つけるのもいいかもしれません。

(今回の撮影地は江の島弁天橋・稲村ケ崎・材木座の3ヶ所です)




稲村ケ崎です。

波の穏やかな日は、海面が太陽に照らされて光り輝きます。
夕方になると、サーファーの人も少なくなって、少し寂しげな雰囲気です。

海岸には砂浜に座ってぼーっと海を眺める人や、カメラを構える女性の姿もあります。






さらさらと押し寄せては引いていく波の音だけが聴こえます。

日に照らされて黄金色になった波と泡は発泡酒のようでもあります。






はるか沖合に目を移すと、遠くに浮かぶ伊豆大島。

それ以外は何もありません。







江の島周辺では釣り人の姿を見かけます。

右手に見えるのは江の島にある湘南港灯台。
桟橋の先端に建つ小さくてかわいらしい灯台です。

その背景には伊豆半島が横たわっています。






江の島に渡る弁天橋からは天気が良ければ富士山が姿を現します。
よく訪れる私でも、富士山が見えると嬉しいものです。

漁船が沖へ向かって出発していきました。








ところかわって材木座。
街に近いこともあって、散歩をしている老人も見かけます。

鎌倉を流れてきた滑川の下流付近では、水面に空が映し出されて印象派の絵画のよう。
撮影した画像を見ても、本物の空のようです。







雲の多い日も、味があります。

材木座は海岸がほぼ西側を向いているために、太陽が目の前を沈んでいきます。







漂うヨットと馴れた足で海岸を散策する老人。

生業としてではなく、プライベートとしての海の関わり。







ヨットの方は絵に描いてくれと言わんばかりにいい位置で漂っています。

海上からの眺めも気になってしまいます。







もういちど、稲村ケ崎にやってきました。
江ノ電の駅から歩いていくと、空を背景にした信号機があります。

信号はいつも背後に続く道を背負っていますが、ここの信号の後ろには海と空しかありません。







夕日が今、沈もうとしています。
ちょうどよく雲も途切れて、背後を走る江ノ電や自動車をオレンジ色に染め上げています。

すでに海岸に人の姿はなく、海岸に降りる階段付近に数人の旅人たちが座っています。







湘南では太陽は伊豆半島へ沈んでいきます。

江の島の展望灯台、シーキャンドルから眺める夕日もまた美しいです。






夕日が沈んでも、しばらくのあいだ暖かい余韻を残していきます。

海が蒼く、冷たい色に変わってしまう前に帰るとしましょう。



鎌倉・湘南海岸 その1

2015-09-27 02:54:35 | 鎌倉日和


湘南の海は入るには少々濁っていますが、眺めるのには最高の海だと思っています。
新宿から小田急線で1時間ほど揺られれば着いて、ぼんやりと眺めることができる。
ここまで手ごろな海はないのではないでしょうか。



私の思う、湘南のいいところその一。
東京湾のように工場やタンカーなど産業を彷彿とさせる景色が皆無であること。

三浦半島が海洋に突き出している影響で、東京湾に出入りする大型船やタンカーははるか沿岸を通っているために見えないのです。
海に浮かんでいるものといえば、ヨットか小さな漁船くらいなもの。
とてものどかな風景です。


その二。
江ノ島や富士山、烏帽子岩といったアイコンがあること。

全く何もない自然風景というのも、拠り所がなくて飽きてしまうというもの。
湘南の海には浮世絵にも描かれた江の島の不可思議なシルエットをはじめとして、目を引くものがいくつかあります。

順光であったり、逆光であったりと季節や時間によって見え方が変わり、周囲の海と合った、ここだけの風景が見られることも重要です。


その三。
訪れるたび、空の色や雲のかたちが異なることを気付かせるほどに視野が広い。

先述したように江ノ島や、適度に突出した崎はあるものの、基本的に見えるのは海と空。
いつ来ても波の荒さとか空の色とか、以前と異なる景色に出会うことができます。

日常ではなかなか気づくことのできない自然界の色や音に敏感になることができます。



そんなこんなで、私の好きな、湘南の海の紹介をします。






海と江ノ島と富士山がセットで望むことができるのは稲村ケ崎。
突き出た崎の西側は公園として整備されており、ゆったりとした時間の中で海を眺めることができます。

ただし、トンビが多いのでお弁当を広げるのには向いていません。

富士山はなかなか都合よく現れてはくれませんが、空気の澄んだ冬場の朝夕にはよく見えます。





晴天の日は月もみえたりします。







街灯にはいつも鳥がとまっています。
日によってトンビだったりカモメだったり鳩だったり・・・






波の強い日はまるで北斎の絵画のよう。
激しい音を立てて押し寄せてきます。

基本的に海岸の砂浜には降りることができるのですが、危険で降りられない日もあります。







江ノ島のある西側に目を奪われがちですが、東には葉山の街が見えます。
三浦半島が奥の方まで続いています。




小さな川が海へと注いでいます。
砂浜を流れる川の水はとても澄んでいます。




じわじわと日が傾いてくると、砂浜の彫が深くなってちょっぴり荒野のようでかっこよい。
空の色が、なんとも言えない不思議な色へと変化していきます。

 

 その2へつづく


原鉄道模型博物館 いちばんテツモパークジオラマ

2015-09-26 18:03:16 | 神奈川

 




みなとみらい線新高島平駅からすぐの三井ビルディング内にある原鉄道模型博物館。

この博物館は原信太郎(1919-2014)が製作・収集した鉄道模型のコレクションを公開しており、鉄道模型専門の博物館です。
自身が再現した多くの模型は国内の鉄道にとどまらず、ヨーロッパやアメリカなど世界を渡り歩いて記録・製作していました。

館内の見どころは、一番ゲージと呼ばれる規格の巨大ジオラマ、「いちばんテツモパーク」。
全体で再現されているのは日本ではなく、欧州の街と郊外の景観。
それもそのはず、走行している模型は海外の車両が多いのです。

時計台のあるターミナル駅を中心として、一周しているコースには隧道や鉄橋も存在しており、角度によって様々な景観が楽しめます。
NゲージやHOゲージと比べて、規格がおおきい分、リアルな造形が見どころとなっています。
また、実際に架線が張り巡らされており、模型車両はそこから電気を供給するという徹底ぶり。
思わず見入ってしまいます。

通常走行する模型とは別に、指定の時間のみ走行する模型もあるようです。

開館当初は写真撮影は禁止でしたが、現在は可能ということなどので楽しみも増えますね。





ジオラマ中央に位置する駅舎はパリのリオン駅に似ています。
駅のホームは背後に、手前にも高架線が走っています。



中央の駅のそばには路面電車の始発駅があります。
このジオラマは人物もしっかりと表現されていて、車両を走らせるだけにとどまらず街全体の再現を行っています。
マニアでなくとも楽しめそうです。



向かって右手には鉄橋が架かっています。
軌道にも曲線が用いられて、ジオラマならではの複雑な景観を作り出しています。


 



定期的に車両が通過します。
薄暗いこともあり、近景はなかなか写真では撮りづらくもあります。





向かって左側は中央駅から郊外へと移行しています。
鉄道だけではなく、道路や自動車なども見どころです。
 



鉄橋との立体交差です。
信号機や踏切も列車の走行と連鎖しています。





緑の多い、郊外の風景です。
奥に転車台もあります。



左側のカーブの先は隧道になっています。
高架橋の作業場に保線の人がいるのを発見しました。






一番手前を走る線路にも別の駅舎とホームがあります。

留置線にはいくつかの車両が停車中。
手前側は日本の車両っぽいですね。



扇形車庫にはたくさんの蒸気機関車。
若干遠いので、4倍ズームではこれが限界。





貨物駅でしょうか。
作業風景が再現されています。
その目の前を旅客車両が通過していきます。







個人的に好きな場所は赤色の鉄橋付近。
人工物のごたごた感と、弧を描いて走行する車両が絵になります。

 



照明が一定のサイクルで朝、夕、夜に切り替わります。
夜は街中の建物の明かりがついて幻想的です。

車両も室内照明が点灯します。

 


原鉄道模型博物館

2015-09-25 02:00:53 | 神奈川




横浜にはオシャレなミュージアムが多いのですが、2012年に開館した原鉄道模型博物館も大人も愉しめる素敵な博物館です。

みなとみらい線開業以降、開発が進められている新高島平駅からすぐの場所に建つ横浜三井ビルディング。
原鉄道模型博物館はその2階にあります。

この博物館は原信太郎(1919-2014)が製作・収集した鉄道模型のコレクションを公開しており、鉄道模型専門の博物館なのです。
自身が再現した多くの模型は国内の鉄道にとどまらず、ヨーロッパやアメリカなど世界を渡り歩いて記録・製作していました。

第一展示室から始まる前半部はディスプレイされた鉄道模型を展示、後半部はこの博物館自慢の「いちばんテツモパーク」を中心としたジオラマ展示といった構成になっています。

 


第一展示室は「原模型の神髄」。
原信太郎が製作した鉄道模型の代表作7点が展示されています。
このコーナーは、よほどの鉄道車両か模型マニアでなければ車両の名前を聞いてもさっぱりな展示です。
ただ、ディスプレイと照明が綺麗なのでじっと眺めていると、緻密だなあと感心してしまいます。


 



中にはオリエント急行や、2015年にJR九州が運行を開始したSWEET TRAIN「或る列車」の基になった車両の展示もあります。
或る列車は1906年に九州鉄道がアメリカに発注した豪華客車で、その後に九州鉄道は国有化されて活躍のないまま眠りに就いた幻の車両。
原氏は九州にて眠りについていた豪華客車の詳細なスケッチを残しており、鉄道模型も作っていたのでした。

 



第二展示室は「語る模型」。
この展示室では膨大な数の所有模型がずらりと並んでいます。

鉄道模型にもさまざまなサイズが存在するらしく、私たちがよく目にするNゲージよりはるかに巨大なも模型が中心です。
中には抱きかかえるほどのサイズもあります。

所蔵品の核を成すのは国外の鉄道車両。
この博物館、しいては原信太郎のコレクションの特色をここで理解することができます。

国内の鉄道が好きで訪れた方は少し戸惑うかもしれません。









第三展示室は「ヴァンテージ・コレクション」。
氏は幾度も海外を旅して鉄道模型や資料の収集を行ってきました。
この展示室では旅にまつわる貴重なきっぷやコレクションが展示されています。

レトロな懸垂電車模型も可愛らしいです。



 




パサージュはお洒落な鉄道模型屋さんといった感じの展示。
ここではHOゲージと呼ばれる規格の模型を扱っています。

国際的にはこのHOゲージが主流だそうですが、鉄道模型にも多くの規格があるようです。



 




細長いパサージュを抜けると、いよいよ博物館の目玉であるいちばんテツモパーク。
こちらは一番ゲージと呼ばれる規格の模型で作られた巨大ジオラマです。
一番ゲージでは世界最大級のジオラマだそうです。

他の鉄道博物館と同じく、照明によって昼夜を表現したり時間限定の車両を走らせたりしているようです。

詳しくはこちら↓
http://blog.goo.ne.jp/fujizero3/e/3efc818269c85ace18ff9aa5c2414122

 




一番ゲージの特徴は、日本で普及しているNゲージに比べて大きい規格であること。
そのため、車両や建造物の再現度が高いということが利点です。

このジオラマではヨーロッパの町並みが再現されていて異国調なところもオシャレです。

ベンチも用意されているので、空いているときはいつまでも眺めていられます。






最後は横浜ジオラマ。
いちばんテツモパークに比べると小規模ですが、京浜東北線など、馴染の車両が走行しています。

神奈川県庁や横浜税関の建築も再現されています。



原鉄道模型博物館。
鉄道好きの聖地というよりかは、模型趣味や懐古主義な人にお勧めできるオトナの隠れ家的空間です。
展示が日本の現代の鉄道とは距離を置いていて、海外であったり前世紀の見たこともないような車両。
中心となるいちばんテツモパークジオラマは特に、現実とは切り離された異国世界が忠実に作り上げられており、鉄道や模型に興味がなくとも引き込まれてしまう空間になっています。


ナイトズーに行ってみた。

2015-09-25 00:40:53 | 発見!不思議な世界


この夏は上野動物園をはじめ、東京動物園協会の管理する3つの施設で夏休みのお盆休みを中心に閉園時間延長を行っていた。
ナイトズーなどと題して、夏には毎年のように行っている施設も多いが、どうにも忙しい時期であるし、予定が被ってしまって行けずじまいであった。

そんなこんなであったが、東京動物園協会は今年の広報活動に力を入れていたようで、施設それぞれのチラシを観光情報館などで配布していた。
デザインもさることながら、「真夏の夜の動物園」とか「夜の不思議の水族園」などという好奇心を煽る文句に心掴まれて、是非行こうと意気込んでいた。


ちなみに東京動物園協会は上野動物園・葛西臨海水族園・井の頭自然文化園・多摩動物公園の4施設を管理している。
そのなかで、井の頭自然文化園を除いた3施設でこの夏は夜間開園が行われていた。

多くの施設はお盆休みにあたる8月13日から16日付近が開催期間であったが、多摩動物公園は8月中の土日はすべて夜8時まで開園しているとのこと。

お盆休みを逃してしまった私たちは、8月最後の土曜日に多摩動物園に滑り込んだのである。








京王線・高幡不動駅から動物園線に乗って4分ほど。
多摩動物公園駅の目の前が、動物公園の入り口である。

広々としたアプローチの先には象をあしらった巨大なゲートが聳えている。

この巨大なコンクリートの象には既視感を覚えたのだが、幼い頃に両親に連れられてきた記憶残っているのだろう。
どうにも幼い頃に見たものというのは、大人になってから再会すると、思いのほか小さく感じることがある。
小学校の校舎とかもそうだ。

しかし、この象は今見ても大きい。

入園料は日中と変わらず大人600円。









多摩動物園といえば、動物だけではなく昆虫館があることでも有名である。
昆虫生態館では植物園のような温室の中で蝶や蛾が飛び回る姿が見学できるのだが、この施設は夜間は閉館してしまっていた。

そのかわり、隣に建っている昆虫園本館は開いていた。
二階に上がると、国内外の昆虫の生態展示。
大きな展示ケースの中の、小さな飼育ケース内で飼われている昆虫たちは狭そうであるが、それぞれ好きなように暮らしている。

大陸の巨大昆虫を見てしまうと、日本のカブトムシやクワガタムシが可愛らしく見えてくる。
超巨大なゴキブリだかダンゴムシだかの仲間もいるから、女性を連れていくには注意した方がよさそうだ。
時すでに遅かったが。


一階のグローワーム展示室は圧巻。
ホタルなどを含む発光昆虫をグローワームと総称するらしいが、ここの展示室にいるのはハエの仲間らしい。
二重扉を開けた先には、真っ暗闇の世界。
闇の奥に目を凝らすと、現れる無数の青白い光。
この光はヒカリキノコバエが餌となる虫を捕食するために出しているという。
当然、日本にいる虫ではなく、オーストラリアなど南半球に生息しているらしい。

ホタルやヤコウタケのように闇夜に光る生物はなんとも幻想的だ。
それが蠅であっても。









建物内で昆虫を見ていても、夜の動物園に来た意味は無いことに気づいた私たちはいよいよ起伏ある園内へ。
小高い丘には猿山がある。

餌を食う奴に毛づくろいする奴ら、たそがれている奴など見ていて飽きない。
岩場やロープを日が暮れてもなお闊歩する猿たちは結構視力が良いのであろう。








夏の終わりは夜がやって来るのが一段と速く感じる。
動物園はそもそも夜は閉まっている場所であるから、夜歩くための街灯などは無いに等しい。
枝分かれする園路には申し訳程度にライトが取り付けられているが、それでも闇の方がはるかに強い。

動物園特有の賑やかさは無いけれども、園内にいる子供たちも熱中して動物を探している。
動物を見るのに一生懸命になる動物園はなかなかない。

目を凝らすと、カワウソやヤギや、モモンガなど様々な動物が夜でも元気よく過ごしている。
大型の動物は宿舎に入ってしまっているものが多いが、楽屋でのアーティストを覗いているみたいな感じがあって楽しい。

蛍光灯に照らされたサイの身体の陰影が個人的には印象的であった。







時折現れる、巨大な建造物。
夜は余計なものが見えなくなるから、より印象的に視界に入ってくる。

アジアゾウのコーナーは長崎ちゃんぽんのお店にあるような赤色トンガリお屋根である。
アジアゾウはこの動物園の中でも比較的大きな動物だと思われるが、ゾウが小さく見えてしまうほどの規模。

象はどこだと探すと、すみっこの薄暗いところで夕食を食べていたのだった。






静かに腰を下ろしているのはニホンカモシカ。
草の上で眠そうにしている。本日の営業は終了、と言った雰囲気だ。


最奥のオラウータンコーナーまで到達してから折り返し。
飼育舎からオラウータンの森まで、スカイウォークと呼ばれる架線のようなものが伸びていて、昼間は上空を移動するオラウータンを見ることができるらしい。





多摩動物公園の目玉といえば、今も昔もコアラのようだが、コアラ館までは距離もあるために諦めることにする。
道端に建っていたダミーで我慢。





最後にライオンを中心とするアフリカ園に行くために、近道。
メインストリートはそれなりに人がいるものの、脇道にそれると人が一気に少なくなる。

フライングゲージには鷲のシルエットが。
先程のダミーコアラのようにまったく動かない。

一方でフクロウは元気に活動中である。
元気に飛んだり首を動かしているから、逆に写真を撮影することはできなかった。

昼間のフクロウは眠っていて動かないから貴重な活動シーン。
うとうと眠っているのもそれはそれで可愛らしいのだけれど。





小高い峠を抜けるとアフリカ園に到着。
広い盆地に動物図鑑でお馴染みのキリンやゾウやライオンが飼育されているから、この動物園のハイライトでもある。
確か昼間はライオンバス(有料)が運行されていて、間近で猛獣が見れるということで人気。

チンパンジーの遊具は立派で、何かのオブジェのよう。

 



キリンは普通に野外で休んでいる。
日中ずっと立っていたら疲れるもんな。

それにしてもキリンも結構無防備に座るんだなぁ。
互いに背中合わせで座っているのはこれも用心?

 




飼育舎の中にもキリンの姿が。
本日のお仕事を終えたキリンのプライベート的空間を覗いている感じがいい。

キリンも窓から外の世界を見てどう思うのだろう。

 



アフリカ園を歩いていると、突如に現れる異国調の寺院建築に驚く。
ちょいと昔の遊園地に来ているかのような気分にさせてくれる。
よみうりランドの聖地公園みたいな。

どうやらこの建物付近にライオンバスの乗り場があるらしい。
バスもリニューアルされたようなので乗ってみたいものだ。






気付けば、閉園間近。
ライオンたちの生活スペースの上に架かるアフリカ橋からライオンを眺めていると、思い出したかのようにむくっと立ち上がって歩いていく。
寝床に帰るらしい。

橋の反対側から見える大きな飼育舎からはガラガラと扉を開ける音やライオンたちの吠える声が聞こえてくる。

なんだか、不思議と動物たちに「お仕事ご苦労様です」という気持ちになる。
別に動物が動物を演じているわけでも、営業しているわけではないのだけれど。

 

 

夜の動物園。
思ったよりも不思議な空間である。

賑やかで、明るい昼の動物園とはうってかわって静かで少しだけ寂しい。
動物たちも、今まで見たことのないような姿を見せたりするのでなんだかすべてが新鮮である。

園内は丘陵地帯になっているので、散策にもちょうどいい。
それにしても散策にも楽な気温になってきた。

涼しい風に吹かれて、いよいよ夏の終わりを感じるのだった。


薩埵峠を行く その3

2015-09-18 21:50:14 | とりっぷ!




民家の軒先には袋詰めのみかんが売られている。
よく農地にあったりするセルフ販売のようなものだ。

たわわに実った大きなみかんが8つほど入って、100円とはお安い。
100円を奉納して、棚から袋のみかんをいただく。

早速だが、食べてみると思いのほか甘い。
みかんは当たり外れが激しいからスーパーでも買うのを躊躇してしまう。
みずみずしいいから、峠越えのおやつにちょうどいい。

あまりにも美味しいものだから、もう一袋くらい買っておけばよかったと思ったりもするのであった。









道の傾斜がきつくなるのと同時に、家々は姿を消して山道になる。
気付けば周囲はみかん畑。

ちょうど時季であるから、橙色の実がたくさん生っている。
静岡は温暖な気候なので、江戸時代頃から栽培が行われ始めたという。

そういえば実家が静岡県にある友人の部屋にはみかん箱が積まれていた気がする。
浜名湖付近の三ヶ日みかんは有名である。


静かな畑道でみかん栽培をしていると思われるおばあさんに遭遇。
便利に整備された自動車道を通るのとは違って、地形や地域の差がじっくりと鑑賞できていい。








畑には収穫したみかんを運搬する農業用モノレールが張り巡らされている。

このみかん畑は海岸に面した斜面に立地しているので、便利そうである。
収穫期にはたくさんのみかんを載せた無人の台車が走っているのであろう。

レールが緩いカーブを描いて急斜面の先に消えていく姿を見ていると、ジェットコースターのようで乗ってみたくなるというもの。

みかんになりたい。







先程から進行方向左の畑の木々の合間から海がちらちらと見えていたが、いよいよ道路が崖へと踊り出る。
気付けば、だいぶ登って来ていたようで、みごとに伊豆半島まで望むことができる。

ガードレールが道路の曲折地点にしか用意されてない感じがいい感じ。







ひょいと下を覗いてみると、海岸線を走る東名高速道路が見える。
車が停まっている場所は上りの由比SAであろう。

ちなみ下りの由比SAは海を眺めるデッキも完備されているのでおすすめ。








振り向けば富士山の雄姿。
薩埵峠を由比宿から蒲原宿方向へ歩くと、富士山をずっと背にして歩かなければいけない。

まあ、見たいときに振り返ればいいんじゃない?
とかなんとか思いながら、いよいよ頂上付近へやって来た。

ここまで高度を上げても、まだミカンの木が茂っている。







峠の最も眺望の良い場所は「さった峠展望台」となっていて、木製の展望台がある。
ここまでくれば、三脚を持った本気のカメラマンもいるし、驚いたことに立派な駐車場もある。

先程まで、車一台しか通ることができないような道を歩いてきたので、何故か狐につままれたような感覚である。
他のルートでもあるのだろう。

もちろん駐車場にはお手洗いもあるので安心。


東海道のハイライトと名高い、薩埵峠。
霊峰・駿河富士と伸びゆく雲、穏やかな駿河湾を見渡すことのできるパノラマは江戸時代と変わらないようである。


それにしても、
ここからの景観を見ながら、陸地の交通はこの百幾年かで変わったなあと、実感する。

今、私が立っている所は山中を歩き、越えていく古からの峠道。
眼下に見える交通機関は陸地側から東海道本線、国道1号線。
そして、隧道で台地を突き抜け、橋脚で海岸へと踊りだす東名高速道路。

自然に寄り添う形から、自然をも無視したコンクリートハイウェイ。
時代は確かに便利になった。

東海道中、それぞれの道が異なる進み方をして東京から京都を結んでいるわけだが、ここまで凝縮された空間は珍しい。
まるで交通の見本市のようでもある。

ちなみに東海道新幹線はもっと内陸部を隧道で通過している。






歌川広重の『東海道五十三次』の「由比」には薩埵嶺とあって、ここからの景色を描いている。
時代が移り、当時と似ても似つかぬ画も多い中、じつにそっくりである。

画中には景観に見とれるふたりの旅人と、、薪を背負ってせっせと歩く里人が描かれている。
観光客と地元民、この対比と温度差を的確に示す絵画があるということは、江戸時代には旅や観光がどれだけ社会に浸透していたかがわかる。

今に当てはめれば、画中の旅人は我々であり、里人はきっとみかん農家の人であろう。








展望台をあとにして、歩いていて気持ちの良いハイキングコースをしばらく行くと、峠の下り坂が始まる。
登りは自動車が通ることのできる舗装された道であったが、こちらは歩行者専用の登山道。

途中、崖に迫り出した舗装階段もあるものの、途中からは木々の生い茂る薄暗い場所。
峠越えらしい、風情のある道だ。

木々を抜けると、由比方面とはうって変わってビニールハウスや墓地のある田舎風景。
歴史ある道は終わりを告げて、生活風景に紛れ込むことになる。

興津駅までは2.5km。
興津川を渡った先で、国道1号線と合流。
車通りの多い国道は海が近いと言えど、排気ガス臭い。

歩いていて楽しい場所ではないので、適当に脇道にそれよう。





途中で偶然、「女体の森」なる場所を発見。
宗像神社の別称らしいが、名前の魔力に呼び寄せられてついつい境内に行くと、なんてことのない普通の神社である。

境内の説明版によると、
昔、境内の森が駿河湾の漁師の目印となっており、「女体の森」と呼ばれていたという。
森が女体に見えたのか、それとも豊饒とかそういう意味で神聖視されていた場所だったのか。

宗像神社という神社は女性神を祀る神社であるから、女性との関係があった場所であることは確かなようだ。

それにしても、神社の目の前が小学校。
小学生高学年くらいになると、「女体の森」という言葉に反応してしまいそうである。

 

 

女体の森から興津駅までの路地は昔ながらの隘路で、昔ながらの家屋と水路がいい味を出している。
興津の駅自体も、小ぢんまりとした駅。

列車に乗れば海沿いを走って3分で両駅を結んでいるところ、徒歩で峠を越えた場合は2時間ほど。
乗り物に乗ってしまっては見ることのできない、古より残された風景を訪ねる今回の薩埵峠越え。

近代以前の、埋もれてしまった旅の愉しみに出会える場所であった。



 


三井大橋 & 三井そよかぜ橋

2015-09-11 23:10:59 | 神奈川



相模原市緑区の津久井といえば津久井湖を有する山間の町。
もともとは中世から山城である津久井城が存在し、古くからこの地には人が暮らしていました。

相模川の水量調節と水力発電を主な目的として1965年に城山ダムが完成し、津久井湖ができました。
これに伴い、いくつかの集落が湖の底に水没することになりました。
現在は人の暮らしと自然が調和した景観を見せていますが、この湖はもともと人の造り上げた二次的な自然と言えます。

近代以降、産業や生活用水を確保するためにこのような湖が多く建設されています。
市内だけでも相模湖(1947年)や宮ケ瀬湖(2000年)がそのひとつです。

その一方で、都心部からそう遠くないダム湖は、モータリゼーションが進んだ昭和30年代ごろから行楽地として知られるようになり多くの人が訪れました。
相模湖にはピクニックランド(現:プレジャーフォレスト)が出来、津久井湖もボートや釣りなど気軽に自然を楽しめる場所として県内および多摩地域からの多くの観光客で賑わったと言います。

特に津久井湖は、湖畔を周遊する県道513号があり、ドライブやツーリング客が多かったとか。
その県道の一部として、また湖に隔てられた集落との連絡を図るために建設されたのが三井大橋と呼ばれる鉄橋です。

県道513号の起点は緑区の橋本方面から、城山・津久井・相模湖の町を結ぶ県道413号「太井」交差点。
そこから下り坂を左に大きくカーブすると三井大橋が忽然と姿を現します。

朱色に塗られた鉄橋は周囲の自然と体色を成しており、印象的。
片側一車線の狭い橋であり、2012年に隣に歩行者専用の吊り橋、三井そよかぜ橋が作られたようです。

橋を渡ると県道は、この橋の名前となっている三井集落へと続き、その先は湖を周回して城山の集落までを結んでいます。
三井の集落まではバスも走っているようですが、それほど大きい町でもなく、周囲に駐車場もないため、立派なつり橋も誰が利用するのかなと不思議ではあります。

また、三井大橋は心霊スポットとしても知られていますが真意は不明。
宮ケ瀬湖の虹の大橋をはじめ、湖に架かる橋には色々といわくがあります。

どうやら自殺者が多いとか、県道でのバイク事故が多いとかそのような事実が心霊スポットとしてのイメージをつくっている要因のようにも思えます。

三井大橋周辺は人家もないため、夜に訪れた際は少し怖かったものですが、そよかぜ橋が完成してからは街灯も取り付けられて以前より明るくなりました。







シンプルで細身の三井大橋は女性的な美しさがあります。




三井大橋と並行して架けられています。
歩行者用だからか、照明は明るめです。




晴天時に訪れれば、満天の星空を眺めることができます。