細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●「宇宙戦争」1952の戦慄。

2005年06月14日 | Weblog
●6月14日(火)
DVD-122 「宇宙戦争」War of the Worlds (1952)米
監督・バイロン・ハスキン 主演・ジーン・バリー ★★★☆☆☆
昨13日に新作「宇宙戦争」を見た後、監督のスティーブン・スピルバーグが、少年の頃に見たオリジナル作品にリスペクトを捧げていたので、同世代としては、やはり急に見たくなった。
そこで「8月のクリスマス」の試写をやめてDVDを見る事にした。身勝手な映画評論家だ。
何度見ても面白いS.F.の傑作で、基本的にはスピルバーグもストーリーを変えていない。
オリジナルでは科学者と助手の女性のラブ・ストーリーになっているが、田舎の一軒家でエイリアンと遭遇したり、街でパニックになった群衆に混乱に巻き込まれるのは同様だが、軍隊が総攻撃に出る辺りは、今回は避けてトム・クルーズの父性愛をテーマの軸にしているのが、大きな違い。
それにしても50年前のS.F.サスペンス、特殊効果のヴィジュアルはお見事だった。
この際に、ぜひ、オリジナル版も見て頂きたい。大きな違いは時代と異文化への危機感の差のようだ。

●「宇宙戦争」は地上戦争だった。

2005年06月13日 | Weblog
●6月13日(月)9-50a.m. 六本木<ヴァージン・シネマ・7・スクリーン>試写
「宇宙戦争」War of the Worlds (2005) 米
監督・スティーブン・スピルバーグ 主演・トム・クルーズ ★★★★☆
安心したのはH.G.ウェルズの原作にほぼ忠実に、55年のジョージ・パルのイメージに忠実に描いていたこと。
その点に関しては監督自身が話していた通りで、いままでのS.F.で描いていたエイリアンとの友好関係が、今回は全面戦争になった点について、「やはり空を見ていても、ただ美しいと詩的に感じるような時代ではなくなった現代に警鐘を鳴らしたい」と制作の弁。「つねに新しいシーンを目指している」というスピルバーグの自信の表情が明るかった。
しかし「これは恐怖映画ではなく家族の絆を見いだすための映画で、そのことを監督と毎日話していた」とトム・クルーズが強調したように、S.F.映画の割には家族の人間関係に力を入れた仕上がりになっている。
でも、地下に生きていた異生物がどうして地上の細菌に弱かったのか。
地上の亀裂を見たトムが、どうして氷の欠片をポケットに入れたのか。
ティム・ロビンスを始末したトムにどうして罪悪感がないのか・・・いろいろ不思議なことは多い。
でも、一応、ちゃんとした「地上戦争」として見せるヴィジュアルの素晴らしさは、見て損はない。
これが、地球最初の試写なので「批評は書かないでください」という約束を守ろう。

●「ナッシング」のおかしな二人。

2005年06月10日 | Weblog
●6月10日(金)13-00 京橋<映画美学校第二試写室>
M-080 「ナッシング」Nothing (2003)カナダ・日
監督・ヴィンチェンゾ・ナタリ 主演・デビッド・ヒューレット ★★★☆
ナタリらしい新感覚の「おかしな二人」だが、クビになった男と、自閉症でアパートから出られない不運なふたりの青年が、自分の拒絶するものを消去していくプロセスが、あまり可笑しくない。
「マルコビッチの穴」のような発想はいいとして、シナリオにまったく意外性がなく、役者もダサい。
クリエイティブにはイメージ消去が出来るが、これならばホームビデオでもいいと思う。わざわざシネマスコープで劇場用に作る必要のない実験映画に見えたのが残念。ナタリの新作で期待しすぎたようだ。

●「スターウォーズ/エピソード・3/シスの復讐」ダースベイダーの正体。

2005年06月06日 | Weblog
●6月6日(月)12-30 六本木<FOX試写室>
M-079 「スターウォーズ/エピソード3/シスの復讐」Star Wars/ Episode 3/ Revenge of the Sith (2005)米
監督・ジョージ・ルーカス 主演・イアン・マクレガー ★★★★
かくしてダースベイダーの正体と、「スターウォーズ」サガの全貌が明らかになった。
歴史的な第一作をハリウッドの大行列で見てから、次第に複雑で怪奇になるシリーズに、内心心配しつつ見た新作で最終作品だが、意外にすっきりしていて、映画本来のストレート・エンターテイメントに徹しているのに安心した。
これでまた、第一作から見直して見たくなった。
たしかに大進歩したSFXの画面には驚くし、これでまた第一作を見るとチープかもしれない。しかし、これはCGの進歩を見るシリーズではなくて、波乱の大河ドラマの皮肉な関係図を見る楽しみに満ちている。
ま、今年我々が見られる最大のファンタジー大作であることに間違いはない。
そしてジョージ・ルーカスの壮大なイメージの完結に拍手、喝采。

●「愛についてのキンゼイ・レポート」の真実と無念

2005年06月03日 | Weblog
●6月3日 (金)13-00 東銀座<松竹試写室>
M-078 「愛についてのキンゼイ・リポート」Kinsey (2004) 米
監督・ビル・コンドン 主演・リーアム・ニースン ★★★☆
セックスに悩んだ昆虫学者のキンゼイ博士は、全米の男女に膨大なセックスに関するデータを集めてリポートにした。
60年代には、いろいろな雑誌に取り上げられたセックス調書が話題になり、一種のブームになり映画にもなった。
ウディ・アレンの映画に描かれるセックス・コンプレックスなどは、あの時代の後遺症だが、いまではギャグとしても古くなった。この新作では博士のデータ収集と研究があの時代のシリアスな視線で描かれているので、かなり戸惑ってしまった。
リーアム・ニースンは悩める博士を好演しているが、どうもこの結論では新鮮味がない。
どうして、いま、このテーマを映画化したのか、その回答がラストまで見えなかったのが残念。

●「空中庭園」は失楽庭園か虚空庭園か。

2005年06月02日 | Weblog
●6月2日(木)13-00 六本木<アスミック・エース試写室>
M-077 「空中庭園」2005 日
監督・豊田利晃 主演・小泉今日子 ★★★☆☆
ブラックでシニカルな平均的日本家庭の内部疾患カリカチュアとしては、笑えるけど感銘はない。
アカデミー作品賞受賞の「アメリカン・ビューティー」とあまりにも似た設定で、赤いバラの飼育がビジュアル・シンボルだったあの傑作に対抗したのか、「ひとはみんな血だらけで泣きながら生まれてくる」という言葉に圧倒されたのか、血染めのイメージで家庭が崩壊する映像には笑えない。ホラー映画じゃないのだから、せめてテラスの花が赤く散るくらいの美意識で描いて欲しかった。テレビのニュースで見る事件の方が、もっと過激なのだから、クールに描いて欲しかった。


●「亡国のイージス」

2005年06月01日 | Weblog
●6月1日(水)13-00 銀座<ヘラルド試写室>
M-076 『亡国のイージス」Aegis (2005) 日
監督・坂本順治 主演・真田広之 ★★★☆☆☆
国産のイージス戦艦内ダイ・ハードとして、サスペンスは2時間持続する。
しかし、某国テロリスト・グループと、艦内の造反グループに結束の友情関係がないので、後半は戦闘モードにパワーがなく、「エアフォース・ワン」のような娯楽一色になるのが残念。
ストーリー展開は面白く、編集と音楽にハリウッドのスタッフを起用したことで、スケール感はアベレージをクリアしている。
真田広之の超人的な大活躍はいいが、どうして日本映画のサスペンスにユーモア感覚がないのだろう。全員マジなので、そのことがリアリティーを欠いてしまっている。ま、とは言え、及第点の国産サスペンスとして楽しめた。