負けない生き方③
🔹羽生、私は桜井さんほどの修羅場を経験したことはありませんが、
結果が出ないとか、負けが込んでいるとかで苦しむことはよくあります。
そういう時は、もうその状況を受け入れるしかないっていうことは思いますね。
時間が解決してくれるケースもあるので、
その時が来るまで待つというところでしょうか。
それから、自分の実力はこれくらいということをわきまえておくことも大事だと思います。
いまはまだ実力が十分に備わってないんだから、結果が出なくても当然だと自覚していれば、
大変な時期でもそんなに深刻にならずに乗り越えていけるかもしれませんね。
🔸桜井、羽生さんの場合はファンの期待が大きいから、それが重荷になることもあるでしょう。
だけど羽生さんは自分の軸というものをしっかり持っていて、そこから大きく外れることがない。
多分100人の人と会って話をしても、笑いながら上手に聞いていられる人ですよ。
うまく流しながらも大事なところはしっかり受け止める。
だからどんな相手とも対峙できるんです。
🔹羽生、その時の自分の状態がわかるリトマス試験紙というものを私は持っていましてね。
よく人から、
「頑張ってください」
って言われることがあるでしょう。
その時に
「ありがとうございます」
って素直な気持ちで言える時って大体いい状態なんです。
いや、そんなこと言ったってもう十分頑張ってるよって思う時はあまりよくない。
🔸桜井、「頑張ってください」っていう言葉が素直に入ってくる時は、もう自分が全部受け止めている時ですよ。
羽生さんはそういう素直さと、先の読めない局面で次の一手を指す勇気を併せ持っていると思います。
生き様もすべてそう。
さっきも言ったけど、羽生さんは日常生活がちゃんとしているはずなんですよ。
普段くれないくだらないことをやっていて、金儲けの時だけ頑張ろうという社長とか、
野球の時だけちゃんとやろうとする野球選手とか、そんな人はいっぱいいる。
けれども、羽生さんは将棋を指さない普段の日常生活がちゃんとしてるんですよ。
将棋の時だけちゃんとしている人だったら、
羽生さんは羽生さんになっていないはずです。
🔹羽生、棋士としてのあり方という点では、
今でも印象に残っているのが、亡くなった米長邦雄先生です。
私が初めて名人戦に臨んだ時の相手が、
前年に49歳で名人位に就かれた米長先生でしてね。
あの時の先生は、対局中に1回も膝を崩されなかったり、並々ならぬ思いを込めて臨んでおられました。
勝負は、私が三連勝して名人位に王手をかけたんですが、
そこから先生が盛り返されて二連敗を喫してしまいました。
後で知ったんですけど、米長先生は私に実杯した後、負けたら引退するつもりで第四局に臨まれていたらしいんです。
ところが先生は、対局の合間の休憩時間などには、立ち合いの内藤國雄先生と朗らかに談笑をなさったりして、
そういう覚悟は微塵も感じさせなかった。
並々ならぬ決意を持って勝負に臨みつつも、
そういう逆の振る舞いをあえてなさっていた姿が、非常に印象に残っています。
米長先生の世代の方とは、タイトル戦を争う機会が少なかったので、
とても貴重な勉強をさせていただきました。
(つづく)
(「致知」10月号 桜井章一さん羽生善治さん対談より)
朝食、リンゴ、イチジク、柿、バナナ
https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7f/04/96aae263957eea1a277ab96acf554f43.jpg
🔹羽生、私は桜井さんほどの修羅場を経験したことはありませんが、
結果が出ないとか、負けが込んでいるとかで苦しむことはよくあります。
そういう時は、もうその状況を受け入れるしかないっていうことは思いますね。
時間が解決してくれるケースもあるので、
その時が来るまで待つというところでしょうか。
それから、自分の実力はこれくらいということをわきまえておくことも大事だと思います。
いまはまだ実力が十分に備わってないんだから、結果が出なくても当然だと自覚していれば、
大変な時期でもそんなに深刻にならずに乗り越えていけるかもしれませんね。
🔸桜井、羽生さんの場合はファンの期待が大きいから、それが重荷になることもあるでしょう。
だけど羽生さんは自分の軸というものをしっかり持っていて、そこから大きく外れることがない。
多分100人の人と会って話をしても、笑いながら上手に聞いていられる人ですよ。
うまく流しながらも大事なところはしっかり受け止める。
だからどんな相手とも対峙できるんです。
🔹羽生、その時の自分の状態がわかるリトマス試験紙というものを私は持っていましてね。
よく人から、
「頑張ってください」
って言われることがあるでしょう。
その時に
「ありがとうございます」
って素直な気持ちで言える時って大体いい状態なんです。
いや、そんなこと言ったってもう十分頑張ってるよって思う時はあまりよくない。
🔸桜井、「頑張ってください」っていう言葉が素直に入ってくる時は、もう自分が全部受け止めている時ですよ。
羽生さんはそういう素直さと、先の読めない局面で次の一手を指す勇気を併せ持っていると思います。
生き様もすべてそう。
さっきも言ったけど、羽生さんは日常生活がちゃんとしているはずなんですよ。
普段くれないくだらないことをやっていて、金儲けの時だけ頑張ろうという社長とか、
野球の時だけちゃんとやろうとする野球選手とか、そんな人はいっぱいいる。
けれども、羽生さんは将棋を指さない普段の日常生活がちゃんとしてるんですよ。
将棋の時だけちゃんとしている人だったら、
羽生さんは羽生さんになっていないはずです。
🔹羽生、棋士としてのあり方という点では、
今でも印象に残っているのが、亡くなった米長邦雄先生です。
私が初めて名人戦に臨んだ時の相手が、
前年に49歳で名人位に就かれた米長先生でしてね。
あの時の先生は、対局中に1回も膝を崩されなかったり、並々ならぬ思いを込めて臨んでおられました。
勝負は、私が三連勝して名人位に王手をかけたんですが、
そこから先生が盛り返されて二連敗を喫してしまいました。
後で知ったんですけど、米長先生は私に実杯した後、負けたら引退するつもりで第四局に臨まれていたらしいんです。
ところが先生は、対局の合間の休憩時間などには、立ち合いの内藤國雄先生と朗らかに談笑をなさったりして、
そういう覚悟は微塵も感じさせなかった。
並々ならぬ決意を持って勝負に臨みつつも、
そういう逆の振る舞いをあえてなさっていた姿が、非常に印象に残っています。
米長先生の世代の方とは、タイトル戦を争う機会が少なかったので、
とても貴重な勉強をさせていただきました。
(つづく)
(「致知」10月号 桜井章一さん羽生善治さん対談より)
朝食、リンゴ、イチジク、柿、バナナ
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