知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

パシフィック周知表示事件判決

2013-01-28 04:05:06 | 知的財産権訴訟

1 平成20年(ワ)第8486号不正競争行為差止等請求事件
2 本件は、原告が、不正競争防止法3条1項に基づき被告商品1及び被告商品2の製造販売等の差止め並びに同条2項に基づく同商品及び製造用金型の各廃棄等を求めたものです。
3 争点は、商品形態の周知表示性の有無です。
4 本判決は、「商品の形態は,それ自体として,直ちに当該商品の出所を表示するものではないが,当該商品の形態が他の商品とは異なる独自の特徴を有しており,かつ,その形態が特定の者によって長期間継続的かつ独占的に使用されるか,又は短期間でも極めて強力な宣伝広告活動や圧倒的な販売実績等があって,需要者において当該形態が特定の事業者の出所を表示するものとして周知となっている場合には,当該商品等の形態をもって,不正競争防止法2条1項1号にいう「商品等表示」として,同法の保護の対象となると解される」との一般論を述べて、さらに、「なお,本件において原告ジェイスリープが販売している原告各商品(ジェルトロンマットレス及びジェルトロンクッション)と原告パシフィックウエーブが販売していたインテリジェル商品との関係について,被告は,上記両商品の商品名や販売時期,販売元が異なっており,別個の商品であると主張する。しかし,不正競争防止法が同法2条1項1号所定の行為を不正競争行為としているのは,商品の出所の誤認混同を防止するためであるから,仮に商品名や販売元等が形式的に異なっていたとしても,両商品の出所が実質的に同一であり,かつ両商品に共通する形態において商品名や販売元等による商品表示を凌駕するほどの商品表示性が認められ,その結果,両商品に共通の形態が同一の出所を示すものとして需要者に広く認識されているのであれば,出所の誤認混同を防止するために,同号の規定を適用する余地もあるというべきである」と指摘した上で、「原告各商品のほか,インテリジェル商品の形態に周知商品表示性があると認められるかどうかについても併せて検討する必要がある」と判断しました。
そして、当てはめにおいて、宣伝広告に関し、「紹介の態様としても,立体格子状形態が明確に掲載されていないものもある上(甲42の2・5・6・8・9・10,43の1・2,44,45,46,47の1・2,48の1,49),掲載回数としても,原告らが主張するインテリジェル商品の販売開始時(平成11年11月)から被告各商品の販売開始時(平成18年4月)までの期間に比べると,必ずしも多いとはいい難い」などと認定し、「宣伝広告の観点から検討しても,原告各商品等について強力な宣伝広告活動があったとは認められず,被告各商品の販売開始時における原告各商品等の立体格子状形態の原告らの商品表示としての周知性を基礎づけるには足りないというべきである」と結論づけました。
5 本判決は、「宣伝広告の観点から検討しても,原告各商品等について強力な宣伝広告活動があったとは認められず,被告各商品の販売開始時における原告各商品等の立体格子状形態の原告らの商品表示としての周知性を基礎づけるには足りない」と述べている点から、周知商品表示性の判断が規範的判断であり種々の事情の総合考慮に基づくものであるとの理解と整合的であるといえます。また、商品形態と商品名・販売元等に基づく出所表示との関係について、「両商品に共通する形態において商品名や販売元等による商品表示を凌駕するほどの商品表示性が認められ,その結果,両商品に共通の形態が同一の出所を示すものとして需要者に広く認識されているのであれば,出所の誤認混同を防止するために,同号の規定を適用する余地もある」と判断したにおいて参考になります。さらに、宣伝広告要件に関し、「紹介の態様としても,立体格子状形態が明確に掲載されていないものもある」と判断している点は当然のことといえども実際の案件では見過ごされがちであることに留意したいものです。
以上


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