横浜市都筑区耳鼻咽喉科

南山田(センター北と北山田の間)の耳鼻咽喉科院長のブログ。

QOLと費用便益

2012-09-29 23:51:43 | 院長ブログ

まだ昼間は暑いですが、やはり夏とは違います。夜、朝は気温が下がっており、耳鼻咽喉科の患者さんは増えています。先週の土曜日が祭日で休診だったり、昨日の午前中学会で休診にした影響もあると思いますが、先々週の土曜日より4割多い患者さんが来院されました。

昨日の学会は、ポスターが主体でした。短時間にいろいろな知識を吸収するのには、口演より効率が良いです。朝ひととおりのポスターを見て、とくに興味のあるポスターだけ、ディスカッションに参加するので、時間を節約できます。合間には、これも興味のあるミニシンポジウムの会場に行き、また、休憩スペースで他の先生とディスカッション。今回の学会は4部屋を学会場として使用していましたが、すべて同じフロアで、中心の受付のスペースと直結しており、通常の学会のように、他の会場に行くのに廊下を歩いたり、エレベーターに乗ったりする必要がありません。このことも、効率良く回るのを助けてくれました。

最近の学会では定番になっている、朝食付きのモーニングセミナーは、”QOLと費用便益を考慮した花粉症治療”という、阪大の荻野敏先生のご講演でした。耳鼻咽喉科開業医の扱う病気の多くがそうですが、花粉症も命にかかわるわけではありません。しかし、生活の質には、大きな影響を及ぼします。症状の強さや治療の効果の判定を、鼻水の量などで評価するのではなく、QOLを指標にするというのは、ここ数年の流れです。QOLでは、病気の症状と薬の副作用としての眠気などが、同列で評価されます。

さらに荻野先生は、それに費用の面も考慮すべきと提案されています。それは、医療費を減らしましょうという、という単純な話ではありません。費用には、医療費だけでなく、通院費や待ち時間を費用に換算したものを含む医療関連費、来院している時間は仕事ができないわけですから、その労働損失などの間接費、さらに精神的損失などの無形費用にも配慮すべきということでした。

こういったことを研究をされている先生もいらっしゃるわけですが、実際には難しい面も多く、たとえば比較的数字で表し易い労働時間の損失の評価でさえ、日本ではベースになる1週間の労働時間が40時間を大きく越えている方がたくさんいらっしゃって、これは労働基準法に違反していることになり、それを公に発表するのが難しいのだそうです。また、いろいろな事象を評価する方法が研究者によってばらばらでは比較できませんから、ひろく使われている評価法を用いなければならないのですが、最近は知的所有権が重視されるようになって、ある評価法を使う許可を得ようとしたら、数十万円を要求されたというようなお話もありました。

こういった研究の結果を見るまでもなく、医療資源に限界がある中、開業医も費用対効果ということも配慮しなければならないのは当然ですが、待ち時間やお子さんが病気になったときにお母様が仕事に行けない時間も、経済損失だというお話を聞いて、まだ甘いところもあるのかなと考えました。たとえば花粉が飛び始めて患者さんが増えると、自動電話予約システムと順番取りのアイチケットを併用して、できるだけ待ち時間を少なくしている当院でも、どうしても通常よりも待ち時間が長くなります。耳鼻咽喉科は年末の感染症が正月には一旦落ち着き、花粉が飛び始める前の1月は比較的空いているのですが、毎年花粉症で薬が必要な方には、1月のうちに来ていただくことを、もっと積極的にお勧めしてもよいと気がつきました。

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