けれども、しばらくすると、人間たちの中にいた、ひとりの小さい若い娘が、母親のところに行って、はさみを借りたかと思うと、長かった自分の髪を、ばっさりと切ってしまいました。母親は驚いて、娘に問いただしました。すると娘は言いました。
人間は真実の天使さまを馬鹿にして、とてもいけないことをしたのに、髪を長くして自分をかわいくしているのが恥ずかしくなったと。だから切ってしまったのだと。
それを聞いた母親は驚いてむねを動かされました。そして娘からはさみをとると、自分も髪を切って、男のように短くしてしまいました。
すると、それを聞いた隣の娘も、同じようなことを言って、髪を切ってしまいました。外の通りを歩いていた娘もそれを聞いて、自分の長い髪が恥ずかしくなり、急いで家に帰ると、はさみを探して、自分の髪を切ってしまいました。
そのようにして、髪を切る娘はどんどん増えていきました。
たまに、髪を切るのはいやだと言う娘もいましたが、そのような娘も、長い髪をしていると、まわりの人に嫌な目で見られて、嫌われてしまうので、短く切りました。
それでも、まだ髪を切るのはいやだという娘はいました。しかしお釈迦様は許しませんでした。何度言っても最後まで切らなかった娘には、お釈迦様はその夢に呪いをかけました。すると髪を最後まで切らなかった娘は、一晩寝て、目を覚ましたらみな、針の長いハリネズミに変わっていました。
このようにして、信じられないほど短い間に、世界中に、髪の長い娘はひとりもいなくなってしまいました。
髪の長い娘がいなくなると、世界は急に暗くなりました。かわいい娘がいなくなって、男の人がとても寂しくなったのです。あんなかわいい娘が花のようにたくさんいたことで、世界が明るかったのだということを、人々は初めて知りました。
お釈迦様は、天の国から、そんな人間たちの様子を、静かにごらんになっていました。
「少しは反省したか」
(つづく)