世界はキラキラおもちゃ箱・第3館

スピカが主な管理人です。時々留守にしているときは、ほかのものが管理します。コメントは月の裏側をご利用ください。

霊魂の光

2017-06-20 04:18:01 | 黄昏美術館


アントニオ・ガスマン・カペル

原題不明。


スペインの画家らしい。偽物だが、興味を惹かれる絵なので採用した。

描いているのは本霊ではない。バックにいる違う霊の方だが、おもしろいのはその画家が、猫の目を描けるようになっていることである。

一昔前の画家が描いた猫は、形は描いてあるが、目が描けていなかったのだ。だから姿は美しく描けても、何となく猫に見えない猫という絵になっていたのである。よく感じていたことだろう。

なぜなら、その頃の人間には、猫の魂が見えなかったからだ。

だが20世紀後半に入り、人類が一斉に嘘の世界にはまりこむと、まるで幻影のように、猫の目が光り始めたのである。猫が人間を見つめている目の中に、人間は何かがいると気づいたのだ。猫が、人間を見て、何かを考えていると。

目覚めかけた感性の中で、人間はようやく、猫の魂が見えるようになったのである。そしてその魂は、真実の光でもって、人間の嘘の姿を見据えているのだ。それはあたかも、闇が深くなるほど明るく見えてくる星のようだ。

ロナーニップの猫の絵などと比べてみるがいい。人類の進歩を感じるはずである。






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浮遊

2017-06-19 04:17:05 | 黄昏美術館


エドゥアルド・ゼンツィク

原題不明。


エストニアの画家らしい。

人間は天使の姿をよく描くが、時にこういうように、現実にはあり得ないものを描くことがある。

翼が生えて飛べるはずのないものに翼を描くのである。

性的隠微さを感じる女性の肉体だ。顔は幼い醜さを感じさせる。足が長いのは、自分をいやだと感じて、自分の姿を改造しているからだ。王冠は幼年期の奢りの象徴だ。

醜悪期の迷いの中にいる魂の姿である。

こういうものは、翼を持って飛べるはずはないのである。飛ぶものは常に高みを目指していくものだが、馬鹿は高みなど目指さない。そんなところに行けば、わがままができなくなるからだ。

ゆえに飛びたくても飛べない魂に翼をつけるとき、それは浮遊者になるのである。浮かんでいるように見えるが、本当は奈落に向かって落ちているのだ。

底の底に落ち切るまで、馬鹿は自分の本当の大地に足をつけようとせず、浮いているような気持ちで、落ち続けているのである。






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お釈迦様・7

2017-06-18 04:16:35 | 夢幻詩語


そこでお釈迦様は、天の国の大きな薔薇の木のところにいって、一際大きな薔薇の花を一つ、もらいました。そしてその薔薇を持って、岩小屋に眠っている真実の天使さまのところに行きました。

真実の天使さまはまだ眠っていました。人間世界で何が起こっているかなどということは、何も知りません。お釈迦様は、真実の天使さまが見ている夢の中に、薔薇を入れました。そうすると、真実の天使さまは夢の中で、それは美しい薔薇を見ることができるのです。

夢の中で薔薇を見た真実の天使さまが、かすかに笑ったところを見ると、お釈迦様はそっと手を伸ばされて、真実の天使さまの長い髪のひとすじを、痛くないようにしながらそっととらせてもらいました。そして静かな声で、言ったのです。

「これは蜘蛛の糸のように頼りないものだが、決して切れはしないのだ。わたしはいずれ地球に生まれて、この一本の髪の毛を頼りに、万人の人に、美しい愛の救いの糸を垂らしてこよう」

お釈迦様の心には、再び、人間への深い思いが高まっていました。

「そうして、美しい愛を人間世界に広げれば、人間は愛し合い、喜びにあふれて、そしてとても美しくなるだろう。また、髪の長い美しい娘が増えるだろう」

岩小屋を出ると、お釈迦様は天の国の自分の家に戻り、そこで真実の天使さまの髪の毛を元に、それは美しい糸を何本もこしらえました。そしてそれに、愛のことばをいくつも玉のようにつらねました。美しい音楽も玉にして、連ねました。

「いつになるかわからないが、必ずわたしは、人間のところに行こう。そのときのために、今からたくさんのものを準備しておくのだ」

お釈迦様は、今もそうして、天の国の家で、準備をなさっているのです。

いつか地球で出会う人間たちに、たくさんのよいことを教えてあげるために、美しいことをたくさんなさっているのです。

(おわり)





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お釈迦様・6

2017-06-17 04:18:51 | 夢幻詩語


けれども、しばらくすると、人間たちの中にいた、ひとりの小さい若い娘が、母親のところに行って、はさみを借りたかと思うと、長かった自分の髪を、ばっさりと切ってしまいました。母親は驚いて、娘に問いただしました。すると娘は言いました。

人間は真実の天使さまを馬鹿にして、とてもいけないことをしたのに、髪を長くして自分をかわいくしているのが恥ずかしくなったと。だから切ってしまったのだと。

それを聞いた母親は驚いてむねを動かされました。そして娘からはさみをとると、自分も髪を切って、男のように短くしてしまいました。

すると、それを聞いた隣の娘も、同じようなことを言って、髪を切ってしまいました。外の通りを歩いていた娘もそれを聞いて、自分の長い髪が恥ずかしくなり、急いで家に帰ると、はさみを探して、自分の髪を切ってしまいました。

そのようにして、髪を切る娘はどんどん増えていきました。

たまに、髪を切るのはいやだと言う娘もいましたが、そのような娘も、長い髪をしていると、まわりの人に嫌な目で見られて、嫌われてしまうので、短く切りました。

それでも、まだ髪を切るのはいやだという娘はいました。しかしお釈迦様は許しませんでした。何度言っても最後まで切らなかった娘には、お釈迦様はその夢に呪いをかけました。すると髪を最後まで切らなかった娘は、一晩寝て、目を覚ましたらみな、針の長いハリネズミに変わっていました。

このようにして、信じられないほど短い間に、世界中に、髪の長い娘はひとりもいなくなってしまいました。

髪の長い娘がいなくなると、世界は急に暗くなりました。かわいい娘がいなくなって、男の人がとても寂しくなったのです。あんなかわいい娘が花のようにたくさんいたことで、世界が明るかったのだということを、人々は初めて知りました。

お釈迦様は、天の国から、そんな人間たちの様子を、静かにごらんになっていました。

「少しは反省したか」

(つづく)






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お釈迦様・5

2017-06-16 04:17:23 | 夢幻詩語


倒れて眠ってしまった真実の天使さまを、天の国の天使さまたちは、大事に岩小屋に寝かせました。そして、何もかもを忘れる香を焚きしめて、つらいことをみんな忘れさせてしまいました。もう、真実の天使さまは二度とは地球に生まれなくていいと、天使さまたちはみんなで決めました。

それほど、人間たちが、真実の天使さまにしたことが、ひどすぎたのです。

お釈迦様は、怒りました。

今まで、怒ったことなど一度もないかと思えるほど、お優しいお釈迦様が、怒りました。

そして月に描かれた自分の顔に魔法をかけて、その顔から、地球世界にいる人間たちに言ったのです。

人間たちはもう、長い髪をしてはならない。おまえたちは、長い髪の天使をいじめて、あんなものはいやだと言って殺したのだから、二度と長く髪を伸ばしてはならない。

人間たちはびっくりしました。髪を長く伸ばせないなんて聞いただけで、とてもつらくて、何も考えられませんでした。

(つづく)





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お釈迦様・4

2017-06-15 04:18:28 | 夢幻詩語


それから間もなく、真実の天使さまは、人間の姿になって、人間の世界に生まれました。そこで一生懸命にがんばって勉強して、きれいな月に、お釈迦様のお美しいお顔を描いたのです。人間たちはそれを見て、びっくりしました。お釈迦様の本当のお顔が、信じられないほどお美しかったからです。しかもそのお顔は、とても澄んだ美しい声で、お釈迦様の言いたいことを言うのです。

「わたしは、愛することが馬鹿なことなどと言った覚えはないよ。愛することは美しいことなのだよ」

人間たちは、芯からびっくりしました。自分たちの知っているお釈迦様の教えとは、全然違うことだったからです。そんなことを知ってしまえば、自分たちがお釈迦様の教えだと思って、やってきたことがすべて、馬鹿になってしまう。それを恐れた人間たちは、なんと真実の天使さまを、大勢で馬鹿にし始めたのです。

それはとてもひどいことになったのです。人間たちは欲と幻に目が眩んで、ひどい嘘ばかりつきました。とても汚いことを言って、真実の天使さまを馬鹿にしました。真実の天使さまの、とても長くてきれいな髪に嫉妬して、その髪に泥を塗りつけたり、むしりとったりしました。

それがあまりにつらかったので、真実の天使さまはとうとう死んでしまいました。そして天の国に帰ったとたん、何もかもに疲れ果てて、倒れてしまったのです。

(つづく)






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お釈迦様・3

2017-06-14 04:17:29 | 夢幻詩語


人間が間違ったことを言いふらしてしまったので、お釈迦様は地球に下りていくことができません。降りていけば、間違ったことを信じた人間に、大変なことをされてしまうからです。そんなことになったら、人間が大変なことになるのです。ですからお釈迦様は、人間世界に下りていくことができる天使さまに、頼んでみることにしました。

そこで、一番最初に顔を思い出した天使さまのところに、訪ねていったのです。

真実の天使さまというあだ名をもったその天使さまは、薄紅色の翼と、とても長い髪をした乙女のようにかわいらしい天使さまでした。お釈迦様が訪ねていかれますと、真実の天使さまは、大きな鍋で、林檎の香りを月光で煮て、白い飴を作っているところでした。

「これはこれは、お釈迦様」

お釈迦様のお顔を見ると、真実の天使さまはとても明るい顔をして喜ばれました。そして言いました。

「今、次の人生で、人間たちに与える飴を作っていたところです。この白い飴は、なめるととてもいいことがわかって、人間は、男の子も女の子も、天使のように美しくなるのですよ」

お釈迦様はとても感心して言いました。

「あなたはとてもよいことをお考えになっている。人間たちも美しくなればとても喜ぶでしょう」

「もちろん。わたしは人間たちをきれいにしてあげたいのです。それはもう、花のように明るく、かわいらしいものにしてあげたい。そして彼らの恋物語を、とても美しくてよいものにしてあげたいのです」

お釈迦様は、真実の天使さまのご本願をお聞きになって、胸が澄むように幸せになりました。このように、自分にできることを尊く高めて、いいことをなんでもやってくださる方がいるからには、人間の未来は決して暗くはないと、思われました。

ひとしきり感心して見ておられた後、ようやくお釈迦様は用があったことを思い出しました。そして真実の天使さまにこうおっしゃいました。

「じつは、頼みがあるのです。わたしは、人間世界に広まってしまった、わたしに関するうわさの間違いを、なんとかして正しく直したいのだが、助けてはくれないでしょうか」

真実の天使さまは目を見開いて、お釈迦様のお美しいお顔を見上げました。お釈迦様に何かを頼まれるなんて、とても幸せなことだからです。自分の力でお助けできることが、とてもうれしいからです。

お釈迦様のお話を聞いた後、真実の天使さまは目を輝かせて、言いました。

「わかりました。やってみましょう。もうすぐわたしは地球に生まれていきますから、その時に、お釈迦様のご真意を、人間たちに必ず伝えましょう」

お釈迦様はほっとして、真実の天使さまに深く御礼を言われました。

(つづく)





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お釈迦様・2

2017-06-13 04:17:46 | 夢幻詩語


というのも、遠い昔にお釈迦様が地球に下りられて、教えてあげたことについて、人間が間違ったうわさを流してしまったからです。

お釈迦様は人間に、愛し合うことはとてもいいことだよと、言ったのに、なぜか人間たちにはその言葉がわからなかったのです。そして人間たちの心にお釈迦様の声が入ったとたん、その言葉はなぜか裏返ってしまったらしいのです。

人間を愛することなんて、馬鹿なんだよ。人間なんて馬鹿だから、愛したって無駄なんだよ。

なんと人間は、お釈迦様がそう言ったのだと、思い込んでしまったのです。そしてそれを、とても偉い天使さまが言ったことなのだと言って、世界中に言いふらしてしまったのです。

愛することが馬鹿なことなのだという、間違ったことが世界に広がったおかげで、人間はとてもいけないことばかりするようになってしまいました。愛し合って助け合えば、人間はとてもいいことになるのに、愛するなんて馬鹿だからと、人間はお互いを馬鹿にしあってばかりいるのです。けんかばかりして、傷つけあってばかりいて、それで地球は今、とても大変なことになっているのです。

お釈迦様は本当に困ってしまいました。そして今日も、どうやってその間違ったうわさを消して、本当に正しいことを人間に教えたらいいか、考えておられたのです。

(つづく)






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お釈迦様・1

2017-06-12 04:17:24 | 夢幻詩語


天使さまたちが住んでおられる、天の国には、それは大きな、赤い薔薇の木が生えておりました。

それは澄んだとても尊い赤色で、花びらは絹のようで、とてもきれいな香りがするのです。花の咲く季節ともなれば、空もおおうかと思うほどに広がった大きな梢に、星の数ほども赤い薔薇が咲き、それはそれは目も心も奪われるほどに、美しいのでした。

今、その薔薇の木の下で、お釈迦様が悩んでおられました。

お釈迦様は、紫の美しいお衣装を着ておられて、薄紫の透き通るような翼をしておられる、それはお美しい天使さまです。紫の色というのは、とても高貴な色で、赤い喜びも、青い悲しみも、ほどよく混ざり合って、深い愛の気持ちで抱きしめてあげようという、お釈迦様のお美しいお心に、とても似合う色なのでした。

ですから、お釈迦様がお近くにいらっしゃると、重い罪の影をもつ人間も、何やら心が和らいで、悲しみが薄らいで、苦しい自分の人生を、誰かが支えてくれているようなやさしさを感じてしまうのでした。だれもかれもが負っている悲しみを、深くわかってくださっている。そのようなお釈迦様の、お美しいお顔を見ているだけで、人は幸せになるのでした。

しかし今、そのお釈迦様はとても悩んでいらっしゃいました。

(つづく)






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恐ろしい馬鹿・2

2017-06-11 04:17:05 | 黄昏美術館


トロイ・シューネマン

原題不明。



気色が悪いだろうが、しばしがまんしたまえ。

これは、馬鹿が見境もなく盗みをして、徹底的に自分をきれいにしたという例である。

ギリシャ彫刻的な美形を作ろうと、かなりできのいい男から顔を盗んでいる。そして、多くの男から筋肉を盗み、自分の体につけているのである。

そうするとこのような、比較的形はギリシャ彫刻に近いが、どこか気色の悪い男ができるのだ。

理想的と言えるまで整ってはいるが、どこか邪悪な感じがするのは、目つきが恐ろしいからだ。

まだ、動物の闇をそれほど脱いでいない、黎明の域にいる未熟な魂が、この中にいるのである。そういう霊魂は、女を人間だとは思っていない。

バックの霊界にいる誰かが自己活動を制御しない限り、何をするかわからないのだ。

人はこれを見ると、どこかぞっとする。そして人間ではないというような感じがするのである。







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