瀝瀝(れきれき)散歩道

瀝瀝というのは「水が音をたてる様子/風が音をたてて吹く様子」つまり、「ありのままの風景」ということでしょうか。

放っておけない課題(1)

2017-05-21 17:51:05 | 日記



函館の旅を続けています。
写真は100万ドルの箱館の夜景です。
今日の日の入りは18時56分、写真を撮ったのは19時20分ぐらいです。
ミシュランの3つ星がついている夜景です。太平洋と日本海の二つの海に挟まれた箱館、
素敵な街です。

函館と言わず、全国的にそうですが、中国人観光客に展望台は独占されていました。
「ここはどこ?」というくらいの数でしたが、、、みな、函館の夜景の美しさには感心していたようです。
よかった!!


さて、夜景を見に行く前に
函館の老舗、ソーセージを作っているカール・レイモンのお店に行きました。
我が家でも度々食卓に登場する美味しいソーセージです。



レイモンは1894年3月28日、ドイツ・ボヘミア地方(現在のチェコスロバキア)のカルルスバ-トという町で、生まれました。
14歳の時に父親の紹介でハム・ソーセージのマイスターのところに修行に行き、18歳の時に独り立ちするまで、厳しい修行を重ねます。
故郷を離れベルリン、フランス、スペインで修行をし、帰国後マイスターの資格を取りました。

第一次大戦後にはレイモンはアメリカに渡り、3年間の期限付きで缶詰の技術を学ぶのですが、
アメリカからヨーロッパに戻る帰途の1919年、日本に立ち寄ります。
ひょんなことからレイモンは1920年から1年間、ハムソーセージの技術指導をするため函館に住むことになりました。
レイモンは勝田旅館に滞在しました。
予期せぬ出来事なのか、運命だったのか、、、
そこで生涯の伴侶となる勝田旅館の娘、勝田コウと大恋愛をします。
当時ですから当然のことかもしれませんが、ふたりの交際はコウの両親に大反対されてしまいます。

コウは思い詰めますが、レイモンの情熱とふたりの若さと強さゆえ、
大正11年(1922年)別々に日本を出国、コウは下関から釜山に渡り、天津でレイモンと再開します。
今の時代でも国際的な駆け落ちは相当勇気のいることだと思うのですが、大正時代にふたりはそれをやってのけてしまいます。
驚きです!

その後、苦労して上海でドイツ行きの旅券を発券してもらい、レイモンの故郷で結婚します。
しかし、その3年後、レイモンが函館に帰る、と言い始めます。
コウがドイツの生活で疲れているのを見て、コウに苦労をさせるなら自分が日本へ、と思ったのでしょう。
1925年、レイモン31歳、コウ26歳のときです。

それからずっとレイモンとコウは函館にとどまり、第2時世界大戦も乗り越え、ハムとソーセージを作りました。
自宅横の工場の入口には

「北海道創始者仕事場(HOKKAIDO PIONEER'S WORKSHOP)礼門」

の看板を立て、ドイツ伝統の製法によるハム・ソーセージづくりを守り続けました。
すでに日本に来てから50年の月日が経っていました。



大正、昭和と激動の時代を生きてきたレイモンは、自分の技術を持って
日本の国民の食生活に変化を持たせ、健康を維持できるような改善をしたいと願っていました。
日本人は昔は小さくて痩せていて、レイモンはそれをどうにかしたいと考えるようになったのですね。

その後、北海道畜産開発プランを北海道庁に何度も提出します。

彼にとって「ほおっておけない課題」は日本人の食生活だったのです。
信念を貫き通す強い意志を持った人なのです。

さて、みなさんにとって「放っておけない課題」とは何でしょうか?
生活の中でどうにか改善したり解決したい、と思っている課題がありますか?
私たちはまだまだ長く働いていきます。
自分の中にあるこの「課題」を見つけると、働き方の選択に一つの指針を与えるかもしれません。




ソーセージを作り続け、日本人の食生活改善を促したレイモンの手です。

『私がずーっと心がけてきたことは、ただまじめに働くことですよ。
そして私の作ったハムやソーセージを喜んで食べてくれる人が一人でもふえるのですからね。
これはお金では買えないものね。
だから私は、胃袋の宣教師だと思っているんですよ』

『花を見ればわかるでしょう。花の色は中から出てきます。
人の健康も体の中から出てくるものなのです』

レイモンは
1974年、西ドイツのハイネマン大統領から、日本とドイツの友好に関する彼の長年の努力を称えられ
「功労勲章十字章」が贈られました。
1979年は、財団法人サントリー文化財団が設けた第1回地域文化賞の優秀賞に選ばれ
1985年11月、「北海道新聞産業経済賞」を受賞。さらに横路北海道知事から「産業貢献賞」の授与を受けました。
そして1986年5月、長年の日本の畜産業への貢献により、「勲五等双光旭日章」を受賞したのです。


参考文献
カールレイモン歴史展示館 パンフレット
http://www.city.hakodate.hokkaido.jp/soumu/hensan/jimbutsu_ver1.0/b_jimbutsu/reimon.htm
http://www.raymon.co.jp