Dr. 讃井の集中治療のススメ

集中治療+αの話題をつれづれに

心臓血管外科術後ICU

2013-04-15 03:33:03 | 集中治療

新職場に異動してはや2ヶ月半、新職場といっても3年前まで在籍していたところなのでもちろんやりやすいですが。。。。。

やはりいくつか違いが目に留まります。

何と言っても心臓血管外科の症例が多いところでしょうか。年間500例弱の成人開心術数は毎年全国でも5指に入る施設と思います。

見ていて思うのは、ここの心臓外科の特長は、一人のスター外科医に頼るのではなく若い人が術者としてどんどん手術を行うところでしょうか。ですから、久々に戻ってみると見知らぬ若い心臓外科医がたくさんいて、心臓血管外科の研修の環境が素晴らしいからたくさん若手が集まるのだろうな、という思いを強くします。

術後、ICUでは我々ICUチームが患者診療の主体ですので、心臓血管外科医は麻酔科医とともにオペ室からICUに患者さんを運んだ後は、引き継ぎをするとどこかに行ってしまいます。完全分業制と言ってもよいでしょうか。彼らは病棟や外来の仕事もありますし、ベストの手術を行うことこそが患者さんの為に彼らが最も求められていることで、術後ICU管理のために寝ずの番を行って、疲れたアタマとカラダで翌日の手術を行うのは、患者さんにとって良いわけがありません。

じゃあ、外科医が術後管理できなくなるんじゃない? という疑問も湧きますが、それは若い心臓血管外科医が我がICUチームにローテーションして勉強していますし、術前の併存症や術後合併症で高度なICU管理が要求されるような重症ケースでは、どのみち外科医単独による術後管理よりも重症患者診療の専門家である我々集中治療医が加わった方が患者さんにとって良いのです。多くのデータがそれを示しています。実際、巷の多くの心臓外科医は、循環以外の例えば人工呼吸管理や感染管理などについて、先輩からの教えと独学で学ぶしかなく、標準的な方法や最新の知識を教わる機会はまずないでしょう。チームとしてそれぞれの専門の知識を持ち寄って診療する方がベターなのです。

分業制ではオペ室からICU、ICUから病棟の診療の連続性は悪くなりませんか? という疑問も湧きますが、朝の心外カンファにICUメンバーが参加しコミュニケーションを維持するシステムを作っています。問題があると、すぐに麻酔科チーム、臨床工学技士チームと合同でM&Mカンファレンスも開催します。

ボクらICUチームにとっても、心臓外科術後患者はオペ室から気管挿管されたまま入室し呼吸管理基本を学んだり、循環管理のさまざまな側面を学んだり、はたまたICU入門編としてルーチーンワークを確実にこなせるような教育を行うための良い教材なのです。

嘘だと思う方、興味を持った方は是非見学に来てくださいね。


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