人間が間違ったことを言いふらしてしまったので、お釈迦様は地球に下りていくことができません。降りていけば、間違ったことを信じた人間に、大変なことをされてしまうからです。そんなことになったら、人間が大変なことになるのです。ですからお釈迦様は、人間世界に下りていくことができる天使さまに、頼んでみることにしました。
そこで、一番最初に顔を思い出した天使さまのところに、訪ねていったのです。
真実の天使さまというあだ名をもったその天使さまは、薄紅色の翼と、とても長い髪をした乙女のようにかわいらしい天使さまでした。お釈迦様が訪ねていかれますと、真実の天使さまは、大きな鍋で、林檎の香りを月光で煮て、白い飴を作っているところでした。
「これはこれは、お釈迦様」
お釈迦様のお顔を見ると、真実の天使さまはとても明るい顔をして喜ばれました。そして言いました。
「今、次の人生で、人間たちに与える飴を作っていたところです。この白い飴は、なめるととてもいいことがわかって、人間は、男の子も女の子も、天使のように美しくなるのですよ」
お釈迦様はとても感心して言いました。
「あなたはとてもよいことをお考えになっている。人間たちも美しくなればとても喜ぶでしょう」
「もちろん。わたしは人間たちをきれいにしてあげたいのです。それはもう、花のように明るく、かわいらしいものにしてあげたい。そして彼らの恋物語を、とても美しくてよいものにしてあげたいのです」
お釈迦様は、真実の天使さまのご本願をお聞きになって、胸が澄むように幸せになりました。このように、自分にできることを尊く高めて、いいことをなんでもやってくださる方がいるからには、人間の未来は決して暗くはないと、思われました。
ひとしきり感心して見ておられた後、ようやくお釈迦様は用があったことを思い出しました。そして真実の天使さまにこうおっしゃいました。
「じつは、頼みがあるのです。わたしは、人間世界に広まってしまった、わたしに関するうわさの間違いを、なんとかして正しく直したいのだが、助けてはくれないでしょうか」
真実の天使さまは目を見開いて、お釈迦様のお美しいお顔を見上げました。お釈迦様に何かを頼まれるなんて、とても幸せなことだからです。自分の力でお助けできることが、とてもうれしいからです。
お釈迦様のお話を聞いた後、真実の天使さまは目を輝かせて、言いました。
「わかりました。やってみましょう。もうすぐわたしは地球に生まれていきますから、その時に、お釈迦様のご真意を、人間たちに必ず伝えましょう」
お釈迦様はほっとして、真実の天使さまに深く御礼を言われました。
(つづく)