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再びパラサイト  段差のある構造

2020-02-15 | ほんとうのところは

映画の賞に興味を覚えて鑑賞するわけではないが、観に行く機会を持つことにして、と言って、パラサイトをまた書くのは、お叱りをうけそうなことだ、どうしても半地下生活と結びつかないような思いで、半地下という建築構造を持つ建物は、中国にもあるし、それは地下ではない、また別に大学校内で半地下を持つ構造はいくらでもある、というのは、そこが、予備室だからで、また、映画を見ていてヨーロッパでもアメリカでも地下入り口のように、段差をもうけて、それこそ倉庫風に特異な空間を作り出しているのがあるではないか。それで、韓国の半地下生活のことをブログに書いている記事を紹介して、半地下生活は必要に迫れた住居としてある様子を知ることになる。長文の記事をそのまま引用をして、入居条件のことと生活をつづる。


韓国に住む私がパラサイトに目を覆ってしまった理由
2020年2月15日 6時0分 JBpress
>本記事は映画『パラサイト 半地下の家族』のあらすじに関する記述が含まれます。映画を未見の方はご注意ください。
(平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)
 平常心では何とも見ていられない映画だった。
 カンヌとアカデミーで2冠を達成し、今話題沸騰の韓国映画『パラサイト』である。半地下の部屋に住む家族が金持ちの一家にたかるようにしてその豪邸に忍び込み、最後に殺し合いになるという話だ。その金持ち家族のその後は描かれてはいないが、豪邸が売りに出されていたのだから、恐らく家庭崩壊したのだろう。
 でも、そんなことは、ここでは全く重要ではない。私は映画評論家ではないから映画の出来の良し悪しをどうこう言うほどの知識も眼もないし、そのつもりもない。
 ただ、この映画は私が見るにはあまりにも辛い映画だったのだ。
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リアルすぎる半地下生活
 映画には、リアルなところとファンタジーなところがある。その比率によってそれぞれ楽しめたり楽しめなかったりする。
 私がこの『パラサイト』を見ていられなかったのは、リアルなところが私の記憶を見事に刺激しすぎたためなのだ。ここではそのことを話したい。
 この映画のリアルなところは、一部の人たちにとってきわめてリアルである。映画のリアルさというのは、大衆文化の特性上、ある程度は緩和されて描き出されている。それを映画の中の出来事として素直に受け入れられれば面白く、珍しく見えるのだろうが、韓国の半地下生活の厳しさをある程度(つまり中途半端に)知っているものであれば、平常心ではいられなくなる。
 半地下生活が私にとってリアリティを持つのには、いくつかの理由がある。まず、私の知り合いにも1人、半地下生活を送っている人がいるからだ。
 彼が半地下生活を送るには、厳しい成り行きがあった。会社を潰し、離婚を経験し、子どもが暴力沙汰で警察の世話になる。これだけ書けば十分だろう。15年も韓国に住んでいれば、当初はそうではなかったとしても、そのような暮らしになってしまう知り合いもいるものだ。
 2つ目は、私も一歩間違えば半地下生活を送っていたかもしれないからだ。
 韓国で家を借りるには、巨額の頭金が必要だ。私が今住んでいる家でも、毎月支払う家賃とは別に、500万円ほどの頭金を預けている。それは家を引き払うときに戻ってくるから差し引きゼロなのだが、入居時にかき集めるのは大変だ。
 韓国人はその頭金を準備するのに、たいていの場合は夫婦で銀行から借りる。だが、私のような外国人は、つい数年前まではそれができなかった。
 お金を工面できなければ、頭金や家賃が飛び切り安い半地下生活が待っている。
 あるとき、転居先を探そうと不動産屋を周っていたとき、「お得な物件があります」というので、下見に行ったことがある。歩いて向かっている途中、家内が「たぶん、半地下よ」と言っていたのだが、ずばり当たっていた。韓国人にはそれとわかるものだったらしい(家内は韓国人である)。部屋に入ってみると、映画に出てくるように、歩いている人の足が窓から丸見えだった。
 その半地下の家に私の家族が住むことはなかった。結局、私の家族は何年も、一人暮らし向けのような狭い家に暮らすことになった。
 というのは、私には半地下の生活を受け入れがたいつらい記憶があったからだ。それは、映画でも描かれる大雨である。それが、この映画を見ていられない3番目の理由である。
 恐らく10年ほど前だろうか、私は半地下の部屋がある集合住宅の3階に住んでいた。半地下には高齢の女性が1人で住んでいた。ある夏の日、ソウルを大雨が襲った。すると、長時間にわたる集中豪雨で下水道が逆流したのだ。半地下のその女性の部屋にあっという間に浸水し、私は部屋から水をかき出したり、ポンプで排水できるようになってから家具を外に出してあげたりした。
 映画でも下水道が逆流する様子が描かれている。トイレから黒い液体がシュッと吹き出るのを、便器の蓋を占めてその上に乗って抑えるという場面だ。でも、実際はそんなお上品ではない。きっと排泄物も混ざっているに違いない茶色の液体が、化粧室からダムの放水のように流れ出るのだ。私はトイレのドアを閉めて、流れ込んでこようとする汚水を堰止めた。私はサンダルを履いて家具を運んでいたのだが、漏電防止のためブレーカーを落として電気を消しているのと、汚水に被われているために、床など見えるはずはない。家具を持ち上げて踏ん張ったとき、ガリッと足で何かを踏みつけた。その感触からしてグラスか何かのガラス製品だろう。一歩間違えば、大けがだった。
『パラサイト』という映画は、そういった場面を、ずいぶん見やすく描いていると思った。その一方で、半地下生活の映像を見ながら、私が見聞きしている実際の半地下生活の姿が脳裏でフラッシュバックされ続けていたのだ。私は映画を見ている間、何度か思わず目をつぶってしまった。
とてつもない格差がある韓国社会
 日本のあるテレビ番組は『パラサイト』の2冠達成を受けて、実際にソウルで半地下生活をする若者に取材していた。その若者はインタビューで、「僕は寄生はしないですけど」と話していた。
 もちろん、多くの半地下生活者は映画のようには振る舞わない。だが、半地下生活をする人たちは、とてつもない格差の底辺で、地面にはいつくばって暮らしている。金持ちの家から半地下の家へ向かうには、長い階段を下っていかねばならない。そうした韓国社会の姿を縮図としてエンターテインメントに仕上げたのが、『パラサイト』という作品である。
筆者:平井 敏晴


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