原告にあるか、被告にあるか、その証拠証明は立証によってきまる。たとえば、ハラスメントがあったとする訴えは、その事実を持ち出すが、それが証明されなければ、あったか、なかったか、わからないとなれば、それはなかったことが前提となる。挙証責任を問われることで、結果、その事実の有無を証明できない、証明しないとなれば、なかったものと判断が出される。そこで、論理的にみると、証明できないにもかかわらず、事実であるように、あったかのように並べ立てると、それに対して訴えられた側は、反証を実行するために、そのなかった事実を裏付けるかのような対応をすることになる。そうでなければ、証明力のない事実を認めてしまうことになりかねないからである。そのような弁論を行う手法は、きわめて、トリックが多いことになり、ときによってはトラップを仕掛けて、訴えをして、そこに現れる弁護の方法となるから、それは見極めていかなければならない。
百科事典マイペディアの解説
挙証責任【きょしょうせきにん】
裁判の基礎となる事実の存否についてすべての証拠資料によっても決めかねる場合でも,裁判所は裁判をしなければならない。そこで,いかなる事実は当事者のいずれが立証すべきかを定めておき,その立証ができないときは,その者に不利益に裁判をすることにしている。この当事者が立証すべき事実について証明できないときに負わされる不利益を挙証責任(または立証責任)といい,いずれの当事者が不利益を負うかの定めを挙証責任の分配という。刑事訴訟では,犯罪事実の挙証責任はほとんどすべて検察官が負担する。他方,民事訴訟では,証明責任という語が用いられ,分配が問題となる。
日本大百科全書(ニッポニカ)の解説
挙証責任
きょしょうせきにん
刑事訴訟では検察官が、民事訴訟では原告が原則として挙証責任を負う。
小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
世界大百科事典内の挙証責任の言及
【証拠】より
…間接証拠によって証明された事実(いわゆる間接事実)は,要証事実を推認する根拠となる。(3)証拠調べが終了したにもかかわらず,要証事実の存否が確定されない場合に,不利益な認定を受ける当事者の地位を指して,挙証責任というが,民事訴訟では,挙証責任を負う者が提出する証拠を本証といい,その相手方が提出する証拠を反証という。刑事訴訟では,挙証責任は原則としてすべて検察官が負うのであり,そこでは反証とは,本証に対するものとしてではなく,むしろ,挙証責任の有無とは無関係に相手方の証拠の証明力を争うために提出する証拠を指す。…
【証明責任】より
…裁判の前提となる事実について,証拠調べが行われたが,その事実があったかなかったかがわからない場合(真偽不明という)に,裁判を拒否することはできないので,これを可能にするためのルール,およびそのことによって当事者がうける敗訴の危険・不利益を証明責任という。従来は,この危険を避けるための当事者の立証活動に着目して,挙証責任または立証責任という言葉が使用されていたが,現在では真偽不明という結果に着目した証明責任という言葉が多く使われている。たとえばAがBに金を貸したが返さないのでこれを支払えとBを訴えた場合,金を貸したかどうか明らかでない場合は,この事実がなかったように取り扱われAは敗訴となる。…
※「挙証責任」について言及している用語解説の一部を掲載しています。