エドヴァルド・ムンク
ムンクは自己否定の画家だ。その絵に描かれるものは、人でも花でも風景でも、存在することを、痛いと言っている。
「叫び」はその、自分存在を否定しきられる直前に、存在の中枢にあるものがあげる金切り声であろう。
存在というものは、それそのものを消去よりもきつい闇に貶められようとするとき、もっともひどい叫びをあげるのである。
消去はまだなしなのだ。なぜ消去されるのか。それはそれが最も大切なものだからだ。だが否定しきられるということは、神に等しい存在によって、おまえは馬鹿なものだと言われることなのだ。
この太陽はその、自己存在を否定する神なのである。そんなものはいはしない。いたとすれば、これほどに自己存在の世界が繁栄するはずはない。
これは自己否定感の闇の最中を生きていた人間が、おのれの中に仮定した、傀儡の神なのである。すべてを馬鹿だと言うために、人間が作った神なのである。