3月3日はひな祭りで、『枕草子』では、お天気が麗らかに心休まるように晴れているのが良いとされるけれど、平安朝と季節感も違うし、気圧のせいか北風が強く、あまりうららかでない。綺麗に咲いた桜の枝を長めに切って、大きな花瓶に挿してあるのは風情がある、と清少納言は書いている。染井吉野は無理でも、現代でも河津桜や寒緋桜を午後の散歩に眺めると、王朝人になったような優雅な気分になる。そやな、2駅先の孫娘に雛あられと菱餅と3色花見団子でも持って行ってやるか。
『日本の古典を英語で読む』(ピーター・J・マクミラン著)では、枕草子冒頭の「春はあけぼの。やうやうしろくなり行く、山ぎはすこしあかりて、むらさきだちたる雲のほそくたなびきたる」を、
In spring it is dawn---little by little the sky above the peaks of the mountains becomes clearer, and the sky brightens just a bit as wisps of purplish clouds trail along.
⁂wisp = 一片、断片、一筋。a wisp of cloud = 一片の雲。複数だと幾筋かの雲。
⁂trail along = 〈着物などが〉(…のあとを)引きずっていく。
-と英訳している。やはり、言葉は抑揚、アクセント、ニュアンスから感じるものだと思う。春はあけぼの、と有名女流に言い切って断定されると、山の上に棚引く雲のような遠い存在となり、日本語でも言い換えが不可能となる。「花は霧島(=つつじ)、たばこは国分、燃えて上がるは桜島」と鹿児島おはら節に謡われてしまうと、いやあ、古来日本で花は桜でしょう、と言い返すと角が立ってしまう。曙は横綱だろう、なんて言うのを許せば収拾がつかなくなる。ハイ、そこまで、と内閣広報官のような仕切り役が居なければ、文章でも記者会見でもグダグダになって良くない。文学は民族固有の文化であり、宝物であることを改めて実感する。
Changing the subject, did you know that Tom is dating Masami?(話は変わりますが、あなたはトムがマサミとつきあっていると知っていましたか?)、というのが今朝のNHKラジオ英会話のキー・センテンスだった。意外だったのが date が剥き出しで Masami とくっ付いた他動詞だったことである。日本人なら普通その間に with を入れなければ間違いと思ってしまうに違いない。納得がいかないながらも、日本人が英作文で失敗しそうな with の不要な marry みたいなものかと了解する。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会はジェンダー意識の欠如が国際問題となったけれど、結婚では with をバックグラウンドとする日本人の生活意識の方が心持ちが優しいように思える。西洋人のように I will marry her. では、女を獲物として略奪し、手籠めにするような感覚意識がどうしても残る。そのような疑念を持ちながら日英辞書で調べると、date には自動詞用法もあって、
The girl I date with =ぼくがデートする女の子、のように使える。交際中の間だけは西洋の男も、女を獲物として見ていないのだと知って、安心した。
女性に優しい日本は米国並みに、内閣広報官人事で、辞職した女性の後任にも同じく小野日子外務副報道官を選んだ。いっぱい知恵を絞っただろうに、首相官邸らしさが抜け切っていない嫌いがある。内閣支持率の低迷を一発で挽回するため、私ならサプライズで望月衣塑子氏を抜擢しただろう。すぐにでも支持率が60%以上に急上昇したに違いないのに、大きなチャンスを逃した。もっとも、菅首相記者会見で質問する記者を整理しないで、自分からソーリ、総理と問い詰めたりしないことが条件である。
ひかり子が
のぼり立つなり
望月は
山際隠れ
問ふもいらへず
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