須崎名物「鍋焼きラーメン」を町の食堂で
高知駅からJR土讃線の特急で約40分。2021年12月に駅舎がリニューアルされた須崎へ。この町では昔からホーロー鍋や土鍋に入ったアツアツの「鍋焼きラーメン」が親しまれてきた。発祥は戦後すぐに創業した谷口食堂。鶏ガラ醤油のスープに細麺で、具材は竹輪、ネギ、鶏肉、生卵。出前で冷めぬようホーロー鍋を使ったのが始まりだ。
しかし谷口食堂は1980年、ご主人が亡くなり閉店した。惜しむファンも多く、近所の橋本食堂を中心に味を再現。現在は市内約30軒で提供されるご当地グルメだ。また2002年には、町おこしのため商工会議所を中心に「鍋焼きラーメンプロジェクトX」を発足。具材や器など「7つの定義」を決め、普及に努めている。
人気なのは「橋本食堂」や「まゆみの店」といった専門店だが、ほかにも食堂や居酒屋、喫茶店などで広く提供されている。今回訪れた「なかがわ」も、看板に『焼肉・お食事・鍋焼ラーメン』と掲げる町の食堂だ。お店は須崎駅から西へ歩いて15分ほど。川端シンボルロード沿いにあり、自宅の1階を店舗にして営業。
店内はカウンター3席に加え、焼肉用の鉄板付きテーブル、小上がりで合わせて23席。お世辞にも綺麗とは言えないが、話好きな女将さんと常連客の織りなすアットホームな空気感は、最上級の調味料となり良い食体験となるだろう。なお客が不在の時、女将さんは2階の居室と行ったり来たりすることもあるので声をかけるべし。
メニューだが、まず麺類は鍋焼きラーメンと普通のラーメンがあるほか、うどん、焼きそばも用意。そして焼肉はカルビ、タン、ミノ、レバー、ホルモン。ほか、カツ丼、親子丼、他人丼、焼き飯、お茶漬けといった飯モノや、餃子、みそ汁もラインナップする。さっそく、お目当ての「鍋焼きラーメン(600円)」を注文した。
着丼まではおよそ10分。土鍋派が主流となった昨今、珍しくホーロー鍋で提供される。薄濁りのスープは親鳥のガラを炊いて醤油のカエシを重ねた物で、アッサリした飲み口ながら、鶏の旨味はしっかりと感じる。合わせる麺は「7つの定義」にもある通り、少し硬めに茹で上げられた細ストレート。スープとの相性は抜群だ。
具材も定義通り親鶏の肉、竹輪、ネギ、そして高知でポピュラーなピンクの蒲鉾「すまき」も乗る。「卵はスープに隠れてるからね」と女将さん。白身に程よく火が通り黄身はトロトロ。麺に絡めて啜ると最高。また、少し酸味のある古漬けが郷愁を誘う。須崎で夜営業の鍋焼きラーメン店はそう多くないのでぜひ覚えて頂きたい店である。
<店舗データ>
【店名】 なかがわ
【住所】 高知県須崎市栄町1-4
【最寄】 JR土讃線「須崎駅」徒歩15分