アントニオ・ガスマン・カペル
原題不明。
スペインの画家らしい。偽物だが、興味を惹かれる絵なので採用した。
描いているのは本霊ではない。バックにいる違う霊の方だが、おもしろいのはその画家が、猫の目を描けるようになっていることである。
一昔前の画家が描いた猫は、形は描いてあるが、目が描けていなかったのだ。だから姿は美しく描けても、何となく猫に見えない猫という絵になっていたのである。よく感じていたことだろう。
なぜなら、その頃の人間には、猫の魂が見えなかったからだ。
だが20世紀後半に入り、人類が一斉に嘘の世界にはまりこむと、まるで幻影のように、猫の目が光り始めたのである。猫が人間を見つめている目の中に、人間は何かがいると気づいたのだ。猫が、人間を見て、何かを考えていると。
目覚めかけた感性の中で、人間はようやく、猫の魂が見えるようになったのである。そしてその魂は、真実の光でもって、人間の嘘の姿を見据えているのだ。それはあたかも、闇が深くなるほど明るく見えてくる星のようだ。
ロナーニップの猫の絵などと比べてみるがいい。人類の進歩を感じるはずである。