喜多方ラーメン審取
平成21(行ケ)10432号 審決取消請求事件
請求棄却
争点は「喜多方ラーメン」の周知性の有無です。
本判決は、まず、一般論として、「7条の2が定める地域団体商標の制度が設けられたのは、その立法経緯にかんがみると、地域の産品等についての事業者の信用の維持を図り、地域ブランドの保護による我が国の産業競争力の強化と地域経済の活性化を目的として、いわゆる「地域ブランド」として用いられることが多い地域の名称及び商品ないし役務の名称等からなる文字商標について、登録要件を緩和する趣旨に出たものである。すなわち、上記のとおり地域の名称と商品ないし役務の名称等からなる文字商標については、従前、3条1項各号に該当するとして、使用による識別力を獲得し、3条2項の要件を満たさない限り登録が認められず、全国的に相当程度知られるようになるまでは他人の便乗使用を排除できず、また図形入りの商標の登録を受けるのみでは他人による文字部分の便乗使用を有効に排除できないという不都合等があったのを、これらの不都合を解消して上記のとおりの地域の名称と商品ないし役務の名称等からなる文字商標の登録を許容して、地域の産品等についての事業者の信用の維持等を実現する趣旨のものである。」と述べた上で、原告の主張に対し、「3条2項で同条1項各号で登録できないとされている商標が、使用により登録が認められるとしても、何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」との要件、すなわち識別力を発揮できるまでの程度の要件を充たさなければならないのに対し、7条の2第1項柱書では、使用により「自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている」との要件を充たすことを要件としており、前記の地域団体商標の立法経緯を踏まえてみると、後者の要件は前者の要件を緩やかにしたものと解するのが相当ということになる」としつつ、「しかし、この要件緩和は、識別力の程度(需要者の広がりないし範囲と、質的なものすなわち認知度)についてのものであり、当然のことながら、構成員の業務との結び付きでも足りるとした点において3条2項よりも登録が認められる範囲が広くなったのは別としても、後者の登録要件について、需要者(及び取引者)からの当該商標と特定の団体又はその構成員の業務に係る商品ないし役務との結び付きの認識の要件まで緩和したものではない」と判断しました。
本判決は、かかる一般論を踏まえ、本件に関し、「原告(その前身たる団体を含む。)又はその構成員が「喜多方ラーメン」の表示ないし名称を使用し、喜多方市内においてラーメンの提供を行うとともに、指定役務「福島県喜多方市におけるラーメンの提供」に関する広告宣伝活動を積極的に行っていたとしても、喜多方市内のラーメン店の原告への加入状況や、原告の構成員でない者が喜多方市外で相当長期間にわたって「喜多方ラーメン」の表示ないし名称を含むラーメン店やラーメン店チェーンを展開・運営し、かつ「喜多方ラーメン」の文字を含む商標の登録を受けてこれを使用している点にもかんがみると、例えば福島県及びその隣接県に及ぶ程度の需要者の間において、本願商標が原告又はその構成員の業務に係る役務を表示するものとして、広く認識されているとまでいうことはできないというべきである。なお、喜多方市内の製麺業者によるラーメンの麺の販売実績等を考慮しても、この結論が左右されるものではない」と判断しました。
本判決は、、地域団体商標の登録の可否について判断した事例であり、参考になります。
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