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活躍する舞台

2017-11-29 15:40:41 | お話
🌸活躍する舞台🌸


広島県に住むさとみちゃん(仮名)は、小学2年生の頃から、いじめにあっていた。

ある日、いじめっ子たちから「死ね、死ね」と言われ、

「私がいなくなったらみんなが幸せになれるのね」、

そう思って線路の上にしゃがみ込んだ。

クラスメイトがそれを見つけ線路から引きずり出した。

いじめが初めて両親や先生の知るところとなった。

中学1年生の時だった。

その日から、さとみちゃんは、学校に行かなくなった。


大分県の牧野さん(仮名)は大きなホテルを経営している。

以前は観光協会や商工会議所の役員もしていた。

数年前、周りの人たちに担がれて国政選挙に出たが、落選した。

それ以来、人間不信になり、
仕事への意欲もなくなって、家に引きこもった。


この2人に、生きる希望を与えたのは、
かつて盲導犬訓練所で「不合格」の烙印を押された犬だった。


盲導犬は、自分で考えるように訓練される。

目の不自由なユーザーが「ゴー(行け)」と命令しても、危険を感じたら動かない。

障害物があったらユーザーがそれを避けられるように少し方向を変える。

外出前に排泄をし、ユーザーと外出している間は絶対排泄をしない。

そのように訓練されている。

しかし、

訓練所で治らない性格上の短所が1つでもあると、盲導犬にはなれない。

大阪府にある盲導犬訓練所では年間約600頭を訓練し、

そのうち約6割から7割が「不合格」になるそうだ。

一頭の盲導犬を育てるためには約400万円のコストがかかるから、

「不合格犬」が出るとかなりのマイナスになる。

それもやむなし。

ユーザーの「目」となって、その人の生活の安全を保障し、命を守る。

だから訓練の成果は完璧でなければならないのだ。


不登校になったさとみちゃんの両親は、わらにもすがる思いで盲導犬訓練所を訪れた。

「娘は小さい頃から訓練士になりたいと言っていました。

その夢に向かうことで乗り越えさせてあげたいんです」

事情聞いた訓練所の所長はさとみちゃんに、ベンジーという犬の与えた。

ベンチーはエサを食べている時、人が近づくと、ウーッと唸る癖があった。

これで「不合格」になった。

所長はさとみちゃんとある約束をした。

それは

「ベンジーの世話はさとみちゃんがすること。

塾で遅くなってもお母さんに代わってもらわないこと」。

そして、こう言った。

「君の命は、ベンジーが守る。

だから、ベンジーの命は、君が守るんだ」


さとみちゃんは約束を守った。

朝夕の散歩。

塾で遅くなったら夜お父さんと一緒に散歩させた。

雨の日も休まなかった。

ある日、

「訓練士になる。

だから明日から学校に行く」

と両親に宣言した。

中学2年からは1日も学校を休まなかった。


牧野さんの家にはラタンという犬がやってきた。

以前、獣医から「不合格犬」の話を聞き、
引き取りたいと申し込んでいたのだ。

ラタンは好奇心が強く、訓練中に声を掛けられると気が散ってしまう。

それで「不合格」になった犬だった。

奥さんはホテルの女将業で忙しい時、ラタンの散歩を引きこもっている夫に頼んだ。

しぶしぶ散歩させていた牧野さんだったが、

やがてラタンの人懐っこさにはまり、ラタンと遊ぶことが楽しくなった。

ラタンは牧野さんが教えてくれることを何でも覚えた。

そのうち牧野さんの趣味のマジックも覚えた。

牧野さんは仕事に復帰した。

そしてホテルの宴会場でマジックショーをすることにした。

ラタンはその助手となり、宿泊客の人気者になった。


「不合格犬」は「キャリアチェンジ犬」と呼ばれ、

別の世界で立派に活躍している。

障がい者を支える「介助犬」や心を病んでいる人を癒す「セラピー犬」などなど。

沢田俊子著『盲導犬不合格物語』を読んで何度も涙腺が緩んだ。

人間世界にそのまま当てはまると思った。

多くの人が、描いていた夢とは別の世界でがんばっている。

皆「キャリアチェンジ人」なのだ。


(「みやざき中央新聞」H29.11.20水谷さんより)