「小沢調査会提言」の起草委員だった中谷元・元防衛庁長官の小沢一郎への批判は、デタラメも甚だしい

2007年10月13日 18時28分12秒 | 政治
 民主党の小沢一郎代表は、アフガニスタンの国際治安支援部隊(ISAF)への参加を主張し、月刊誌「世界」でその理由を説明している。「国連中心主義」を原理原則とする立場では、当然の帰結である。いまさら驚くに値しない。
 これに対して、自民党の中谷元・元防衛庁長官が、「憲法違反」と断じて、厳しく批判している。だが、この批判は、実に可笑しい。あえて言えば、「国連否定」につながりかねない暴論であると言ってよい。それどころか、中谷・元防衛庁長官自身が「自己否定」しているとしか言いようがない。デタラメを言うのもほどぼとにして欲しい。
 私の手元にいま、やや日焼けした白表紙の冊子がある。自由民主党国際社会における日本の役割に関する特別調査会が平成5年2月3日、宮沢喜一総裁(首相)に提出した「国際社会における日本の役割―安全保障問題に関する提言―」と題する報告書である。ブッシュ大統領が湾岸戦争遂行に当り、日本に協力を求めてきたのを受けて、自民党は平成3年6月17日、この特別調査会を設置し、「日本の国際貢献のあり方」について研究し、その結果を「提言」の形でまとめた。当時の小沢一郎幹事長が会長を務めたことから「小沢調査会」と呼ばれた。
委員=柿澤弘治、加藤紘一、鹿野道彦、高村正彦、中島源太郎、中村喜四郎、鳩山邦夫、原田昇左右、船田元、山崎拓、村上正邦、森山眞弓
(以上・幹事)今津寛、太田誠一、中川昭一、中谷元、牧野隆守、町村信孝、村井仁、岡野裕、永野茂門、前島英三郎 
起草委員=船田元、中川昭一、今津寛、中谷元、前島英三郎
 現在、外務大臣の高村正彦、官房長官の町村信孝が、委員として参加していたことは、大変興味深い。それ以上に、中谷元・元防衛庁長官が、「委員」であり、「起草委員」の一人であったことに注目して欲しい。そのうえで、以下の文章をじっくりと読んでいただきたい。
「憲法前文に示された積極的・能動的平和主義の理念に照らしてみると、国際協調の下で行われる国際平和の維持・回復のための実力行使は否定すべきものとは考えられない。憲法第9条の条文解釈としても、国際協調の下で行われる国際平和の維持・回復のための実力行使が禁止されているとは考えられない。
 すなわち、憲法第9条においては、まず憲法前文の精神に沿って『正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求』すると宣言しており、その宣言を受けて、我が国として、自国の利益のために世界の平和秩序を破壊するような戦争・武力行使を放棄している。国際平和の維持・回復のために国運が行う実力行使に日本が参加・協力することは、『正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求』」する日本国民にとって当然のことであり、まさに憲法第9条の精神に沿ったものである。そして、そのような国連の実力行使に対し日本が参加したとしても、それは国連の行動の一環であってもはや日本国の主権発動の性格を有しないものであり、憲法第9条の放棄した戦争・武力行使とは全く異質のものと考えられる。
 これまでの政府解釈は、国際平和をどのように維持・回復するかについて国際的に十分な合意がなく、それへの日本の協力が求められておらず、日本自身そうした協力を行う力がなかった時代の産物であり、もはや妥当性を失っていると考えられる。
 このように、国際的な合意に基づき国際的に協調した形で海外で国際平和の維持・回復のための実力行使を伴う協力を行う場合について我々が行う憲法解釈は、これまで議論されてこなかった政府解釈の空白を埋めるためのものである」
 この提言を読めば、国際治安支援部隊(ISAF)への参加のどこが「憲法違反」という結論はでてこないはずである。それにもかかわらず、中谷・元防衛長官は、まったく意外な批判をしているのである。
 しかし、原点に立ち戻って、ごく冷静に日本国憲法を「文言通り」に読むならば、憲法が「恒久平和主義」を宣言してはいても、「国際貢献」については、何も規定していないことに改めて気づくであろう。せいぜい「いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」と規定しているのみであって、具体的な「貢献の仕方」までは明示していないのである。日本を武装解除し、「陸海空その他の戦力は保持しない」と手足を縛り、再び軍事的な行動をしないよう連合国軍の軍門の下に日本を封じ込めている状態を大前提にしてつくられた憲法であるからである。従って、これは至極当然のことなのである。しかも、国連憲章は、いまだに日本・ドイツ・イタリアを対象とする「敵国条項」未だに削除していない。死文化しているとはいえ、いつ息を吹き返すかわからない。
 要するに、日本は、憲法を文理解釈する限り、「他国のことを無視しない」ように配慮しつつ、軍事的行動には、一切タッチせず「一国平和主義」でいくしかないのである。こういう立場を堅持するならば、確かに国際治安支援部隊(ISAF)への参加は、「憲法違反」である。そればかりか、政府自民党が、主導してきたアフガニスタンを対象とした「テロ対策特別措置法」に基づく海上自衛隊のインド洋への派遣も、ましてやイラクへの自衛隊派遣もやはり「憲法違反」と言うほかはない。国際治安支援部隊(ISAF)への参加は、「憲法違反」を声高に言い続けると、政府自民党は、必ず自己撞着に陥り、自らの首を絞めることにもなる。

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コメント (1)
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