マイムリンク活動15周年を記念して特別コラムを2回にわたってお届けします。今回は、前編です。
「マイムリンクに訪れた4つの奇跡」
マイムリンク事務局の佐々木です。今年は、マイムリンクの記念すべき15周年ということで、15年の歩みを少し振り返ってみたいと思います。
マイムリンクは、2007年に誕生しました。立ち上げたのは、現マイムリンク代表の細川紘未です。そもそもは、細川はTOKYOマイムカレッジ(以下、TMC)というパントマイムスクールを主催しており、その生徒のための試演会(発表会)が半年に1回程度ありました。当時、TMCのレッスンで利用していた高田馬場のスタジオがクローズしてしまったため、別会場を探し、そこで、5日間の使用で割引があるということで、2つの公演を組み合わせて開催しようということになった。
そこで、外部のアーティストを呼んで別の公演とセットでやれば良いという発想で、「パントマイムウィーク IN 荻窪」(2007年2月28~3月4日)という公演を企画しました。その当時は、まだマイムリンクという名称は使っていません。
外部からは、新空間主宰の山田とうしさんがご出演して、細川紘未と2人の公演(それぞれのソロ公演)、そして、TMC生徒の発表会という2つのプログラムでした。会場は、今はありませんが、荻窪のメガバックスシアターという小さな劇場でした。その時は、別に団体を作るとかは、まったく考えていなかったと思います。特段、新空間とTMCの間に何か交流があったわけでもなく、かなり偶然的な要素が強かったのではないでしょうか。TMCの呼びかけに快諾して出演頂いた、とうしさんには、今でもマイムリンクの色々な機会にご出演いただいています。
そして、次が2007年10月に、パワーアップした形の公演をやることになりました。今度は「パントマイムウィークin荻窪Ⅱ」というタイトルです(主催はパントマイムウィーク実行委員会)。今度も企画のリーダーは、細川紘未です。
細川の師であった並木孝雄氏が所有スタジオ(気球座スタジオ)で、たくさんのパフォーマーを集めて「パントマイムギャラリー」というパントマイム連続公演をシリーズ化して開催しており、同様の公演を細川が企画したいという思いがあったとのこと。外部のアーティストを多く呼んでフェス的な公演にしようということになりました。その時、チカパンさんがかなり運営側の中心に入っていただいて、色々な方に出演の声をおかけいただいた記憶が残っています。
出演者は、あがりえ弘虫さん、細川紘未さん、チカパンさん、しいなまんさん、ズッカーマン明子さん、毒マイムさん【邪道マイム(後藤敬一郎)・下道マイム(北大輔)】、間瀬貴典さん、林裕美さんという方々です(TMC生を除く)。その中で、特にあがりえさんは、その後のマイムリンクの公演で、中核に入って出演者としても、また運営面でも、両方で超人的な活躍をしていただきました。
こうした外部アーティストとの出会いが、奇跡だったと思います。当時は、今ほどアーティスト同士の交流はなく、アーティストが協力しあって自主公演するというスタイルがとても独創的でした。その中で生まれる交流がとても楽しく、懐かしい思い出です。
第2回の「パントマイムウィークin荻窪」の大成功によって、マイムリンクの形の原型が出来上がったと思います。その後、パントマイム公演とミニレクチャーを毎月開催する「さくっとパントマイム(さくパン)」が2008年から、高田馬場のBABACHOPシアターでスタート。実は「さくパン」と「パントマイムウィーク」は、当時は別のグループで活動していたのですが、2010年頃からマイムリンクととして一つの団体で活動を行うことになりました。
活動の中で、問題となったのが会場問題。荻窪メガバックスシアターは、パントマイムの劇場としては少し小さく、設備もあまり整っているとは言えずという状況でした。そこで、スタッフの松田充博さんから、銀座のMAKOTOシアターをご紹介いただきました。これが2つめの奇跡です。本格的な劇場空間に拠点を移したことで、ステージ空間としても変わったと思います。MAKOTOで初のフェス開催となった2008年5月28日から6月16日に開催した「パントマイムウィーク3 銀座9Ave」には、オープニングも含めて10の公演に、若手から大ベテランまで27人のパフォーマーが出演。
本当に今思うと夢のような舞台だったと思います。そのあたりから、僕はスタッフとして関わっていましたが、色々なアーティストさんとの交流が非常に楽しく、銀座(劇場は京橋近辺)に通う日々が忘れられません。
2008~2009年は、マイムリンクの活動初期の開花期と言っても良いかもしれません。08年11月には、「第1回さくパンフェス」、09年3月には、松田充博演出・作の「スクラプ’s」、2009年6~7月に「パントマイムウィーク4 MIME MODE」、同年10月に「スクラプ’s 2.0」、同年11~12月に「さくパンフェス2009」を上演したほか、毎月のように「さくパン」を開催しました。やっぱり、MAKOTOシアターという自分の劇場のように自由に使える場所を得たことが大きかったのではないでしょうか。
(続く)
ささきれいめい