本屋さんへ行った。
目当ての本がどうしても見つからず、
店員さんに声を掛けてみる。
眼鏡をかけた、化粧っけのない店員さん。
探している本を告げると、
とても丁寧な言葉で受け答えして、探してくれた。
自店に在庫が無いことがわかると、
系列店の在庫を確認し、手配してくれた。
無駄の無い、それでいて温かみのある接客。
たった一冊の本なのに、
とても丁寧に仕事をしてくれた彼女に、
忘れかけていたものを教えてもらった気がした。
早速、取り置きしてくれているお店へ行ってみる。
そこにいたのは、眼鏡をかけたちょっと気弱そうな男の子。
でも。
取り置きの本とは別に、もう1冊、ハードブックをカウンターに出したところ、
ブックカバーをつけるかどうか聞かれたので、お願いしてみた。
眼鏡の彼は、けっして器用な手つきではなかったが、
一生懸命、丁寧にカバーを掛けてくれた。
また、無くしかけている大事なことを教えてもらった気がした。
おまけに、どちらの店員さんも笑顔が素敵だった。
気持ちよく買い物ができるってことも、
当たり前じゃなくて、すごい幸せなことなんだと改めて思った。
時々、お金払っている時点で、
やっぱ、買うの止めます。って言いたくなるような時もあるけれど、
だから尚更に、今日が幸せに感じられて嬉しかった。
家に帰ってから、カバーの掛けられた本を取り出してみると、
余計な折線がついていて、お世辞にも上手とはいえない。
しかし、彼の一生懸命な姿が思い出されて、
カバーを見ながら頬が弛んだ。