知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

テータキャリア審取

2012-03-13 06:34:24 | 最新知財裁判例

テータキャリア審取
平成23年(行ケ)第10101号 審決取消請求事件
請求棄却
裁判所の判断は13頁以下
本件は、拒絶査定不服審判不成立審決の取消しを求めるものです。
争点は容易想到性の存否です。
1 本判決は、まず、相違点1に関し、「引用発明において,「第4配線」の「入力端子」は,下部パネルの行方向に沿って配列される多数の第3配線と並んで,下部パネルの角部に配置され」るものであるところ,「第4配線」の「入力端子」と「第3配線」とをどのように配置するかは,上部パネルと重畳しない下部パネル部分の省スペース化や各配線に関係する部品の小型化等を考慮して,当業者が適宜決定し得るものであって,しかも,上記(1)のとおり,第1ゲート駆動信号伝送パターンの「入力端子」を「前記複数のデータラインからなるデータライン群と実質的に隣接するように形成」することについて,技術的意義がない以上,引用発明における「第4配線」の「入力端子」の位置関係について,これを「第3配線」と「実質的に隣接するように形成」することは,当業者において適宜想到し得たものである」と判断しました。
そして、原告の「引用発明において,「第4配線」の「入力端子」を,「第3配線」と実質的に隣接させると,「下部パネル」上に形成される「第4配線」の総延長が長くなり,製造コストを削減できるとともに,製造上の困難さを解消して製品歩留まりの向上を図るという引用発明の課題の解決と矛盾する」との主張に対し、「引用発明は,「ソース駆動信号やゲート駆動信号中のいずれか一つの信号の伝送のための一つの印刷回路基板だけを有する液晶表示モジュールとすること」によって,製造コストを削減することができるとともに,製造上の困難さを解消して製品歩留りの向上を図り,かつ,小型軽量である液晶表示モジュールの提供をその目的とするものであり,「第4配線」の長さを変更することによって上記課題を解決するものではない。よって,「第4配線」の長さは,上記課題の解決には関係なく,「第4配線」の「入力端子」を,「第3配線」と実質的に隣接させる際に,「第4配線」の総延長が長くなったとしても,上記課題の解決と矛盾するとはいえない」と判断しました。
2 本判決は、 次に、相違点2に関し、「引用発明において,「第4配線」の「出力端子」は,「第2群のTCPの各ゲー
ト駆動集積回路チップにゲート信号を供給し,前記第4配線からの延長線は第5配線と重畳しないように,下部パネルの外側にあるFPCフィルムの前記一側部を通じて前記第2群のTCPの各チップに連結される」ものであるところ,「第4配線」の「出力端子」と「第5配線」とをどのように配置するかは,上部パネルと重畳しない下部パネル部分の省スペース化や各配線に関係する部品の小型化等を考慮して,当業者が適宜決定し得るものであって,しかも,前記3のとおり,第1ゲート駆動信号伝送パターンの「出力端子」を「前記複数のゲートラインからなるゲートライン群と実質的に隣接するように形成」することについて,技術的意義がない以上,引用発明における「第4配線」の「出力端子」の位置関係について,これを「第5配線」と「実質的に隣接するように形成」することは,当業者において適宜想到し得たものであるということができる」と判断しました。
そして、本判決は、原告の「本願発明では,「第1駆動信号伝送パターン」が,「複数のゲートラインからなるゲートライン群と実質的に隣接するように形成され,ゲートラインと接続され,第2フレキシブルフィルム上に設けられたゲートオン・オフ電圧発生ユニットと電気的に接続された出力端子」を含む構成を有することで,テープキャリアパッケージの数を削減でき,さらに,液晶表示パネルのゲートラインとデータラインに印加されるとき,駆動信号の遅延が発生しないようにできるという特有の効果を奏するものであるのに対し,引用例には,かかる本願発明が解決しようとする課題については何らの記載もなく,そのような課題の解決を示唆するような記載もない」との主張に対し、「本願発明は,「第1駆動信号伝送パターン」が,「複数のゲートラインからなるゲートライン群と実質的に隣接するように形成され,ゲートラインと接続され, 第2フレキシブルフィルム上に設けられたゲートオン・オフ電圧発生ユニットと電気的に接続された出力端子」を含む構成を有することによって,テープキャリアパッケージの数を削減でき,さらに,液晶表示パネルのゲートラインとデータラインに印加されるとき,駆動信号の遅延が発生しないようにできるという効果を奏するとはいえない」と判断しました。
本判決は、「当業者が適宜決定し得るもの」という概念を用いて容易想到性を肯定した例として参考になるものと思われます。


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