「集中治療において意識すべき5つのこと」のつづきです。5つとは
1.三つの軸を意識する
2.数値、見た目を正常にすることがゴールではない
3.最終的なゴールは何かを意識する
4.疑問を大切にする
5.よく観察する人の意見は常に正しい
でした。本日は2番目の「数値、見た目を正常にすることがゴールではない」につづく、
3. 最終的なゴールは何かを意識する
です。
数値や見た目を正常にすることを最終的なゴールとすべきでないことは学びました。では究極のゴールは何でしょうか。ICU診療の究極のゴールは、できるだけ早く患者さんが元の生活を送れるようになること(=社会復帰してもらうこと)だと思います。このゴールを意識することは実は重要で、迷ったときに、自分が何をすべきか、何をすべきでないかヒントを与えてくれます。
例えば、鎮静スケールを用いてできるだけ浅く管理し(RASSで0~-2に維持し)、患者さんに状況の正しい認識を持ってもらい、早期から各種のリハビリを行うと、人工呼吸器時間が短くなるばかりか、精神的、肉体的長期予後まで良くなる可能性があることが示され、近年ではこのような鎮静法が主流になりました。しかし、これは医療スタッフにとって、仕事量が増えるし、ライン抜去の危険も増えるし、ストレスの多い方法ですよね。深い鎮静でベッドにずっと臥床していれば、患者さんはその場では楽そうに見えるかもしれませんが、1年後の患者さんにとっては大きな苦痛になっているかもしれません。呼吸、循環が落ち着きリハビリが可能な状況になったら、心を鬼にして鎮静を減らし、ときに患者さんが苦しそうに見えても叱咤激励してリハビリを行うのが、本当に患者さんを思う、ということなのかもしれませんね。
そのような自分たちにとってもつらい選択をするには、究極のゴールは何かということを明確に意識する必要があるのです。