今回は、6月のシアターパントマイムフェスに出演する韓国人の女性パントマイミスト、イ・サンさんの日記をお届けします。実はイ・サンご自身がすばらしい日本語でご執筆下さいました。
韓国で演劇俳優、マイミストとして活動しているイ‧サンと申します。
15年前には、性暴力相談所で働いていました。会社員演劇同好会に通ったり、小さな劇団を作って演劇を公演したりもしました。職場を辞めて、ある日、観客の話を聞いて即興で公演するプレイバックシアター劇団に入団しました。その後いろんなバイトをしながら演劇をやることになりました。今は15年前に勤めていた相談所で、またバイトで電話相談をしています。
プレイバックシアターは日常的な空間で行うことが多いです。市場や島や村、町の公園で観客に出会いました。観客の人生の一部を演技すると、その人がもっと身近に感じられました。楽しい出会いも沢山ありました。
しかし、5年が経つと、即興的に演技するよりは自分の考えが込められた作品を作りたいという風に感じました。その時、劇団の友達がパントマイムを紹介してくれました。パントマイムを始めたのは2013年です。それまでは1、2回公演を見たのがすべてでした。一人で物を持ったり、置いたりして手の形を暗記したり、日常的な行動を真似したりして練習をしました。無言で表現するのが好きで始めたのですが、その時はただ何も話さなくていいとだけ思っていました。動きだけで見る人に五感と感情を感じさせる、というマイムの魅力をよく分かっていなかったようです。けれども、よく分からないながらも楽しかったのです。
2016年に初めてスタジオエヴァへ訪問することになりました。パントマイムも習えて、公演もできるスタジオがあるのかと、とてもうれしかったです。練習場が劇場になり、みんなで力を合わせて公演を上演することが不思議でした。この原稿が掲載される「アーティストリレー日記」を読んだ時、初めてスタジオエヴァに訪問した時のようにどきどきしました。翻訳機を使って読むのですべて理解するのは難しいですが、文章から個人生活の雰囲気、マイム活動をすることの幸せを感じます。
東京のマイミストたちに出会えたことは私にとって大きな幸運でした。ソウルでも東京でも、本当に素晴らしい公演を何度も観ました。登場人物を見ながら笑ったり悲しんだりして、"そうだ、人生にはこのような瞬間があるんだ"と感じました。俳優自身と俳優のエネルギーが、舞台を通して人生の美しい瞬間を見せてくれます。
マイムをする人たちに会うのはとても楽しいです。同じ国で生まれ同じ言葉を学んでも、性格や環境によって言葉の印象が異なります。マイムもその人の個性によって同じ場面でも、違うニュアンスを伝えることができるということを感じます。正確な意図で動けば動くほど、マイミストの個性が光るのが素敵だと思っています。こつこつと練習して、私だけのマイムを見つけたいです。
マイムが大好きな人たちと一緒に、マイムの世界をもっと知りたいと思っています。小さい頃から今まで言葉を習ってきましたが、いまだに考えをきちんと言葉で表現することは難しいです。ですから、始めてから10年も経っていないマイムはもっとたくさん練習をしなければならないと思っています。皆さんと一緒に楽しくできて、とても嬉しいです。
現在、人がたくさん集まるとコロナ感染の危険があるという理由で公演がほとんどできていません。ですから、1つの舞台がもっと大切なものになりました。大切な話を共有したいという思いを、マイムで広げたいです。全ての人達の心と体が健康であるように願っています。平凡な日常の瞬間に、劇場や練習場で、元気な姿でまたお会いできることを期待しております。
イ・サン