午前中、野々市市の市営プールで1000メートル泳いで近くの焼肉屋で石焼ピビンバ喰ってからお仕事。そのままダラダラと7時頃までかかってしまいました。もうちょっと他のこともしたかったなぁ。
昨日のエントリーで北京に黄砂が来たって書きましたが、今日は九州で黄砂が観測されたそうですね。やな季節になったもんだ。砂漠化するのはあっちの勝手なんだけどねぇ・・・。
松谷化学など、希少糖「D-プシコース」による寿命延長効果を確認(マイナビニュース) - goo ニュース
生物の寿命はやっぱ摂取した栄養に左右されるんですが、それが糖なのかタンパク質なのか脂肪なのかカロリーなのか酸素なのか、まあなんだかよくわからん。それでも、糖あたりからあたっていくことが栄養学的には定石のように思われます。この研究グループのように線虫(
Caenorhabditis elegans)を使うのが適切でしょう。老化研究でよく使われるこの生物は受精卵から細胞が分裂するに連れてどの細胞になっていくのかチェイスすることが出来ます。成虫になったら、そっから決まった数の細胞から変わらんので、細胞分裂による老化(Replicative senescence、Hayflick限界による老化)の要素をほとんど無視できます。そんなわけで、栄養源や酸化物質と細胞寿命の関係の研究にはうってつけなわけ。
さて、この研究を農芸化学学会で発表した香川大希少糖研究センターって知らんかったです。共同研究をした
松谷化学工業のことも。澱粉の総合メーカーで、商品のダイエット食品でモンドセレクションとったりしてますね・・・・。
見つけた糖はD-フルクトース(果糖)のC3エピマー「D-プシコース」。変な名前だぁ。w フルクトースの3番目の炭素に付いてるHとOHの立体配置がくるっと逆転してるわけですな。分子的にはC6H12O6で同じなんですが、軸に対して上に付いてるとか下に付いてるとかで別の糖になるのです。生物にとって別物なんす! こういう分子の立体構造こそが生物にとって意味の有る無しを決定しているのであります。
そんで実験結果としては、これを与えると線虫の寿命が20%伸びたっていうとこがポイント。この糖、希少糖というくらいですから自然界では珍しいんでしょうね。ノンカロリーで甘味度が砂糖の7割程度というので、まあこれに長寿効果が合わさるのだから健康食品として抜群ですな。基本的に六炭糖なので、害はなさそうですし。
こういう特殊な糖を使った実験は、使う糖分子の精製度や純度がとても重要です。他の糖が微量でも混ざれば、そっちの効果が出てきます。「他の糖」といってもたったひとつの立体配置が違えば大違いなのです。そこを純化しての実験は簡単じゃない。昔、酵母遺伝学でもガラクトース代謝系やマルトース代謝系(麦芽糖)を研究し始めた頃は、信頼できるものを買って来ないと混在してきたブドウ糖によって実験結果が思ったようにならなかったと院生時代に苦労話を聞かされました。大腸菌のラクトースオペロンやラムダファージを使った実験をしようとすると、培地にちょっとでもグルコース(ブドウ糖)が混在するとラクトース(乳糖)やマルトース(麦芽糖)の効果がなくなる。生物にとってはグルコースが最優先のエネルギー源です。それがあるなら他の代謝系を完全ストップしてしまいます。異化代謝(カタボライト)抑制というやつですね。
さらにD-プシコースを与えられた線虫の細胞内で何が起こってるか調べると、活性酸素を除去する酵素SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)とカタラーゼの発現量と活性が上昇していたそうです。もちろん、複製・分裂以外に老化原因を求めると代謝による活性酸素の発生を考えるので、そういった酵素について分析するわけです。ただ、基礎研究者としては、その糖がどうやって発現上昇と酵素活性の上昇を引き起こしたかが知りたいよなぁ。それと、他になんも起こらなかったのかも調べたいな。クロマチン構造とか。