ギュンター・ブローベル氏死去 ノーベル医学生理学賞受賞
Günter Blobel, a Nobel laureate who redefined cell biology, has died (THE ROCKEFELLER UNIVERSITY)
バクテリアの分泌タンパク質が持つシグナルペプチド配列でノーベル賞を受賞されました。真核生物でもタンパク質の輸送系で功績を残された方です。核膜孔タンパク質では、僕が九州大学でRan-RCC1システムを研究する過程で競争になりました。我々がRanBP2とよび、彼らはNup358とよんだタンパク質です。
元々、僕は核内Gタンパク質Ranの結合タンパク質がとりたかっただけでした。医学生の横山信彦さんが2ハイブッリッド法でGal4dbd-Ranを使って90数匹の候補を拾ってきた。
「先生、次はどうしぼったら・・・」
「全部回収して、全部シークエンスしてください」
「へ?」
「だ か ら 全部ひろって、全部シークエンスしてください」
彼はセカンドスクリーニングでもう少し数を減らせると思っていた。酵母の専門家の僕にはそのノウハウがあると・・・遺伝的スクリーニングに必要なのは、あきらめが悪いか悟りを開く能力かどっちかなんよ。「100匹以下なら全部拾えばいいやん。3桁なら直接調べられる数やし。90数匹ならたったの2桁。」というのが僕の判断。当時のシークエンサーはゲル板1枚で24レーンあったので、GATCで4つ使うとしても6サンプル。16回やれば96サンプルのシークエンスが読める。簡単だ♪
彼は外科の中でもひときわ上下が厳しい脳外科医で、少林寺拳法部の部長もやってた人だった。自分を身も心も追い込んでしまうタイプの人。医局か病院かでか知らないけど精神的にきついとアトピーを発症して皮膚がボロボロになったりもしていた。だから、彼はムッとしながらも候補の酵母を全部拾って、全部プラスミドを回収して、全部シークエンスをよんだ。僕の読み通り、候補が90数匹でも重複がかなりあって10種類くらい。しかもオーバーラップがありそう。Ran結合ドメインと呼ばれるアミノ酸配列を5種類みつけた・・・・1つはRanBP1。しかし、4つは同一のタンパク質の中に含まれてた。我々はこれをRanBP2と名付けた。
横山くんはバラバラに獲れてたRanBP2の方を自分の研究対象に選んだ。FXFX repeatがあることに彼は注目していた。核膜孔タンパク質だというのだ。しかし、ノザンをするとメッセンジャーは3.5キロはある。我々が獲ったcDNAは、重複部分を繋いでのばしても2キロ弱。僕は博士課程の人には年限があるから、そういう難敵に手を出すのはどうかと思ったんだが、彼に任せました・・・彼は博士課程で最初に所属したラボで先輩とうまくいかずに、途中からうちの研究室に来た人で、ボスは米国から流れてきた僕に最初に指導する院生として彼をあてがった・・・年齢差はたった1歳。w
遺伝屋をやってると、どうしても人の運不運というか、引きの強さというのを目の当たりにする。僕は平凡なレベルだ。あきらめが悪いだけ。横山くんは引きが強かった。僕が出会った研究者の中では最強の部類。研究の進め方の選択も必ずいい方に転がった。ただ、研究の学会発表を米国中心にしたのがまずかった。ギュンター・ブローベル博士のグループがかぎつけた。世界一流の核膜孔タンパク質の研究グループの一つだった。まずい。こっちは偶然核膜孔タンパク質に出会ったド素人♪ なのに、横山さんはコールドスプリングハーバー・ミーティングでのブローベルさんの講演で、彼にけんか腰の質問をしたとのこと。その武勇伝を彼から聴かされた時、わしの意識は一瞬遠のいたよ。マジで。
それからは研究室で総力戦。ボスは特定研究班の班長としての最後の年だった。なんとしても大きな業績がいる! 〈ここからの詳細は省略〉 結果は彼らがJBCで、うちはNatureだった。まあ、勝ったよ。ギリだったけどね。
戦友だった横山くんも3年前にがんで他界されました。脳腫瘍。『医師は自分の専門の病気に殺される』というジンクスを守りやがった。(涙
今の僕は彼らのおかげで生かされています。ほんで、まだRanを使って研究やってます。あきらめ悪いんですよ。僕。
本日のお酒:KIRIN CLASSIC LAGER + 天狗舞本醸造生酒 しぼりたて
Günter Blobel, a Nobel laureate who redefined cell biology, has died (THE ROCKEFELLER UNIVERSITY)
バクテリアの分泌タンパク質が持つシグナルペプチド配列でノーベル賞を受賞されました。真核生物でもタンパク質の輸送系で功績を残された方です。核膜孔タンパク質では、僕が九州大学でRan-RCC1システムを研究する過程で競争になりました。我々がRanBP2とよび、彼らはNup358とよんだタンパク質です。
元々、僕は核内Gタンパク質Ranの結合タンパク質がとりたかっただけでした。医学生の横山信彦さんが2ハイブッリッド法でGal4dbd-Ranを使って90数匹の候補を拾ってきた。
「先生、次はどうしぼったら・・・」
「全部回収して、全部シークエンスしてください」
「へ?」
「だ か ら 全部ひろって、全部シークエンスしてください」
彼はセカンドスクリーニングでもう少し数を減らせると思っていた。酵母の専門家の僕にはそのノウハウがあると・・・遺伝的スクリーニングに必要なのは、あきらめが悪いか悟りを開く能力かどっちかなんよ。「100匹以下なら全部拾えばいいやん。3桁なら直接調べられる数やし。90数匹ならたったの2桁。」というのが僕の判断。当時のシークエンサーはゲル板1枚で24レーンあったので、GATCで4つ使うとしても6サンプル。16回やれば96サンプルのシークエンスが読める。簡単だ♪
彼は外科の中でもひときわ上下が厳しい脳外科医で、少林寺拳法部の部長もやってた人だった。自分を身も心も追い込んでしまうタイプの人。医局か病院かでか知らないけど精神的にきついとアトピーを発症して皮膚がボロボロになったりもしていた。だから、彼はムッとしながらも候補の酵母を全部拾って、全部プラスミドを回収して、全部シークエンスをよんだ。僕の読み通り、候補が90数匹でも重複がかなりあって10種類くらい。しかもオーバーラップがありそう。Ran結合ドメインと呼ばれるアミノ酸配列を5種類みつけた・・・・1つはRanBP1。しかし、4つは同一のタンパク質の中に含まれてた。我々はこれをRanBP2と名付けた。
横山くんはバラバラに獲れてたRanBP2の方を自分の研究対象に選んだ。FXFX repeatがあることに彼は注目していた。核膜孔タンパク質だというのだ。しかし、ノザンをするとメッセンジャーは3.5キロはある。我々が獲ったcDNAは、重複部分を繋いでのばしても2キロ弱。僕は博士課程の人には年限があるから、そういう難敵に手を出すのはどうかと思ったんだが、彼に任せました・・・彼は博士課程で最初に所属したラボで先輩とうまくいかずに、途中からうちの研究室に来た人で、ボスは米国から流れてきた僕に最初に指導する院生として彼をあてがった・・・年齢差はたった1歳。w
遺伝屋をやってると、どうしても人の運不運というか、引きの強さというのを目の当たりにする。僕は平凡なレベルだ。あきらめが悪いだけ。横山くんは引きが強かった。僕が出会った研究者の中では最強の部類。研究の進め方の選択も必ずいい方に転がった。ただ、研究の学会発表を米国中心にしたのがまずかった。ギュンター・ブローベル博士のグループがかぎつけた。世界一流の核膜孔タンパク質の研究グループの一つだった。まずい。こっちは偶然核膜孔タンパク質に出会ったド素人♪ なのに、横山さんはコールドスプリングハーバー・ミーティングでのブローベルさんの講演で、彼にけんか腰の質問をしたとのこと。その武勇伝を彼から聴かされた時、わしの意識は一瞬遠のいたよ。マジで。
それからは研究室で総力戦。ボスは特定研究班の班長としての最後の年だった。なんとしても大きな業績がいる! 〈ここからの詳細は省略〉 結果は彼らがJBCで、うちはNatureだった。まあ、勝ったよ。ギリだったけどね。
戦友だった横山くんも3年前にがんで他界されました。脳腫瘍。『医師は自分の専門の病気に殺される』というジンクスを守りやがった。(涙
今の僕は彼らのおかげで生かされています。ほんで、まだRanを使って研究やってます。あきらめ悪いんですよ。僕。
本日のお酒:KIRIN CLASSIC LAGER + 天狗舞本醸造生酒 しぼりたて