マイケル、アルバム22年ぶり1位(サンケイスポーツ) - goo ニュース
マイケル・ジャクソンが一気にスターダムに駆け上がっていった頃、自分は高校から予備校、大学へと進んでいった。
面映い言い方をすれば、多感な青春時代に彼の曲に触れる機会を得ていたということになる。
いわゆる「80年代ポップス」が全盛だった頃である。
当時、ダリル・ホール&ジョン・オーツのファンだった自分は、毎週末に「ベスト・ヒットUSA」を見るのが楽しみだった。
そのランキングの常連だったマイケル。
しかし自分の中で改めてマイケル・ジャクソンの存在を意識するようになったのは、「ビリー・ジーン」が最初だったか。
続いて、「今夜はビート・イット」(邦題はそんなだったと記憶しているが…)のビデオ・クリップで、映画「ウェスト・サイド・ストーリー」風な作りが面白かったが、はっきり言ってそれだけのことだった。
また、この「ベスト・ヒットUSA」で、日本初公開として紹介された「スリラー」のビデオクリップを見たときは強烈な衝撃を受け、その面白さに興奮したもの。
ジョン・ランディス製作指揮の、14分にも渡るそのビデオ・クリップの豪華さに感動を覚えたのは確かだったのだが、それでも「ただそれだけのこと」でしかなかった。
天邪鬼な自分の性格も影響して、全世界で1億500万枚売れたというアルバム「スリラー」でさえ、当時のレンタル・レコード屋で借りることもなかったのだ。
音楽を目指していた当時のツレ連中が、「産業ロック」と揶揄し、見下していたデュラン・デュランのアルバムでさえ借りたというのに。
自分の中ではそんな程度の“扱い”だったマイケルが死んだときは、さすがに驚き、不遇だった晩年に同情を禁じえなかった。
しかし、彼が計画していたコンサートのリハーサル映像をまとめたものが映画になると知ったときは、商業主義の腐臭を感じて興醒めしていた。
今回、シネマコミュニケーターとして、やはりあれだけのアーティストである彼の、最後の姿というものを大きなスクリーンで観ておくに如くは無しとの思いもあり、仕事を終えた週末の娯楽として、シネコンのレイトショーに足を運んだ。
が…!
すごい!
業界風に言えば「ゴイスー!」だが(いまどき言うのか!?)、とにかくスゴイとしか言い様がないくらい凄い!
(これだけ書けば、どれだけ凄いかご理解いただけるか!?)
人並みはずれたダンス。
彼の象徴でもあるムーンウォークは言うに及ばず、身のこなしのキレはとても人間業とは思えない。
これまでビデオ・クリップで数分間のダンスしか見たことがなかったが、今回映画で長時間見たが、今さらながらホンマに凄い。
中盤のギタリスト達との共演も見応え十分!
マイケルの曲があんなにギターのフレーズが効いていると思っていなかったとは、認識不足も甚だしいというもの。
そして、これまた改めて知ったマイケルの“思想”。
本当に心の底から地球を愛し、環境破壊にあれだけ心を痛めていたとは知らなかった。
「We Are The World」に名だたるミュージシャンが集まったのも、マイケルの真摯な思いに皆が心打たれたところ大だったということか。
当時は、イギリスの「Do They Know It's Christmas?」の二番煎じか!?くらいにしか思わなかったのだが、これもまた認識不足だったと言わざるをえまい…
彼は純粋に歌を愛し、また心から人々を喜ばせたいと願い、そのためのエンターテインメントを追求していたのだろう。
ステージで大やけどを負って以来、鎮痛剤が手放せなくなり、常に痛みと闘っていたという話であるが、マイケルが感じていた痛みは、自身の体に生じていた物理的なものだけでなく、彼のピュアな心を知らずに浴びせられる、「ゴシップ」という名の無数の矢が心に突き刺さる痛みもあったのではないだろうか。
心の痛みから逃れるべく、自らの“王国”たる「ネバー・ランド」の奥深くへと、その身を隠し続けていたのかと思うと、いたたまれない。
身も心もズタズタになりながら、それでも痛めつけられる地球を黙って見ていることができず、また多くの人々を楽しませるために、最後の力を振り絞るようにしてパフォーマンスを復活させたものの、志半ばで逝ってしまったマイケル・ジャクソン。
本人はさぞや無念であったろうが、本作を観れば、あのエンターテインメントを見ることができなかった我々も実に痛恨の極み。
せめてこの映画で、彼が残そうとしたパフォーマンスの一部に触れることができるのは救いでった。
ぶっちゃけた話が、自分はマイケル・ジャクソンというアーティストをみくびっていた。
改めて彼が「キング・オブ・ポップ」と呼ばれた意味が理解できた。
そして、マイケル・ジャクソンの「スリラー」が世界中を席捲したその時を過ごしたことが誇らしく思える。
80'sのポップスに親しんだ世代は楽しめること請け合い。
単なるコンサートのメイキングではない、マイケルの“エッセンス”が凝縮された逸品。
「
マイケル・ジャクソン This is IT」
2009年/アメリカ 監督 : ケニー・オルテガ
出演:マイケル・ジャクソン