福田首相は、「シビリアンコントロール」を「大甘」にし、「軍部台頭」に道を開いてはならない

2007年10月18日 18時22分03秒 | 政治
◆大学の教養課程時代、ドイツ語の教授が終戦当時の第一高等学校(現在の東大教養学部)での話をしていた。この教授は、第一高等学校と陸軍士官学校の教授をしていたという。
第一高等学校教の廃校が問題となり、延々と議論しても、なかなか結論がでなかったということから、第一高等学校から東大に進み、高級官僚になった卒業生が、日本を滅ぼしたという趣旨の話だった。日本を敗戦に追い込んだのは、軍閥だと教えられてきた私には、意外だった。その教授の言うには、軍閥が政治を壟断するようになったのは、官僚や政治家があまりにもだらしがなかったからだというのである。
軍人勅諭には、「軍人は政治に関与してはならない」と明記されているにもかかわらず、これに反して、陸海軍が「統帥権」を盾にして、政治に関与し、その果てに国が滅んだという理解は、脆くも打ち破られた。軍人勅諭があるのに、軍人をのさばらせたのは、ひとえに官僚や政治家が、国民の生活よりも華族や財閥、富裕層の利益のみを優先する政治を行っていたことに起因していた。「昭和維新」の歌が思い出される。
◆福田首相は10月18日、新テロ対策特別措置法案を閣議決定し、衆議院に提出した。有効期限は1年と短いが、この法案は、新法案の採決そのものを国会承認と見なし、事後承認や活動状況の報告に関する規定を外しており、「シビリアンコントロール」を「大甘」にした欠陥法案であるというしかない。
 それでなくても、インド洋に派遣された海上自衛隊艦艇の航海日誌の一部が廃棄されたという不祥事が発覚しており、破棄された期間に、現地で何が起きたか調べようがないという極めて遺憾な状況が起きている。「航海日誌がない」と言われてしまえば、「シビリアンコントロール」の「空白」は、もはや埋めようがない。
自衛隊に対する「シビリアンコントロール」が、機能不全に陥っているのは、守屋武昌前防衛事務次官が、小池百合子前防衛相を飛び越して「次官人事」について首相に直訴しようとした実例が証明している。これは、明らかに小池前防衛相という「上官」「に対する反抗であり、下克上にも等しい犯罪である。戦前なら、「軍法会議」にかけられて厳重な処分を受けて然るべき大事件であった。
◆「蟻の一穴」という言葉があるように、いまは大したことではないように見えても、放置しておくと、取り返しのつかないことになってしまう危険がある。日本軍閥が再び台頭することは、ありえないと思い込んでいると、大変なことになる。いまその気配がある。「シビリアンコントロール」の中核は、国会による「民主主義の原理」を徹底的に貫徹することにある。すでに防衛大学校出身の中谷元・元防衛庁長官やイラク先遣隊長(1等陸佐)佐藤正久参議院議員のような「軍人出身者」の政治家が、国会に進出している。彼らの頭のなかは、「軍事の論理」が依然として支配していることを見逃してはならない。何時の間にか、軍部に実権を奪われることがないとは言えない。「帝国陸海軍再建」を望んでいる海上自衛隊幹部候補生学校で制服を着たことのある私が言うのであるから、間違いない。

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コメント (1)
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