遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

Sir Timothy

2008-06-11 23:55:14 | たわごと
慶應義塾大学に行ってきました。3時からのハント博士の名誉博士授与式と4時からの彼の講演を聴講。彼独特のウィットと含蓄の深い話を楽しんで聴いてきました。僕にとってブリティッシュ・イングリッシュは聞き取りが難しいのですが、彼は世界各国でスピーチしていますからこういった外国人相手に分かりやすくスピーチする技術に長けています。名誉博士号授与式でのスピーチではサイエンスがゲームのように勝ち負けを争う場になっていることを憂いて、真実を知ろうとする営みであることの大切さを解きました。最後に「私がノーベル賞をとれたのですから、誰でもとれるのですよ。」とジョークでスピーチを締めくくってましたが、ノーベル賞をとったからこそ言えるジョークなんですよねぇ・・・。
授与式の会場は国の重要文化財になっている慶応義塾大学の演説館でした。福沢諭吉によって建設された日本最初の演説会堂で、アメリカから取り寄せた図面をもとにして作られた明治初期の洋風建築です。小さな建物ですが、格調の高さは他大学の持つどんなピカピカの講堂も足下に及ばないでしょう。僕は入室したのが最初だったので英国大使館のスタッフ席のすぐ後ろに通されましたが、ハント博士はスーツを着てネクタイをした僕に全く気がつきませんでした。

名誉博士号授与式の後、講演会場に移りました。この講演は一般公開されているので、日本語同時通訳付きです。はじめてイヤホンを付けて日本語と英語を同時に聴きましたが、同時通訳者がスピーチについていってないところではどっちも聴き取りにくいという状況でした。覚悟を決めて英語オンリーにすべきでした・・・。
講演が終わってイヤホンを外し、会場を出ました。結局彼は僕の存在に気がつきませんでした。授与式でこそっと"Congratulation! Tim!!"と彼に言えば良かったかもしれません。もちろん、大きな講演会で演者に気がついてもらうなんて贅沢な考えです。しかし・・・このまま帰るのか??会場の外で逡巡し、覚悟を決めて会場を出る人々の流れを逆行して講演会場に戻りました。ハント博士は発表を終えて演台を片づけていました(慶應のスタッフ、何してんだっ!ノーベル賞学者に後片づけさせんなよ!!)。意を決して彼に話しかけました。胸はドキドキして英語が出てきません。彼は最初僕が誰か分からなかったみたいですが、気がついてくれました。握手しながら、メチャメチャな英語で

「お会いできて嬉しいです。お元気そうですね。」

彼はニコニコ笑いながら

"Healthy? Oh, yes, I got fat!"(健康? ああ、そうだよ、太ったんだ!)

なーんて、昔からの彼の調子で答えてくれました。こっちは気持ちが舞い上がってどうにもこうにも自分をコントロールするのがやっと。帰りの飛行機が7時30分なので、レセプションに出れないと伝えて会場を後にしました。会場を出た時の僕はきっと足が宙に浮いてフワフワと空中を歩いていたはずだ。ごくわずかの時間でした。あいさつ程度の会話だったんだけど、石川から東京へ出た甲斐があったと言うものです。講演会での彼のメッセージは、"Don't be scared!(恐れるな!)"でした。
今でも握手の感覚が手に残っています。(笑)

写真は演説館でのハント博士を掲載してましたが、演説館の写真と差し替えました。やっぱり肖像権等について心配でしたので・・・。私ゃ、駐日英国大使館や慶応義塾大学とケンカする度胸ないのですよ。この演説館、なかなか雰囲気のある建物でしょ。

本日のお酒:鹿児島芋焼酎 さつま無双 黒麹
コメント (2)
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