🌸年を取る心得🌸
年というのは、みんな取らなければならないものです。
だから、
「年をとったから杖をつかないと歩けなくなった」
と考えるのではなく、
「杖をついて歩いた方が安全な身体になった」
と考えてくださいね。
それから、
「私はおむつをしている。情けない」
とお考えにならないで、
「オムツをするほど長生きした」
と考えてほしいんです。
若い人もそうです。
「ついに、うちの婆さんもオムツをするようになったか。年は取りたくないなぁ」
と考えるんじゃなくて、
「うちの婆さんはオムツをするほど長生きしてくれた」
と思いましょう。
人は、「年を取ってから老いる」のではなく、
「生まれた瞬間から老いる」という宿命を背負って生きています。
生まれた時から「老い」は皆さんの後からついてきます。
あるときは忍び足で、あるときは早足で。
「若い、若い」と思っているうちに「老い」はすぐ後まで迫ってきていることがあります。
そして、ある日突然、後ろから肩を軽くトントンと叩いてこういうんです。
「おい!」と(笑)。
突然、「老い」から肩を叩かれた人はショックを受けます。
これを「老いるショック」といいます(笑)。
だから、時々後ろ振り向きながら、「老い」に向かって、
「はよ来い、何をぐずぐずしている」
と言えるくらい、年を取ることを積極的に受け入れてください。
「80歳になったらこうしたい」
「90歳になってもやることがある」
と、いつも将来に夢を抱いて生きていると、
「老い」が追いつけなくなる。
後ろの方から「老い」が、
「おいおい、待ってくれ」
と言って必死で追いかけてくるようになる。
そういう人は、いつまでも若々しいです。
年寄りに言っておきますが、
介護が必要になったとき、
息子夫婦から「私たちが看ます」と言ってもらえるような年寄りにならないといけません。
娘に向かって
「あんたの世話にはならん」
と言った、おばばがいましたが、
これは、おばばが間違っています。
年をとったら素直が一番です。
「すまんね」「ありがとう」
が素直に言える年寄りになってくださいね。
嫁が先に変わるんじゃない。
年寄りが先に変わるんです。
それだけ年を重ね、経験を積んできた人だから、人間はできているはずです。
何のための皺(シワ)か。
いろんな苦労を乗り越えてきたシワでしょ。
年を取って家事ができなくなっても、
「すまんね」「ありがとう」
と言える年寄りになれば、家の中が変わります。
「おばあちゃん、いつも元気ですね」
と言われて、
「元気で悪いか」
とそんなこと言っちゃだめですよ。
「はい、おかげさまで」
と言って下さいね。
私は病院でたくさんの年寄りを診てきましたけど、
病気を治すことなんて、できないと思っています。
治ったと思ったら、別の病気で亡くなっていますからね。
どうせ死ぬのなら治さなければよかったと思うようなこともありました。
医者はインフルエンザを治しながら、点滴をしながら、
何を治さなければならないのかというと、
患者の心です。
風邪は放っといても治るけど、
歪んだ心は、放っといても治りません。
私は患者に、
「おかげさまを口癖にしなさいね」
「『すまんね』『ありがとう』っていつも言うんですよ」
と言っているんですね。
家族や周囲の人から惜しまれるように
年を重ねていかないといけないと思いますよ。
(「みやざき中央新聞」医師 早川一光さんより)
生かしていただいていることに、感謝ですね。