エドゥアルド・ゼンツィク
原題不明。
エストニアの画家らしい。
人間は天使の姿をよく描くが、時にこういうように、現実にはあり得ないものを描くことがある。
翼が生えて飛べるはずのないものに翼を描くのである。
性的隠微さを感じる女性の肉体だ。顔は幼い醜さを感じさせる。足が長いのは、自分をいやだと感じて、自分の姿を改造しているからだ。王冠は幼年期の奢りの象徴だ。
醜悪期の迷いの中にいる魂の姿である。
こういうものは、翼を持って飛べるはずはないのである。飛ぶものは常に高みを目指していくものだが、馬鹿は高みなど目指さない。そんなところに行けば、わがままができなくなるからだ。
ゆえに飛びたくても飛べない魂に翼をつけるとき、それは浮遊者になるのである。浮かんでいるように見えるが、本当は奈落に向かって落ちているのだ。
底の底に落ち切るまで、馬鹿は自分の本当の大地に足をつけようとせず、浮いているような気持ちで、落ち続けているのである。