仏壇商標審取
平成23年(行ケ)第10332号 審決取消請求事件
請求棄却
本件は無効審判不成立審決の取消しを求めるものです。
主たる争点は,11号及び15号該当性です。
裁判所の判断は8ページ以下
1 11号(類否判断)
本判決は、この点について、まず、一般論として、「商標法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり(最三小判昭和43年2月27日民集22巻2号399頁参照),複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである(最一小判昭和38年12月5日民集17巻12号1621頁, 最二小判平成5年9月10日民集47巻7号5009頁,最二小判平成20年9月8日裁判集民事228頁561頁参照)」と判断しました。
そして、本判決は、本件商標の特徴的部分について、「本件商標は,「電装現代仏壇」の文字からなり,構成文字は同じ大きさ,同じ書体で等間隔に記載され,全体として,極めてまとまりよく一体的表記されている。このような点を考慮すると,本件商標は,その全体が,特徴的部分であるということができる。もっとも,本件商標の指定商品が「仏壇」であることに照らすと,本件商標中の「仏壇」部分は,商品の出所を識別する機能はないか,又は著しく弱いといえることから,本件商標の特徴的部分は,「電装現代」部分にあると解することもできる」と述べました。
本判決は、さらに、「本件商標と引用商標1ないし3とは,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれはなく,その他本件商標と引用商標1ないし3について誤認混同を生じるおそれがあると認められる取引上の事情もないから,本件商標と引用商標1ないし3は類似しない」として,本件商標は,商標法4条1項11号に該当するものではないと判断しました。
2 15号(混同のおそれ)
本判決は、この点について、「引用商標2及び引用商標3と本件商標とは,いずれも相紛れるおそれがないことからすると,「使用標章1」及び「使用標章2」(引用商標3の黒塗りの隅丸四角形を赤塗りにした標章)のいずれも,本件商標と相紛れるおそれはなく類似しない。そうすると,被告が本件商標をその指定商品に使用しても,これに接する取引者・需要者が,その商品を原告又は原告と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であると認識し,その商品の出所について混同を生ずるおそれはない」と判断しました。
3 補足
本判決は、さらに、念のためとして、「使用標章2は,本件商標の出願時及び登録査定時において, 取引者・需要者の間において,原告の業務に係る商品「仏壇」を表示するものとして,ある程度知られていたといえる。もっとも,使用標章1については,新聞やポスター等による広告においても,その多くは「現代仏壇ギャラリーを開いてみませんか。」等の説明文,又はいわゆるキャッチコピーの文言中に記載されているものであって,必ずしも商品の出所を示す態様で使用されているとはいえないこと,使用標章1が文字のみからなり,取引者・需要者に与える印象も大きくないことからすると,使用標章1が,取引者・需要者の間において知られていたものとまでは認めることはできない」と判断し,原告の「取引者・需要者へのアンケート調査(甲78の1・2)を引用し,キャッチコピーとしての利用でも取引者・需要者は仏壇の宣伝だと認識している」との主張に対し、「そもそもアンケートに利用された広告自体が仏壇の広告であることを前提としたものであるから,原告のこの点の主張は採用できない 」と述べました。
3コメント
アンケートによる立証の困難性を改めて実感させる判断です。なお、類否判断の一般論をおさえておくことは、特定侵害訴訟代理業務試験対策として必須です。
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