アレルギー性鼻炎とは、家の中の埃(ハウスダスト)やダニ、スギや雑草の花粉などが鼻の中に入ったとき、くしゃみ、鼻水、鼻づまりといった症状を起こす病気です。原因となるダニや花粉を抗原と呼びます。
もともとアレルギーの体質をもっている人が、何年か(ときに数ヶ月)の間抗原を吸い続けていると、体の中に抗体というものが増えて、アレルギーを起こす準備状態ができます。その後にさらに抗原が鼻に入ると、その抗原と粘膜の細胞に付いている抗体とが反応して、症状が起きるのです。
スギ花粉症では、抗体が増える(アレルギーの準備状態)のに最低2シーズン必要で、発症するのには3シーズンほどかかると言われています。スギ花粉がほとんどない北海道でシラカバ花粉症だった方が、横浜に転居されて3年目からスギ花粉症を発症することは、よくあることです。
最近は毎年多くの花粉が飛散するため、3歳で花粉症を発症する子もいます。小学校高学年では、4割もの児童で、スギ花粉に対する抗体が増えていて、その1/3が既に花粉症を発症していると言われています。残りの2/3の子たちがいつ発症するか、発症しないですむのか、予測する方法はありません。
アレルギーの体質をもったお子さんでは、多くの場合、乳児期にアトピー性皮膚炎、幼児期に気管支喘息が発症して、そのあとで鼻のアレルギーが発症します。このように次々と新しいアレルギーの病気が始まる状態は、アレルギー・マーチと呼ばれますが、私が開業前に勤務していた同愛記念病院の小児科部長だった馬場実先生が提唱された概念です。長年にわたって多くの喘息のお子さんの治療に全力を注がれた馬場先生の、御実感であったと思います。アトピー性皮膚炎や気管支喘息は、大きくなると軽くなることが多いですが、鼻のアレルギーだけは大人まで続くのが普通です。
60~70歳まで、自然寛解することはあまりありません。
年齢別有病率 (鼻アレルギー診療ガイドライン2009年版)
最近になって、耳鼻咽喉科医の立場から、喘息よりアレルギー性鼻炎の方を先に発症する子も少なくなく、そういう子に対して早く治療を始めれば、喘息を発症させないですむ可能性があるということも言われるようになり、これを早期介入と呼んでいます。しかし、早期介入に関しては、具体的にどのような子に、どのような治療を、どれぐらい行えばよいのか、分からない点がまだたくさんあります。