知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

内燃機関審取

2011-12-19 06:05:44 | 知的財産権訴訟

内燃機関審取

平成22年(行ケ)第10345号

請求認容

裁判所の判断は15ページ以下。

争点は容易想到性です。

本判決は、まず、引用発明の認定に関し、「本件補正発明の「加熱装置」は、機関の排気側の管路において圧力波機械に流入する排気を外部の熱源又は電気エネルギー源(以下「熱源等」という。)により加熱することで特に圧力波機械のコールド・スタート特性を改善するものである一方、引用例2に記載の「排気冷却・中間加熱器」は、2段式給気を行う機関の排気系において排気間での熱交換を行うものであって、排気を外部の熱源等により加熱するものではなく、むしろ圧力波機械を高圧圧縮段用に配置した場合には圧力波機械の仕事能力を低下させるものであるから、本件補正発明の「加熱装置」とは、その構成、機能及び作用がいずれも異なっている」と述べた上、「引用例2に記載の発明における「排気冷却・中間加熱器」は、本件補正発明の「加熱装置」に相当せず、引用例2に記載の発明は、「加熱装置」の構成を備えているとは認められないから、本件審決による引用発明2Bの認定には誤りがある」と判断しました。

本判決は、次に、容易想到性に関し、「引用例1及び2は、いずれもエンジンのコールド・スタート特性に関する記載や示唆がないから、当該特性の改善とは関係のない技術に関するものであって、これらに記載された発明を基にしてコールド・スタート特性を改善することを想到するに足りる動機付けがない。むしろ、引用例1に記載の発明は、圧力波機械を冷却する可能性を内包しており、引用例2に記載の発明は、熱交換により圧力波機械を含む過給機に流入する排気を冷却するものでもあるから、圧力波機械に流入する排気を加熱する構成を採用する上では、いずれも阻害事由がある」と述べた上、さらに、「コールド・スタート特性の改善が一般的な課題であり、かつ、火花点火機関に三元触媒を用いる技術及び内燃機関の排気側の管路に、空気、燃料供給源からなるバーナや電気式加熱装置である加熱装置を設ける技術が周知であったとしても、引用発明1Aに接した当業者は、当該課題を解決するため、引用例2に記載の発明及び上記周知技術を適用し、「空気、燃料供給源からなるバーナあるいは電気式加熱装置」である「加熱装置」を三元触媒と圧力波機械との間に配置することで圧力波機械に流入する排気を加熱する構成(相違点3)を採用することを容易に想到できなかった」と判断しました。

本判決は、引用発明の認定の困難さを示す事例として参考になると思われます。


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