問診が大事です。まず、アレルギーの病気の既往はないか。やはり小児では、アトピー性皮膚炎や気管支喘息を先に発症していることが多いです。家族歴も大切ですが、近年スギ花粉症をはじめとしたアレルギー性鼻炎の罹患率はあまりにも高すぎて、家族の誰かがアレルギーであることは、当たり前のようになってしまっています。
たった10年の間にも、アレルギー性鼻炎の罹患率は、大幅に増えています。
1998年と2008年の有病率 (鼻アレルギーガイドライン2009年版)
三主徴のうち、鼻汁と鼻づまりは他の病気でも見られますが、発作性反復性のくしゃみは、特徴的です。目のかゆみなど、他のアレルギー疾患を疑わせる症状も、大切なポイントです。いつ症状が出やすいか。決まった季節、あるいは朝だけなど決まった時間にだけ症状が出るようなら、アレルギーを疑います。ハウスダスト(ダニ)のアレルギーは通年性ですが、それでも出やすい季節、時間帯はあるものです。熱、のどの痛み、咳といった風邪の症状がないかも確認します。
鼻内所見では、鼻汁の性質が最も重要です。アレルギー性鼻炎の鼻汁は、基本的に透明で”みずっぱな”です。色のついた粘性の鼻汁であれば、鼻副鼻腔炎を疑います。鼻副鼻腔炎でも、前に出てくるのは透明で水のような鼻汁の場合があります。大部分の鼻汁は、粘り気が強く奥の方に貯まりっぱなしになって、一部の粘性の少ない鼻汁だけが、前に出てくるのです。したがって、長期間鼻汁が続いている場合、このふたつの病気を鑑別するためには、鼻内を観察することが必須です。アレルギー性鼻炎では一般的に、鼻粘膜が腫脹して、しばしば他の病気では見られないような強い腫れ方をしています。これも、大きな特徴です。
問診と鼻内所見だけで判断できないときは、鼻汁好酸球を見ます。アレルギー性鼻炎の鼻汁中には、好酸球が存在するという特徴があり、これが見つかったら、それだけでほぼ確実にアレルギー性鼻炎です。でも、症状が軽いときの鼻汁では、見つからないときもありますので、これが見つからなくても、アレルギーではないとは言えません。次に、予防にも治療にも、何がアレルギーの原因であるかが重要ですので、血液中の抗体の検査をします。すべての原因に対する抗体を調べるわけにはいきませんので、代表的なハウスダスト、ダニ、スギ、ヒノキ、カモガヤ(夏のイネ科の雑草の花粉の代表)、ブタクサ(秋のキク科の雑草の代表)に対する抗体は必ず調べ、それにそれぞれの患者さんごとに疑われる原因(たとえばペットなど)を加えるようにしています。
抗体が陽性でも、それに一致する症状がない場合は、鼻炎とは言えません。その準備状態というだけです。それ以上進行して発症してしまわないように、予防、つまり検査で判明した原因になるものを、できるだけ避ける事は必要です。しかし、血液で抗体が陽性でも、鼻炎の症状がなければ、薬を飲む必要はないでしょう。また、長い間鼻汁が続いて、血液中の抗体が陽性であっても、鼻汁が色のついた粘性のものであれば、アレルギーの要素もあるにせよ、それ以上に鼻副鼻腔炎の治療が必要です。
血液の検査だけでアレルギーの診断はできません。アレルギー性鼻炎の診断は、症状および鼻内所見とあわせて行なわなければなりません。