負けない生き方⑤
🔹羽生、桜井さんは道場で瞬間瞬間に打つ練習をなさっていますけど、
あれは考えないためにの練習という面もあるんじゃないでしょうか。
🔸桜井、そうそう。考えるって意外といい結果に結びつかないこともあるんです。
人間は弱いものですから、欲とか損とか怖とか不安とかずる賢さとか、
そういうものが考えの中に入ってしまってね。
僕は「間に合う」っていうことも大切にしていて、
目の前の一つひとつのことにちゃんと間に合わせることで物事がスムーズに進んでいくんですが、
考えないということは、間に合わせるためにも大切なんです。
🔹羽生、ただ、瞬間的にぱっとやると言うことに対して、
恐れや不安があってなかなかできないことも多いと思うんですけど。
🔸桜井、人間はどこかに、頭を使うことが高等で、身体を使うことは下みたいな意識があるんですね。
頭を使ってるほうが利口そうに見えるとか、立場が上に見えるとか。
でも、その考えの中に入ってるものって、結構いやらしいものも多いじゃないですか。
政治家も経営者もそれで道を誤ってしまうわけだし、
大統領になったトランプだっていっぱい考えてると思うけど、
彼がいいことばかり考えているとは限らないでしょう(笑)。
🔹羽生、考え過ぎることがよくないように、勝負もあまり力を入れすぎてもダメなんでしょうね。
もちろん無気力ではだめでしょうけど、
ちょうどいい加減を知ることが大事だと思います。
車の運転もアクセルとブレーキの加減が大事で、
ぶつかるリスクがあるからといって目一杯ブレーキを踏めばいいわけではありません。
1センチの隙間さえあればぶつからないわけで、
そういう小さなところまで分かってくれば、危なそうに見えても大丈夫ということがあります。
ですから少しでも細かな違いを見極めていけるようになりたいと思っています。
ただ実際の勝負では、いくら自分がこうなったらいいなどう考えても、その通りにはなりません。
ままならないことも想定して進めることも大事ですね。
🔸桜井、僕の場合、思い通りにならなくてもそのギャップを楽しんじゃう。
しばらくすると波に乗れるんですよ。
それは自分に都合の悪い波でも、いい波でも関係ない。
そのうち悪い波ばかりじゃないなとか、
いい波の後には必ず悪い波が来るなとか、
そういうことが分かってくるんです。
🔹羽生、勝負だからいつも勝ちたいと言う気持ちはありますが、
いつも勝てるとは限りません。
桜井さんは、そこでどうするかが大事だとか、
その流れの中から何かを感じることだというお話もよくなさいますけど、
すごく刺激を受けるところがあります。
🔸桜井、僕は流っていうのを体で分かっているんですよ。
だから力んでやるのはダメだなって思う。
緊張すれば力むでしょう。
頭が真っ白になって判断に時間がかかったり、間違えたりしてしまう。
そもそも判断、決断っていうより、
僕は "選択" だと思うんです。
その選択のセンスが大事なんだと思うんですね。
将棋も一手一手選択しながら指していくわけでしょ。
それが羽生さんの場合は、山を越えた向こう側まで見通せるようなセンスを持っているんだと僕は思うんです。
もちろん2人でやっているから変化は起こるでしょうけど、
変化が起こればまたすぐ対応できるんじゃないかと思います。
🔹羽生、そこでミスすることもあるんですけどもね。
でもミスすることと結果って必ずしも一致しないんです。
いい手を指せば必ずしもいい結果が得られるとは限らないところに、
ものすごい勝負の機微とか流れとか、
様々なものがあるのかなと感じています。
🔸桜井、いいミスだったり、ミスが助けてくれるっていう場合もあると思うんですね。
普通の人は助からなくても、羽生さんクラスの指し手になると、ミスを生かすことだってできるんじゃないですか。
🔹羽生、以外と、お互いにたくさんミスしたほうが内容的には面白くなってくることはあるんですよ。
局面が混沌として難易度が上がって、さらにミスしやすくなるんですね。
難しい場面になるから、考えがいがあったりもするんです。
🔸桜井、やっぱりお互いがミスしている時のほうがやることが多いし、
勝負の要素として持っているものをいっぱい出さなきゃいけない分、
面白くなるということですよね。
🔹羽生、ですから勝ち負けは巡り合わせで、
僅か一手の差で負けてしまうという時もあるんです。
でもそれは運がなかったのではなくて、自分のミスに原因がある。
どんな僅差であっても、負ける時は何かしら理由があるものです。
🔸桜井、やっはり羽生さんは、そういう微妙な差を大切にしていらっしゃるんですね。
他の人の目が届かないところで、普段からその微妙な変化に対応している。
強い人同士の勝負になると、本当に微妙な差で勝敗が決まるけれども、
そこをずっと勝ち続けるでいるっていうことは、
やはり微妙な差を掴み取る繊細さを持ち合わせていらっしゃるからだと僕は思うんです。
(つづく)
(「致知」10月号 桜井章一さん羽生善治さん対談より)
北海道のとうまん。
保存料などの添加物なしは、嬉しい。(^_^)
https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/e8/a1d8530a4995608733e7b4f24e34dfb1.jpg
🔹羽生、桜井さんは道場で瞬間瞬間に打つ練習をなさっていますけど、
あれは考えないためにの練習という面もあるんじゃないでしょうか。
🔸桜井、そうそう。考えるって意外といい結果に結びつかないこともあるんです。
人間は弱いものですから、欲とか損とか怖とか不安とかずる賢さとか、
そういうものが考えの中に入ってしまってね。
僕は「間に合う」っていうことも大切にしていて、
目の前の一つひとつのことにちゃんと間に合わせることで物事がスムーズに進んでいくんですが、
考えないということは、間に合わせるためにも大切なんです。
🔹羽生、ただ、瞬間的にぱっとやると言うことに対して、
恐れや不安があってなかなかできないことも多いと思うんですけど。
🔸桜井、人間はどこかに、頭を使うことが高等で、身体を使うことは下みたいな意識があるんですね。
頭を使ってるほうが利口そうに見えるとか、立場が上に見えるとか。
でも、その考えの中に入ってるものって、結構いやらしいものも多いじゃないですか。
政治家も経営者もそれで道を誤ってしまうわけだし、
大統領になったトランプだっていっぱい考えてると思うけど、
彼がいいことばかり考えているとは限らないでしょう(笑)。
🔹羽生、考え過ぎることがよくないように、勝負もあまり力を入れすぎてもダメなんでしょうね。
もちろん無気力ではだめでしょうけど、
ちょうどいい加減を知ることが大事だと思います。
車の運転もアクセルとブレーキの加減が大事で、
ぶつかるリスクがあるからといって目一杯ブレーキを踏めばいいわけではありません。
1センチの隙間さえあればぶつからないわけで、
そういう小さなところまで分かってくれば、危なそうに見えても大丈夫ということがあります。
ですから少しでも細かな違いを見極めていけるようになりたいと思っています。
ただ実際の勝負では、いくら自分がこうなったらいいなどう考えても、その通りにはなりません。
ままならないことも想定して進めることも大事ですね。
🔸桜井、僕の場合、思い通りにならなくてもそのギャップを楽しんじゃう。
しばらくすると波に乗れるんですよ。
それは自分に都合の悪い波でも、いい波でも関係ない。
そのうち悪い波ばかりじゃないなとか、
いい波の後には必ず悪い波が来るなとか、
そういうことが分かってくるんです。
🔹羽生、勝負だからいつも勝ちたいと言う気持ちはありますが、
いつも勝てるとは限りません。
桜井さんは、そこでどうするかが大事だとか、
その流れの中から何かを感じることだというお話もよくなさいますけど、
すごく刺激を受けるところがあります。
🔸桜井、僕は流っていうのを体で分かっているんですよ。
だから力んでやるのはダメだなって思う。
緊張すれば力むでしょう。
頭が真っ白になって判断に時間がかかったり、間違えたりしてしまう。
そもそも判断、決断っていうより、
僕は "選択" だと思うんです。
その選択のセンスが大事なんだと思うんですね。
将棋も一手一手選択しながら指していくわけでしょ。
それが羽生さんの場合は、山を越えた向こう側まで見通せるようなセンスを持っているんだと僕は思うんです。
もちろん2人でやっているから変化は起こるでしょうけど、
変化が起こればまたすぐ対応できるんじゃないかと思います。
🔹羽生、そこでミスすることもあるんですけどもね。
でもミスすることと結果って必ずしも一致しないんです。
いい手を指せば必ずしもいい結果が得られるとは限らないところに、
ものすごい勝負の機微とか流れとか、
様々なものがあるのかなと感じています。
🔸桜井、いいミスだったり、ミスが助けてくれるっていう場合もあると思うんですね。
普通の人は助からなくても、羽生さんクラスの指し手になると、ミスを生かすことだってできるんじゃないですか。
🔹羽生、以外と、お互いにたくさんミスしたほうが内容的には面白くなってくることはあるんですよ。
局面が混沌として難易度が上がって、さらにミスしやすくなるんですね。
難しい場面になるから、考えがいがあったりもするんです。
🔸桜井、やっぱりお互いがミスしている時のほうがやることが多いし、
勝負の要素として持っているものをいっぱい出さなきゃいけない分、
面白くなるということですよね。
🔹羽生、ですから勝ち負けは巡り合わせで、
僅か一手の差で負けてしまうという時もあるんです。
でもそれは運がなかったのではなくて、自分のミスに原因がある。
どんな僅差であっても、負ける時は何かしら理由があるものです。
🔸桜井、やっはり羽生さんは、そういう微妙な差を大切にしていらっしゃるんですね。
他の人の目が届かないところで、普段からその微妙な変化に対応している。
強い人同士の勝負になると、本当に微妙な差で勝敗が決まるけれども、
そこをずっと勝ち続けるでいるっていうことは、
やはり微妙な差を掴み取る繊細さを持ち合わせていらっしゃるからだと僕は思うんです。
(つづく)
(「致知」10月号 桜井章一さん羽生善治さん対談より)
北海道のとうまん。
保存料などの添加物なしは、嬉しい。(^_^)
https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/e8/a1d8530a4995608733e7b4f24e34dfb1.jpg