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3回目の利上げ
1月14日、韓国銀行(中央銀行)が0.25ポイントの追加の利上げを実施した。 それによって、政策金利は1.00%から1.25%となった。
今回の利上げは、2021年8月以来3回目だ。
追加利上げの背景には、韓国でもインフレ圧力が高まって居ることに加えて、ウォン安に歯止めがかからないことがある。
利上げを行うことで、ウォン安にブレーキをかける思惑があったとみられる。
韓国銀行は、消費者物価指数の上昇率が3%を上回る状況が続くと予想し、追加利上げを急がざるを得なかったのだろう。
ウォンが米ドルに対して軟調に推移していることは、韓国銀行に強い危機感を与えたとみられる。
韓国銀行はウォン防衛のため、追加利上げを実施しなければならない状況に追い込まれていたということだろう。
今後、懸念されるのは韓国の家計債務への打撃だ。
米国では超低金利と潤沢な流動性供給による緩和的な金融政策が正常化され、利上げとバランスシート縮小による流動性吸収が進む可能性が高い。
その状況下で韓国銀行が追加の利上げを実施すれば、国債流通利回り(金利)は上昇し、多額の借り入れを抱える家計の債務問題が深刻化する恐れがある。
ウォン安に危機感強める韓国銀行
政策金利の引き上げの背景にはいくつかの要因がある。
韓国銀行が警戒を強めているのは、外国為替市場でのウォン安の進行だ。
ウォン安が進行すると、韓国の輸入物価はさらに上昇する。
それはインフレを高進させ、韓国の交易条件を悪化させる要因になる。
2021年6月以降、主要国の通貨に対して米ドルが堅調に推移し、ウォンの為替レートは下落した。
10月に入ると、1ドル=1200ウォン台にまでドル高・ウォン安が進行した。
当時、韓国銀行は、「ウォンの為替レートは経済の基礎的な条件を反映していない」と危機感を表明し、為替介入を実施する構えを示した。
しかし、その後もウォンは米ドルに対して軟調に推移した。
1月に入ると、再びウォンの対米ドル為替レートは1ドル=1200ウォン台にまで下落した。
その背景には、米連邦準備制度理事会(FRB)が早期の利上げと、6月、あるいは7月にバランスシートの縮小を開始する可能性が高まったことがある。
それが米金利を上昇させている。その結果、世界的に高い期待成長期待に支えられて上昇したIT先端銘柄が売られた。
過去、米国の利上げ局面では、ドル資金の調達に不安がある韓国からは投資資金が流出したケースが多い。
金利上昇を警戒した海外投資家は、サムスン電子など主要な韓国企業の株を売り、昨年秋口以降は韓国総合株価指数(KOSPI)が軟調に推移した。
韓国から投資資金が流出し、ウォンが下落した。
その結果、韓国の輸入物価の上昇が勢いづいた。 韓国銀行はFRBに先んじて追加利上げを実施し米韓の金利差拡大を抑え、ウォン安に歯止めをかけなければならないと危機感を強めているようだ。
悪化懸念高まる韓国家計の資金繰り
今後、懸念されるのは追加利上げが韓国の家計に与える打撃だ。
韓国では、所得の減少と不動産価格の上昇で借り入れに頼らざるを得ない家計が増え、家計の債務残高はGDP比100%を超えた。
韓国銀行が追加利上げを続けると、韓国の金利は上昇し家計の資金繰りはひっ迫し始めるだろう。
そのリスクは韓国銀行も認識しているはずだ。
ただ、物価の安定と金融システムの健全性の維持を使命とする中央銀行にとって、自国通貨の下落リスクが高まることは避けなければならない。
韓国銀行が追加利上げをためらう姿勢を示せば、ウォン売り圧力は急速に高まる恐れがある。
韓国銀行としては家計の債務リスク上昇への対応は政府に任せ、中央銀行のマンデート(使命)を果たさなければならなくなっている。
これからの問題は、韓国政府が、追加利上げによる家計への負の影響にどう対応するか不透明なことだ。
3月9日に投開票が予定されている大統領選挙が近づく中、与野党候補は格差の是正などに取り組むと訴えている。
その一方、今までのところ家計債務問題をどう解決するか具体策は示されていない。
それだけ、韓国政府にとって家計債務問題は難しくなっているということだろう。
今後、韓国経済の減速懸念は高まることが予想される。
世界的な物価上昇圧力の高まり、中国経済の減速傾向の鮮明化、金利上昇による韓国の不動産価格や株価下落リスクの上昇、新型コロナウイルス新規感染者の再増加などマイナス要因は山積する。
そうした状況下、追加利上げが実施されると、家計の資金繰りは悪化し、若年層を中心に雇用・所得環境の悪化懸念が高まるなど韓国経済の先行き不安は一段と高まるだろう。
これからの経済運営は一段と難しくなる。
真壁 昭夫(法政大学大学院教授)