金木犀

　GoTo イートも東京発着 GoTo トラベルも始まり、世は宴ブームに突入したので、２月以来の長い謹慎令を破って、ＯＢ爺会に集った。
　このご時世、個室で横に寝転がってもぶつからないくらいの距離が保たれていたので、安心して飲めた。歳に不相応に飲む輩ばかりで、止せばいいのにワインバーまで寄り道した。
　帰り道はふらっふらとなり、独り千鳥っていると、得も言われぬ香りが漂ってきた。中秋の名月の月明かりがあっても、正体は見えなかったけれど、金木犀の不意の攻撃だった。
　東証撃沈で気になるＮＹ相場を聞くため、二日酔いの頭は痛かったけれど、朝早くにラジオを付けると、全国あちこちから金木犀の便りが届いていた。桜は前線があるのに、この薫りの女王木は処々斉放する質があるようである。女はいくらでも嘘を吐くそうだけれど、この木ばかりは表裏が無いのが好ましい。

仲秋に
膨らむ月は
金色の
薫りを放つ
木にも酔ふかな