横浜市都筑区耳鼻咽喉科

南山田(センター北と北山田の間)の耳鼻咽喉科院長のブログ。

アレルギー性鼻炎の治療

2012-09-18 08:44:58 | 院長ブログ

今のところ、確立したアレルギー性鼻炎への対策および治療は、大きく分けて4つしかありません。

1.原因回避(予防)

その4つのうちで一番重要なのは、原因を知って、それを避けることです。ハウスダストアレルギーの正体はダニなので、それを減らすこと。清掃、除湿、防ダニ布団カバーなどです。花粉には、マスク、メガネなど。飛散期には洗濯物を外に干さないなど、花粉を家の中に入れない注意も大切です。 

2.薬物

粘膜の中の肥満細胞の表面の抗体と、外から入ってきた抗原が反応すると、肥満細胞からヒスタミンが出ます。ヒスタミンは神経を刺激して、くしゃみが出ます。また、神経の反射は、副交感神経を介して、鼻腺から鼻汁を分泌させます。ヒスタミンは血管にも作用して血管を拡張させ、透過性を亢進させて血液の中の水分を漏出させ、粘膜を腫れさせて鼻づまりも起こさせます。ヒスタミンが作用するためには、標的になる細胞の受容体にくっつく必要があるのですが、この受容体に先にくっついてヒスタミンの邪魔をするのが、抗ヒスタミン薬(正確にはヒスタミンH1受容体拮抗薬)です。アレルギーの薬の大多数が、これです。抗ヒスタミン薬は、始めに開発された、即効性があるが眠気(小児では興奮や痙攣)や口渇などの副作用のある第一世代と、比較的新しく、副作用の少ない第二世代とがあります。

ヒスタミンの受容体には、アップレギュレーションがあることが知られています。ヒスタミンの刺激に曝され続けると、標的になる細胞のヒスタミン受容体は増えてしまうのです。この点からも、アレルギー性鼻炎は、がまんすれば軽くなるということはなく、がまんしずぎると重くなっていきます。

肥満細胞からは、他にもロイコトリエンをはじめとしたいろいろな物質が出ます。ロイコトリエンも、主として血管に作用して、鼻症状を起こさせます。ロイコトリエン受容体拮抗薬も最近よく使われます。抗ヒスタミン薬に比べると、マイルドな効き目ですが、これは受容体との親和性が弱く、抗ヒスタミン薬のように大多数の受容体をブロックするまでの力がないためと考えられます。しかし、抗ヒスタミン薬で効きにくい鼻づまりの症状が取れたり、抗ヒスタミン薬と併用すると相乗効果があったり、眠気の副作用がないので、授乳中でも安心して使えたり、長所も多い薬です。

肥満細胞は、好酸球をはじめとした、いろいろな炎症性細胞を呼び寄せる物質も出します。集まってきた炎症性細胞にはいろいろな作用があり、炎症を長引かせるのです。この中で、特に好酸球で産生されるロイコトリエンは、重要な働きをすると考えられています。

ステロイドホルモンは、これらのアレルギーの反応を含め、すべての炎症を軽くする力のある薬です。この薬の全身投与は、アレルギーも強力に抑えますが、副作用も懸念されます。点鼻であれば、ほとんど副作用がなく、くしゃみ鼻水鼻づまりのすべてに有効です。しかし、ステロイド点鼻は効き目が出るのに時間がかかり、数日から2週間続ける必要があります。

血管収縮薬の点鼻(α交感神経刺激薬。市販の点鼻薬のほとんどがこれ)は、鼻づまりに対して即効性はありますが、効き目は短く、長期続けるとリバウンドがある上に、幼児では強い副作用の可能性もあるので、使い方に注意が必要です。

これらの薬を組み合わせて治療をします。どのような薬を使うかは、ガイドラインもあるし、耳鼻咽喉科医は経験も生かして、その患者さんの症状や要望に合わせて、ベストの組み合わせを考えて治療します。花粉症であれば季節が決まっていますので、薬を飲む期間も決めやすいです。ひとつの問題は、通年性(ハウスダスト、ダニ)のアレルギーの薬をいつやめるかです。症状がなくなればやめていいのか、再発させないために長く薬をのんだ方がよいのか。この点の明確な指針はありません。しかし、鼻アレルギーの場合、薬だけで長期間寛解(長い間、うまくいけば一生、治療なしでも症状が出ない)は期待できません。やはり症状がない時は、薬を止めてよいと思います。薬なしで症状を抑えられなければ、下の3.や4.の治療を検討することになります。

3.特異的免疫療法

減感作療法とも呼ばれます。長期寛解が期待できる、唯一の方法です。抗源のエキスの皮下注射を、少ない量からだんだん増やして、長期間続ける方法です。だんだん増やすのは、副作用を避けるためです。いきなり多くの量を注射すると、アナフィラキシーという、全身のアレルギーを起こすことが心配されます。

かつては、たくさんの患者さんが受診する大きな病院のアレルギー外来で、年にひとりぐらい、花粉症の減感作でアナフィラキシーや、それに近い副作用が起きることがありました。と言っても、きちんと対応すれば、すぐ回復します。近年、スギ花粉のエキスも標準化され、そういう副作用も減っていると考えられますが、それでも開業医で、限られた季節だけ治療を行えばよい花粉症に、減感作を行うことには限界があります。現在減感作を行っている耳鼻咽喉科はほとんどありません。区内の基幹病院である横浜北部病院でも行っていません。当院では、強い副作用の出にくいハウズダストの減感作のみを行っています。通年性のハウスダストアレルギーで、一年中薬が必要な方などには、お勧めしたい治療法です。

スギ花粉症については、近い将来、既に欧米では始められている経口的な減感作療法が可能になりそうです。現在、日本でも治験(実際の患者さんによる、有効性、安全性の確認)が、行われています。

4. 手術

他の治療法で十分効果が得られないときには、手術が検討されます。レーザー手術は、痛みや出血もほとんどなく、日帰りで行える手術です。鼻粘膜の腫脹を減らすのが主目的ですが、鼻汁やくしゃみにも、効果が期待できます。CO2レーザーが最も普及していますが、これは表面だけを焼灼するものなので、効果を得るのに複数回行わなければならない場合もあります。当院では、比較的深部まで蒸散させることのできる、半導体レーザーを用い、危険部位を避けて必要な部位に十分な治療を行うために、内視鏡で観察しながら、手術を行っています。

身体への負担の少ない方法ですので、小学生でも可能です。また、花粉症の季節の前に行えば、症状を軽くしたり、薬を少なくしたりすることができます。しかし、レーザーにも限界があり、長期間の効果の持続はあまり期待できないのと、患者さんによって効果の程度に差があるという欠点があります。

粘膜を切り取る手術など、より徹底して行う手術では入院が必要ですが、効果が長期持続することが期待できます。

 

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