日本語の特徴を挙げて言語系統論に挙げるウラル・アルタイ語説は仮説にとどまった。それが、証明されることがないという結果であったのは、比較言語学からすれば、言語間の音韻対応の明証が明らかにされなかった、確実なものとはいえないということであった。特徴とするいくつかの項目が、打ち消し文による共通性を挙げてのことで、否定されるものには共有はないというわけである。言語系統論派比較言語の手法であるから、日本語に比較するものを挙げればそれは記録として7世紀また8世紀をさかのぼるものがない。とりわけ音韻の法則を見出すには資料がないということになるので、日本語の言語形成にかかわる大陸、朝鮮半島経由をまずとらえることであった。しかし、言ってみると山越えだけでなく、海渡りにも民族移入の可能性があったわけであるから、北方、南方と、そして固有する民族語と、その系統論の議論が行われることになる。音声の言語として見るためには、文字の言語としての歴史経緯で、音韻に子音と母音で単純な構成が民族の言語としてつくられたのだから、その時間の経過をみれば、日本語に祖語を求めることと、その後の親縁語を設定することが言語の捉え方になると考えるべきである。
親縁は、近いお付き合いのことを言う。
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説
親族関係[言語]
しんぞくかんけい[げんご]
relationship
もと同一の言語であったものが,継続的に伝承されていくうちに分岐して2つ以上の異なった言語になった場合,それらの言語は「親族関係」にある (を有する) という。「親縁関係」「同系関係」ともいう。そのもとの一つの言語を「祖語」といい,それの後継諸言語は「同系語」または「姉妹語」などという。ただし,これらの親族用語はあくまで比喩であって,人間の関係とは異なるものである。同系諸言語は祖語そのものが伝承されていくうちに形を変えた,いわば一つ言語である。
1.北方説(アルタイ語族説) - 日本語系統論と内的再構
koto8.net/kisogakusyu/kiso_data/keitouron_sougou.pdf
本語系統論は、ヨーロッパ言語学の影響下で、日本語は(ウラル)アルタイ系の言語であろうという. 考え方が支配的であった。 .... ことの他には、いくつかの同系を感じさせる単語を並べてみせるというもので、金沢が挙げた実例は. 150個に過ぎず、例えば、日本 ...
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藤岡勝二(言語学者。1872 年~ 1935 年(明治 5 年~昭和 10 年)。ドイツに留学、帰国後東京帝国
大学助教授、教授となる)は「日本語の位置」という講演の中で、ウラル・アルタイ語族の諸言語の
特徴として次の十四条をあげ、日本語はこの語族との親族関係を仮定すべきであることを説いた。
(1)子音が語頭に二つくることをきらう。
(2)語頭に r 音がたたない。
(3)母音調和。
(4)冠詞がない。
(5)文法的性がない。
(6)動詞の変化が膠着法による。
(7)動詞につく接尾辞・語尾がかなり多い。
(8)代名詞の変化が印欧語と異なる。日本語ではテニヲハの接尾によって変化する。
(9)一前置詞の代わりに後置詞が用いられる。
(10)「持つ」の代わりに「……に……が有る」の形が用いられる。
(11)形容詞の比較は奪格を示すテニヲハ(日本語では「ヨリ」)が用いられる。
(12)疑問文では文末に疑問詞(日本語では「カ」)が用いられる。
(13)接続詞があまり用いられない。
(14)語の順序において、修飾語は被修飾語の前に立ち、目的語が動詞の前に立つ。
ウラル・アルタイ語族の言語の特徴については、すでに 1838 年(天保 9 年)にエストニアのウィ
ーデマン(Wiedeman)が14項目を指摘しており、藤岡の指摘した項目のうち(1)(2)(8)以
外はウィーデマンのものである。