スーパー分解剤審取
平成22年(行ケ)第10256号 審決取消請求事件
請求認容
争点は用途発明における新規性の有無です。
本判決は、まず、一般論として、「公知の物は、特許法29条1項各号に該当するから、特許の要件を欠くことになる。しかし、その例外として、〈1〉その物についての非公知の性質(属性)が発見、実証又は機序の解明等がされるなどし、〈2〉その性質(属性)を利用する方法(用途)が非公知又は非公然実施であり、〈3〉その性質(属性)を利用する方法(用途)が、産業上利用することができ、技術思想の創作としての高度なものと評価されるような場合には、単に同法2条3項2号の「方法の発明」として特許が成立し得るのみならず、同項1号の「物の発明」としても、特許が成立する余地がある点において、異論はない(特許法29条1項、2項、2条1項)。もっとも、物に関する「方法の発明」の実施は、当該方法の使用にのみ限られるのに対して、「物の発明」の実施は、その物の生産、使用、譲渡等、輸出若しくは輸入、譲渡の申出行為に及ぶ点において、広範かつ強力といえる点で相違する。このような点にかんがみるならば、物の性質の発見、実証、機序の解明等に基づく新たな利用方法に基づいて、「物の発明」としての用途発明を肯定すべきか否かを判断するに当たっては、個々の発明ごとに、発明者が公開した方法(用途)の新規とされる内容、意義及び有用性、発明として保護した場合の第三者に与える影響、公益との調和等を個々的具体的に検討して、物に係る方法(用途)の発見等が、技術思想の創作として高度のものと評価されるか否かの観点から判断することが不可欠となる」と述べた上で、「本件特許発明における白金微粉末を「スーパーオキサイドアニオン分解剤」としての用途に用いるという技術は、甲1において記載、開示されていた、白金微粉末を用いた方法(用途)と実質的に何ら相違はなく、新規な方法(用途)とはいえないのであって、せいぜい、白金微粉末に備わった上記の性質を、構成Dとして付加したにすぎないといえる。すなわち、構成Dは、白金微粉末の使用方法として、従来技術において行われていた方法(用途)とは相違する新規の高度な創作的な方法(用途)の提示とはいえない」。と判断しました。
本判決は、さらに、被告の「本件発明は、白金微粉末における、新たに発見した属性に基づいて、同微粉末を「剤」として用いるものである以上、新規性を有する」との主張に対し、「一般論としては、既知の物質であったとしても、その属性を発見し、新たな方法(用途)を示すことにより物の発明が成立する余地がある点は否定されないが、本件においては、新規の方法(用途)として主張する技術構成は、従来技術と同一又は重複する方法(用途)にすぎないから、被告の上記主張は、採用の限りでない。本願審査の段階において、還元水としての用途については、削除されたものと認められる(甲21参照)が、そのような限定が付加されたとしても、従来技術を含む以上、本件特許発明の新規性が肯定されるものとはいえない」と判断しました。
本判決は、用途発明の新規性の判断基準についての一般論を述べた上で、事案に即した判断を示しており、参考になります。なお、関連判例として、知財高裁平18(行ケ)10227号事件があります。
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